ー家ー
「ただまー」
がちゃっ。ドアを後ろ手に閉めて誰に言う訳でもなく声をかける。
「にゃあぁぁぁぁぁ」
お?キヨかな?...おぉ!キヨじゃん!
「ただいまぁー。」
思わず甘い声が出る。猫って本当可愛いな。
玄関で少し遊んだあと、自室に籠る。
勉強?そんなもん知らん。めんどくさいもん。
「あーぁ。つまんないなぁ...」
独り言が壁に染み入る。
なにしよう。そう思いながらスマホを開く。LINEを一通り返して、オンラインゲームを始めた。このゲームもただ徹に誘われたからやってるだけで、特に好きなわけでもない。取り敢えず流れ作業的に進めていく。
そんなゲームにも飽きてきた頃。
窓をコンコンっと叩く音が部屋に響いた。寝転んでいた体を思わず持ち上げる。
カーテンを開けると、そこには...
...。
徹がいた。取り敢えず鍵を開けて中に入れる。
「いやぁ、なんか家にね、瞬を今日はよろしくって電話がかかってきてさー、」
は?
「んで、家の母ちゃんが、『そんなこと聞いてないわよ!聞き忘れたんじゃないの?!』って俺に怒ってきて。俺そんなことお前から聞いてもなかったからここに来たわけさ。」
...
「いやまぁあのさ、まずは窓から入るのやめようね?俺ずっといってるけど。」
「あー、まぁそんなのどーでもいいじゃん」
はぁ。なんで俺の回りには世話が焼けるやつばっかなんだろう。母さんも母さんだよ。家に電話かけずに徹ん家にかけてあげくのはてに今日はよろしくねって、馬鹿かっつうの。もう少しきちんとしてよ全く...。
「うん。多分家に帰ってこないと思うから今日は徹ん家とまっていい?」
「もちろん!俺もそのつもりできたんだから。」
あはは。お互いに笑いながら窓から...通させるかよどっちか犠牲になるだろ。
「いやそこはほら、ここはお前んちだから戸締まりは瞬がやるー、みたいな?」
あははははははは笑えない。
少し怒りながら戸締まりをして、きちんとドアから出てドアから入った。
おばさんは僕を歓迎してくれた。まぁ、いつものことだもんね。
「すいません。母が連絡し忘れたみたいで...」
ほんと、なんで俺が謝んなきゃいけないのかな。
「いやいや、瞬君が謝ることじゃないのよ。それにいつものことじゃない。大丈夫よ。」
目が笑ってませんよお姉様。まぁ、うちの親は旧知の仲だし。あきれてるとも言い換えられるか。
「取り敢えず一晩お世話になります。」
「はいはい。ゆっくりしてってねー。ご飯出てるから手洗ってきてね。」
おばさんが台所に歩いていって、はぁ、と一息吐く。疲れた。
「なんか、お前じじくさくね最近。」
...無言でひじ打ちを食らわせた。
「痛ぁ!?」