第10話「地獄遍路の案内人②」
今週になって風が強まってきましたね。我が家には風とともにテントウムシがやってきました。冬ももう終わりですかね(しみじみ)
「異世界か……」
「なんで? 」という疑問はあるものの、どうせ捨てるつもりだった人生だ。リスタートできたというのなら、今度は好きに生きてやろう。せいぜい前回と同じ轍を踏まない様に。
ーーーーマスター、今日はもうお休みになられた方がよろしいかとーーーー
「そうだな。視界もほとんど真っ暗だし。屋根がある場所まで案内してくれるか? 」
ーーーー畏まりました。縄を引っ張るので掴んでいて下さいーーーー
すると地面に横たわっていた縄の端がふわりと浮き上がって移動し始めた。月明かりに照らされたその姿はさながら蛇の様にも見えたが、こんな怪奇現象にも慣れ始めた自分がいる。まあ今までのことを思えば耐性もつくだろう。まだ現象の『意志』がわかるだけ優しい方だ。
しばらく歩くと洞窟の様な場所に着いた。今晩はここで野宿かな。少し奥の方に進むとさらに奥の方から大量の木の枝がフワフワと浮遊してきて、ドサッと足元に落ちた。そして勝手に火が着いた。その様子を俺は複雑な想いで見ていた。
「……火をつけることもできるのか? 」
ーーーーそれくらいなら朝飯前です。マスターが風邪でもひいたら大変ですから。もっと薪を持ってきますか?ーーーー
「……いや、これで充分だ」
ーーーー畏まりましたーーーー
「そうだ。守護霊さん」
ーーーーなんでしょうか?ーーーー
「『守護霊さん』じゃ呼び辛いから、他の呼び名を考えよう。前は勝手に『レイ』さんって呼んでたけど、希望はある? 」
ーーーー私はマスターの守護霊だと何度言えばわかってくれるんですか? 背後霊などと一緒にしないで下さいーーーー
「そうだったね。ごめん」
ーーーーわかってくれれば良いんです。そうですね、『スイ』は如何でしょう? あと、これからは「さん付け」しなくて結構ですーーーー
「……いいんじゃない? じゃあこれからよろしく『スイ』」
ーーーーはいマスター。ーーーー
俺はその日守護霊改めスイと話をしながら夜を明かした。
ーーーー『永久』によろしくお願いしますね。私のマスター?ーーーー
これにて第一章完結です。次回から始まる第二章にご期待下さい。なお第二章からは一週間おきくらいに更新していこうと考えているのでよろしくお願いします。ブックマーク、評価ありがとうございます。これからも温かい目で見守って頂けると幸いです。