第6話「地獄遍路の引率者②」
謎の怪奇現象によって最悪の出だしとなった俺の学校生活だが、その後も降りかかる災難は止まることを知らなかった。
廊下ですれ違う時に挨拶をした相手が直後に転ぶなんて日常茶飯時。
理科の授業中隣にいた女子にガスバーナーの使い方を聞かれたので自分ので説明していたら、突然彼女のガスバーナーの勢いが強くなって『偶然』後ろを振り向いていたその子の髪に火が燃え移ったり。
休み時間にサッカーをしてたら蹴ったボールがあり得ないカーブを描いて『偶然』応援席にいた女子の顔に直撃したり。例を挙げたらきりがない。
とにかく俺と話をしたり行動を共にすると怪奇現象というか不幸な出来事が高確率で発生してしまう。しかも対女子限定で。こういった類いは噂好きにはたまらないらしく、「梅宮と関わると不幸になる」という噂はたちまち学年を越えて校内に広まっていった。
そんな噂が立っても俺はできる限り男女隔てなく接した。たとえ避けられたり、ヒソヒソと陰口を囁かれても。結果的に周りを気にせずに話しかけてくれる女子の友達が一人だけできた。男子の友達は残念ながら一人もできなかった。理由は今考えてもわからない。その子はいわゆる電波系? というか時々不思議なことを口にする、一緒にいて飽きない性格の持ち主だった。そしてこの子こそが、俺が『目に見えないもの』を信じるきっかけになったんだ。前置きが長くなってしまって申し訳ないが、彼女曰く
「あなたの肩にはいつも髪の長~い女性の手がのってる。その反対の手が時々伸びて悪さをしている。あと私を凄く怖い目で睨み付けてる」
だそうだ。想像してみて欲しい。見知らぬ女性が背中にピタリと、まるでイモリの様に張り付いている薄気味悪さ。たとえ
「この人、あなたに危害を及ぼす気はまったくないよ。それどころか『愛』さえ感じる。だから生きてる女の子と仲良くなるのはどうしても許せないみたい」
と言われたって安心できない。守護霊ならまだしも背後霊に好かれてもうれしくない。仮に相手が生きてればこちらから断ることもできる(可能性の話として)だろうが、実際は見ることも話すこともできないのだ。ただ一方的な好意を向けられるだけ。しかもお気に召さないと暴力? で片付けようとする。あれ? これ巷で言う『ヤンデレ』って奴じゃ……? あと、これもその子から聞いたのだが、物が浮いて移動したり火の強弱が勝手に変わったりする等、説明がつかない現象は「ポルターガイスト」と呼ばれるもので、心霊現象の一種なのだそうだ。
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こうして謎の怪奇現象の原因はわかったものの、解決策は見つからないまま月日は流れ、俺はどこの誰かもわからない背後霊のことをいつしか「レイさん」と呼ぶ様になったのだ。さん付けなのは最初呼び捨てしてたらキッチンから包丁が飛んできたためである。しかし……
「どうしてあんなことを……」
つい口走ってしまった。駄目だ。考えない様にしてたのに。今は計画が失敗して自分がどこにいるのかもわからないのだ。脱線した思考を戻さなくては。
「やっぱり死後の世界? 自殺だから地獄? でも実感ないなあ」
そう、それはあくまで状況確認のつもりだった。
「グギャギャギゴガ? 」
ほら、やっぱりここは地獄じゃないか。
目の前に現れたのは身長150センチ程で手に鉈を持った緑色の『鬼』だったーーー。
ようやく初エンカウント!
まだ戦ってもいないけどね!!
というわけでギリギリいつもの時間に投稿できました。序盤でこんな調子だと次回はどうなることやら……
ブックマーク、評価ありがとうございます。これからも温かい目で見守って下さると幸いです。