第11話「覗き魔」
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タイトル変更しました!
これからも本作品をよろしくお願いします。
とある城内『??』にてーーーーーー。
松明のわずかな灯りに照らされて、揺らめくは二人の影。昼にも関わらず窓を閉めきり密談を交わす二人の顔には、危機迫った色が伺える。
「それは真なのか? 」
「確かじゃ。忍の報告では“間違いない”と」
「しかしあの『魔の森』じゃぞ? たとえ我が一族の精鋭でも三日ともつまいて」
「もしや狐の新兵器が完成したのでは? 」
「そんな、だとしたらもう勝ち目は……」
「……そろそろ鞍替えの時かもしれぬのう」
「準備を早める他ないか」
「それにしてもまだ信じられぬ」
「ああ、あの森で生きられる“人”がおるとは」
▼▼▼
異世界に迷い込んでかれこれ一ヶ月が経った。最初こそ戸惑ったが、このジャングル生活にも自分の『能力』にも大方慣れた。おかげで食うに困ることはないし、自称守護霊スイの協力もあって退屈しない日々を送れている。
ーーーー見て見てマスター! こんなのが獲れましたよー!ーーーー
洞窟の入り口にいた俺の耳にスイの声が聞こえたのは日が傾き始めた夕暮れ時。なんだろう、確か『川に洗濯に行ってきます! 』と言って俺の身ぐるみを剥いでいった筈だが。桃でも拾ってきたかな?
ーーーーじゃじゃ~ん、今日の獲物です♪ーーーー
「桃でもなければ食い物でもなかった」
縄で縛られて簀巻きになってなっているのはどう見ても人間。しかも三人。おまけにお揃いの獣耳。この耳は犬? とにかく食い物じゃないのは確かだ。
「これどうしたの? 」
ーーーーはい、川から戻ってきたらマスターのことをジロジロと見ていたので、思わず仕留めちゃいました♪ーーーー
「マジで!?……いや、よくやった」
ーーーー当然のことをしたまでです! マスターの美しい体を見ていいのは私だけですからーーーー
言い忘れていたかもしれないが、スイに着てるものを『全て』とられた今の俺は全裸である。どうせ誰かに見られる心配もないだろうとその時は考え、自然と一体になる道を選んだのだが、まさか覗かれていたとは。
「やばい、気色悪くて背筋が寒くなってきた」
ーーーーこの服をどうぞ!ーーーー
「おお、シワ一つない。クリーニングに出したみたいだ! 」
ーーーー愛を込めましたから! ところでこの覗き魔たちをどうします? まずはマスターの裸を見た眼球をくり抜きますか?ーーーー
「まあ待て。まずは“そこの茂み”に隠れている奴に話を聞いてみようじゃないか」
「!!」
俺の発言で男がピクッと反応したのが『見える』。さっきからいるのはわかっていた。スイが覗き魔たちを連れてきた時にもしやと思い、『完全無視』で周囲の草木を360度『無視』ーーー所謂透視であるーーーしたら予感的中。こいつらの仲間とおぼしき獣耳の野郎がいるではないか。なのにすぐ捕まえなかったのはあることを確認するためだ。
「動くな。こちらの質問に答えれば命までは取らない」
「……」
「お前には俺たちが何人に見える? 」
「……お主一人ではないのか? 」
「……やっぱりか」
ーーーー……ーーーー
こいつらにはスイの姿は勿論、声も聞こえていないらしい。ということは俺が「耳」で聞いていると思っていたスイの声はテレパシーの様な物か、あるいは霊感を持っている者にしか聞こえないのかもしれない。俺にはそんなの無いと思ってたんだけどな。それだけでも確認できて良かった。
「……!? 」
「スイ、捕まえたか? 」
ーーーーはい。マスター。ーーーー
これは今初めてわかったことではないが、スイはこちらの世界に来てから俺以外の生物に触れる様になったらしい。それがわかって一番悲しんでいたのはスイ自身であったが。
「じゃあそのまま抑えてろ。始末は俺がやる」
ーーーー畏まりましたーーーー
俺は簀巻きになっている奴等を手早く『処理』すると、茂みの方に近づいていった。手と口を塞がれた覗き魔<その四>がジタバタと暴れているが、拘束が外れることはない。そして俺が目の前に立つと目に涙を溜めて何か言おうとしていたが、それも無視して俺はナイフを降り下ろす。
「俺はもう、誰とも関わりたくないんだ」
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