第5話「地獄遍路の引率者①」
ここが地獄だとするとさっきの二人組は地獄の鬼ってことになるのか? ジジイはともかくあの女は鬼には見えなかったけどな。綺麗だったし。
「っ痛い!? 」
背を低くして獣道を進んでいると『偶然』上から太い枝が降ってきて『偶然』俺の頭に直撃した。落ちた枝をよく見ると切断面が綺麗に平らである。まるで『何か』に切断されたかの様に。
「口に出してないんだから大目に見てくれよ……」
だがそんな災難にも今さらどうこう言うつもりはない。これが俺の日常であり通常運転なのだから。
「上手くいったと思ったのに、レイさんとは地獄でも離れられないんだね」
さて、突然だが貴方は『幽霊』を信じるだろうか。あの見えない、触れない、話せないという生物としてカテゴリーしていいのかも疑問な思念体、あるいはプラズマと呼ばれるオカルト的存在だ。因みに俺は目に見えない物は信じない派である。しかし何事にも例外はある。俺にとっての例外、それが『幽霊』だ。一つ言っておきたいのは、別に俺が見える人だとか、霊感なんてものがある訳ではない。それなのに何故幽霊を信じるのか。それは『実害』があるからだ。
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遡ること三年前。中学に上がった俺は始業式を終えた後、クラスに戻る途中自然と前にいた女子生徒に話しかけたんだ。活発そうな印象だったので挨拶がてらここで少し会話をして仲良くなっておきたかった。正直下心もあった。そして相手がこちらに振り向いたその時
「ねえ、え!? 」
「なに……え? 」
彼女のスカートがバサッと大きく捲り上げったのだ。まるで俺が捲った様に。今思えばあの時、俺と彼女の間で『偶然』局地的な上昇気流が発生したのかもしれない。お互い何が起きたのかわからず一瞬固まったが、理解が追い付いた彼女の行動は早かった。
「キャアアアアア!!! 」
一緒に移動していた周囲は騒然。その後はじまる犯人探し。「俺は何もしていない」なんて言い分は通用せず、かといって「ちょっとふざけすぎました」なんて誤魔化せる空気でもなく。結果、担任の女性教師が事情を聞きにくるまで女子たちに吊し上げられ尋問される羽目に。なんとか事態を終息させた担任に言われたのは
「そういうことが許されるのは小学校までですよ? 」
という張り付けた笑顔付きの教育的指導。こうして俺の中学校デビューは最悪のスタートを切ったのである。だがこんなのは寧ろ、これから始まる悪夢の始まりに過ぎないことをあの頃の俺は知る由もなかったーーー。
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