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三話「悪意の襲来」

間に合ったぜ!!

「うおぉぉぉ!!」

 俺は、エレグ・ドラスを振り抜き雷電による魔術を敵に浴びせた。

 が、相手に効いた様子は無く、雷電は軽くあしらわれる。

 異常である。あれほどの高出力魔術を受けて何ともない生物はいない。たとえ雷属性への耐性があるにせよ、何かしらの麻痺現象、もしくは一瞬の怯みが起こるはずだ。

 しかし、奴は意に介さず一歩踏み込むと、俺の腹部目掛けて拳を振り抜いた。

 迫る拳に対し、剣を地に突き立てることで跳ね上がり回避する。そのまま空中で反転しつつ奴の肩の腱を狙い斬撃。

 血しぶきが舞い、敵がピクリと反応する。どうやら物理攻撃なら効くようだ。

「フィリーネ!!」

「了解!」

 俺の合図に素早くフィリーネが飛び出し、敵の懐に潜り込むと細剣を突き上げる。細剣の切っ先が奴の顎を貫き、敵は大きくのけぞった。

「カリア!!」

「わかってる!」

 答えると同時に俺は、のけぞった奴の胸部に二本の剣で二撃加えると、魔力を上乗せすることで発光する二本を突き出す。

 爆音が響き、奴が吹き飛ぶ。確かな手応えがあった。流石にこれは効いたはずだ。一発一発は強力なようだが、うまく対応すれば一方的に攻められる。

「……もう、終わり?」

「……どうだろうな。あくまで人っぽかったし、流石に立てることはないだろうけど、気絶してるかは分かんないな」

 その時だった。

 突然に土煙が晴れ、煙の向こうから倒したと思われた巨体が起き上がった。

 「マジかコイツ……」

 そう呟いた俺は、その巨躯を見る。有り得ない。肩と顎の傷が修復している。胸部に出来たえぐり傷も見る見るうちに塞がり、直ぐに修復した。

「あれ……人間じゃないでしょ……」

 フィリーネが呟いた時、月明かりが奴を照らし、はっきりとその姿が見える。

「「っ!?」」

 俺達は息をのむ。

 まぶたの無い眼球にリザードマンのように突き出し裂けた口、一部継ぎ接ぎしたような皮膚の跡、明らかにただの人ではない。

 奴はガルルと唸り声を上げて、ゆっくりと体の動作を確認している。

 俺たちは、ただならぬ悪寒を覚え身震いした。

「どうする……」

「どうするって……戦うしかないでしょ……逃げれると思う?」

 フィリーネの言葉に俺は、改めてあの化け物を見た。奴は動作確認を終え、こちらをまっすぐに見つめている。

「…………無理だな」

 俺は、苦笑いしつつエレグ・ドラスを仕舞い、ヴェラータ・ディウスを抜いた。

 すると、


「あれぇ?こんなとこで何してんのぉ試作品」


 不意にどこからか、場違いな間延びした声が響く。

 顔を上げると、近くの巨木のてっぺんに誰かいた。

 金色の怪しげな覆面に赤いラインの入った黒いロングコート、肩には巨大なサイスを担いでいる。

 そいつは、続ける。

「何やってんだ。早く始末しろ。僕は先いくからねっ」

 そう言って、男は俺達には見向きもせずに宙にふわりと浮かび上がるとどこかに飛び去っていった。

 直後だった。


グオオオオオ!!!!!!!!!!!!


 試作品とよばれていた化け物が砲口を上げ、襲いかかって来た。

 あまりに強烈な砲口に怯み、タイミングをはかり損ねた俺は奴の拳を受けてしまう。

 とっさに拳と自らの肉体の間に二本の剣を挟み込むことで直撃は裂けたものの、拳が触れた瞬間、腹部が弾け飛ぶような感覚を受ける。

 俺は、無抵抗に吹き飛ぶと巨木を五本ほど突き抜けて、六本目の巨木にぶち当たると、ズルリと情けなく地に伏せる。

「っかっ…………はっ」

 余りに衝撃と痛みに息が詰まる。見たところ、腹部は吹き飛んでいないが内部損傷を受けたに違いない。口内に血が溢れる。

 霞む視界で、顔を上げた時、目の前に奴がいた。

「っ!!」

 痛みを忘れ、慌てて横に転がる。

 すぐさま、先程自分のいた空間に拳が振り下ろされた。

 轟音と共に爆風が俺を吹き飛ばす。

「カリアっ!!」

 フィリーネが、俺を抱き上げすぐにその場から離脱する。

 敵は、ギロリとこちらを睨むと――――


 消えた。


!?


 驚愕する俺達、その直後、奴は俺達の正面にいた。

「有り得ないっ!?」

 声を上げたフィリーネは、すれすれのところで拳を交わすと、俺を抱えたまま剣を構える。

「……ダメだ。フィリーネ…………俺を囮に逃げろ。…………俺を抱えたまま戦える相手じゃ――」

「黙って!!私は誰も死なせない!」

 俺の言葉を遮り、そう叫んだフィリーネは、細剣を構え魔術を発動した。

 突き出された細剣が強烈な光を放ち、周囲が真っ白に染まる。めくらましだ。

 フィリーネは、すぐさま駆け出すと俺と共に森の奥へと姿をくらましたのだった。


 しかし、その時俺達は気づかなかった。化け物は、光に目をくらまされること無く、ただじっと俺達が去っていく一部始終を見つめていたのだということを――――

感想くださいwwww

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