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第13話「森の主②」

すみません遅くなりました。

ではどうぞ↓

 とある城内『本丸』にてーーーーーー。

 

 「連絡が途絶えただと?」


 「はっ! 『魔の森』に向かわせた忍四名と現在交信ができません! 」


 「して、敵軍の“姫”は見つけられたのか? 」


 「わかりません! 」

 

 その報告は重臣たちをたちまち不安にさせた。あの『魔の森』の調査隊に選抜されたということは忍の中でも指折りの人材ということだ。魔物に襲われた可能性もあるが、それでも全滅するなどとは誰も予想していなかったのだ。


 「皆の者静まれ!! 通信が途絶えてどれほど経つのだ? 」


 「既に二日が経とうとしています、族長」


 「……忍どもは捕らわれたか魔物に食い殺されたのであろう。新たな部隊を編成し、森を迂回して敵軍の動きを探らせよ。くれぐれも魔の森に近付いてはならん! 皆の者よいな! 」 


 「「「「ははあっ!! 」」」」






▼▼▼





 「おまえは一体何なんだ畜生! 」


 「一人になったら怖くなったか、ハゲ? 」


 盗賊たちのほとんどは少年によって蹂躙された。あるものは心臓を抜かれ、あるものは四肢を折られて地面に伏している。彼らの身に何が起こったのか、わかっているのは少年だけだ。


 「生意気な、この剣の錆にしてやる! 」


 頭領は肩に担いでいた身の丈程もある大剣を構えると、横薙ぎに振りかざしてきた。少年がバックステップで避けると、頭領はニヤリと口元を吊り上げる。


 「やっぱりな! てめえの得意技は接近しないと使えねえんだろ? これだけリーチがあれば届くことはねえ」


 「……」


 対する少年は相手を凝視しているものの、涼しい顔のまま何かをブツブツと呟いている。


 「どうしたあ! 避けるだけで手も足もでねえか!! 」


 「……そうか。あれ業物じゃないのか」


 「あ? 何か言ったかチビすけ! 」

 

 「まあいいか。《追加》」


 《完全無視(オールスルー)》発動状態

 《対象》前方人型生物×一体

 《追加》人型生物が所持している武具


 「終わりだああ! 」


 男の振るう大剣がついに少年を捉え、頭から垂直に一刀両断する。少年の体は真っ二つに別れ……

















 なかった。








 「はあ!? 」

 

 「さっきからチビチビチビチビ……」


 大剣は少年を『すり抜け』地面に突き刺さっている。目を見開く頭領。そしてズボッという音が男の眉間から聞こえた気がした。


 「脳味噌腐ってんのか? あ? 」


 ブジュブジュブジュ!!


 「あっ……うが……」


 かつて頭領と呼ばれた男は白眼を剥き、口から泡を吹いて倒れた。少年は男の頭から手を引き抜くと、さも汚ない物に触れてしまったという仕草をした後、男の手から大剣を引き離した。


 「ふんっはっ」


 その場で何度か素振りを行う。身の丈以上の大剣が風を切る度、少年の体に重量感を感じさせる。


 「これくらいなら《身体強化》に使う魔力は1割りも要らないな」


 そんなことを言う少年を遠巻きに見ていた三人の若者たちは林の陰でブルブルと震えていた。謎の術とその細腕からは想像もできない怪力を見せた少年に、彼らは恐怖せずにはいられなかった。


 「あいつ何者なんだ? 」

 

 「わかんないわよ」


 「ヤベエことは確かっす」


 すると奥の方でじっとこちらを見ていた赤熊、アルクトゥスがゆっくりと少年の方に近付いてきた。


 「グルルル」


 「さて、おまえをどうするか」


 既に赤熊と少年の距離は1メートルもない。いつ襲われてもおかしくない状況。しかし事態は予想外の方向へ動いた。


 「本当にあいつ何者なんだよ!? 」


 「だからわかんないってば! 」


 「ヤベエっす! 兎に角ヤベエっす! 」


 少年の前で寝転んでいるのは間違いなく赤熊。しかも森の主と呼ばれた隻眼のアルクトゥスだ。それが少年に腹を見せ、口から舌を伸ばし甘えている。否、それは弱者が強者に示した“屈服”の意志表示。野生の本能に従ったが故の行動だった。


 「よ~しよしよし。良い子だな~」


 「ハッハッハッ」


 「おまえは元の棲み家に帰れ」


 「ガウッ」


 こうして森の主は新たに現れた強者にその座を明け渡したのであった。





▼▼▼




 「あなたたちも帰って下さい」


 「え? 」


 しばらくアクトゥルスと戯れた後、少年は三人が隠れている林の前までくるとはっきりとそう言った。


 「さっきはごめんなさい。緊急事態だったので、とっさに敬語が出てこなかったんです。出てきてくれませんか? 」


 最初とはかなり違う態度で接してくる少年に若者たちは面食らった。警戒せずにはいられない。だが自分達を危機から救ってくれたのがこの少年であることも事実だ。


 「おいどうする? さっきまでと全然雰囲気違うぞ」


 「敵意はなさそうだけど」


 「どの道ここにいたらアウトっす 。とりあえず機嫌をとって、森から出るまで護衛してもらうのが得策じゃないっすか? 」


 「そんなに上手くいく? 」


 「いや、それしかない。やるぞ! 」


 「「わかった(っす)」」


 三人は少年に聞こえない様に小さな声で相談して方針を決めると、意を決して林から出るのだった。

ブックマーク、評価ありがとうございます。これからも温かい目で見守って下さると幸いです。

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