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異世界まるごとクリエイト  作者: 里田うい介
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三ヶ月の成果と今後に向けて


 神になってから数時間。

 作業は遅々として進まなかった。理解した事をすぐに実行しようとも、やった事がないので手間ばかりかかるからだ。


 神の力と言うべきか、この力はかなり汎用性がある事が分かった。念じるだけで物を浮かせたり動かしたりと色々やれる様だ。そんな事をしているから作業が進まないんじゃないかと思われそうだが、今やっている作業と比べればこんな事は児戯にも等しい。

 それとこの能力で何が出来るか、何処までの事がやれるかは検証が必要だと思ったからだ。


 それとは別に、気になった事もあった。もうお昼も過ぎた時刻だが、会社の誰からも連絡がこない。自分から連絡したとしても誰も信じないだろうし、そんな暇もなかったので今までしなかった(忘れていた)のだが。

 先に断っておくが、俺は決してぼっちではない。ぼっちではないのだから連絡がこないのはおかしな事なのだ。


(えっ、違うよね。こっちから連絡していないからと言ってスルーとかないよね。仕事なんだし。単に誰からも相手にされていないから連絡がこないだけだったら泣く自信があるぞ。少なくとも昨日の同僚からは連絡が来る筈だ)


 同僚が二日酔いになったとかは微塵も思わない。奴はザルで、トコトン飲む時は明け方まで飲んで、二日酔いになった事がないと言っていたぐらいなので。


 それに神の力があるのに、周囲の現状が分からない事にも疑問を覚える。神の力を得た時、星を操作するだけでなくそれ以外の使い方も色々と理解できた。普通なら周囲の現状なんて簡単に知る事ができる。しかし今俺はこの部屋の事以外何も分かっていない。


 ふとカーテンで閉められている窓を見る。今の俺ならカーテンが閉められていようがその先を見る事ができる。そもそもカーテンだけではなく壁の先でさえ見る事ができるのだ。しかし、やはりと言うべきかその先を見る事は出来なかった。


(もどかしい)


 俺は作業をしつつ能力で窓のカーテンを開いた。そして唖然とする。


(……何処なんだ、ここは?)


 カーテンを開けた窓の向こう側は何もない白一色だった。思わず作業も忘れて呆然とする。不意に焦燥感が襲ってきたので慌てて中断してしまった作業を再開したが、窓の向こう側が気になって仕方なかった。それ程までに俺はショックを受けていたのだ。


(ここは別の場所?部屋ごと別の場所に来たのか、それとも……)


 疑いだしたらキリがないが俺は全く予想できなかった事態にまた自問自答を繰り返したが答えが出る訳もなかった。

 窓の外の疑問を解決できないまま俺は問題を棚上げし他の事も考えて始めていた。


 神の力が使える様になった時、空腹や睡眠は必要なくなったと理解している。

 だが人間お腹が空いていなくても美味しい料理やお菓子は食べたいし、睡眠をとらなくても横になっていたい時もある。

 それを我慢するなんて考えられない俺は、この力を使えば料理やお菓子を生み出す事も出来るんじゃないかと考えたからだ。


 結果、現状無理だという事が分かった。作業しながら別の事をすると作業効率が落ちてしまうからだ。軽い物を浮かせたり、カーテンを開けるぐらいなら問題はないが、逆に今はその程度しか出来ないという訳だ。もう少し作業を効率化できれば作れるかもしれないが、当分飯なしで作業やれと言われたのと同義だった。


 あと睡眠の方だが、必要ないと理解はしているが眠るという行為は可能だ。だがこちらも今は無理だと言わざるを得ないだろう。

 端から見ていると酷い絵面ではあるが、横になって作業する事はできる。しかし万が一寝てしまったらと思うと中々横になろうという気も起きなかった。寝てしまって起きたらまた星が酷い状況に陥っているかもしれないと思うと怖くて横にもなれなかった。


 結局この日、誰からも連絡はなかった。まぁ当然と言えば当然だ。外が真っ白でここは元いたアパートでは無いのだから。携帯も電波は立っていなかった。と言うよりも文字化けしてとても使えたものではなかった。


 翌日、作業効率は未だに全く上がっていない。自分が何処にいるのか分からないという現実は、思った以上に疲弊させられていた。

 今の現状を考えると俺はこの八畳部屋に閉じ込められていると言っても過言ではない。食事や睡眠が不要とは言え一人孤独に作業するというのは精神的に辛いものがあった。二十四にもなって立ったまま涙する程に。


 しかし一週間、二週間と進むうちに俺は考えるのを放棄した。窓の外は白一色で変化がないし、どちらにしてもこの星の管理、少なくとも災害を鎮めるまではここを離れる事は出来ないのだろうと判断したからだ。それからは作業の効率化だけに没頭する。結局その間話す相手もいないのでぼっち化が加速していくのだが。



 作業開始から一ヶ月。やっと作業と並行して別の事もできるようになってきた。災害数もはじめの頃より半分近くなくなってきたのもその原因だろう。今では星へ手をかざす必要もない。


 さて、問題を先送りしていた窓の外を改めて眺める。何もない真っ白な世界。試しに洗濯バサミを一つ落としてみた。洗濯バサミは音もなく落下し続け見えなくなっていった。しかしこの結果は半分予想していた事なので、落ち着いて眺めている事はできたが。

 そして今の現状では解決する事は出来ないと判断した俺はまたそっと窓とカーテンを閉めた。問題の先送りである。なかった事にしたとも言うが。



 作業開始から二ヶ月。この時期までくると星の操作もある程度集中なしで全ての作業を行う事ができるようになっていた。災害がなくなった所はその平穏な現状を維持し、まだ災害が酷い所を重点的に鎮めていく。

 閑話になるがこの頃になって漸く料理を生み出す事にも成功。久しぶりに食べる食事に俺は涙した。


 また同時進行でそろそろこの星の今後についても考えなければならないだろう。まずこの星は現在、岩山と海が大半を占める。

 後は少しの森と動物があの災害の中健気に生き延びているだけ。

 災害を鎮めた後も色々やらなければならない事が目白押しのようだ。何処から手を付けたらいいか分からない現状である。それでも少しずつ現状回復に努めるだけだが。



 作業開始から三ヶ月。災害もなくなり、やっとの思いで休憩を挟む。ハッキリ言って疲れた。他の事も色々考えながら作業していたので余計にだ。燃え尽きたようにベッドに横たわる。ある程度治まったら休憩をとるつもりだったが、休憩を入れようと操作の手を止めるとまた再びあの焦燥感に駆られだした。

 こんな思いは二度としたくないと、今度は完全に災害をなくすまで続けてやるという気持ちで全てを鎮めていった。一種のノリというやつだ。


 全ての災害を鎮めた達成感とやっと終わったという脱力感が一気に押し寄せた。

 ベッドの中で伸びをしながら「もう何もする気起きねー」と愚痴るが、そんな訳にもいかない。

 この星なのだが油断すると再び災害が勃発する為、常に調整をしなければならないのだ。これに対してしっかりとした対策を練る事が今後の課題である。

 そしてこれは自分が一番驚いた心境の変化だが今後の事について少しだけ楽しみになっていた。


 この星を管理するという事はこの世界を自分の思い通りに作り変える事もできるという事だ。膨大な作業と時間がかかる事は分かっているが、それでも時間は用意されている。暇を持て余さないようにしつつ、この星の管理をもっと効率よく行う為に、世界を作り変えようと思った。


 まだまだやる事は多いが災害がなければどうという事もないので、気長にやっていくつもりだ。


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