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終章 修復の始まり その3

     3 『御魂石のターン3』

祠内の空気が、揺れた。不穏な気が充満し、鏡菜たちは急に冷静さを失った。かつての惨劇が脳裏をよぎる。みんなが思い描いたのは赤ちゃんたちの爆発。今はもう、ここにいる誰もが、能力を持っていない。普通の人間なのだ。ベイビー・ドライブの次の脅威が訪れても、対処する術はない。


 風太郎が消えた瞬間から、全員の能力が発動されなくなった。ベイビー・ドライブを終わらせた代償となったのか、ナノマシンによる次なる作戦の一部なのか、それはわからない。

 ただみんなは、『ベイビー・ドライブの脅威は去った』という風太郎の言葉を信じたのだ。


 だからこの無数の視線にも、驚きこそあれ、恐怖はなかった。

ひとり、またひとりと、鏡菜たちはその気の出処に気づき、祠の入口へと、顔を向ける。

「ご迷惑を、それから、ご心配をおかけしました」

「マングウ!」

 足を踏み入れてきたのはマングウだけではなかった。川跨里(かわまたぎり)(しょう)、キノコ、ハンコ、それに、月葉戦郁の姿もあった。

 死者の復活に塊子の顔を見るが、彼女は両手と顔をちから強く振り、「知らないわよ」と言った。


 口を抑え、わなわなと震える栄に優しい笑顔を送る戦郁。

 里晶に深く頭を下げる塊子。

 鏡菜だけが、復活に浮かれるみんなとは違う表情をしていた。

「フウフウ! どこだ、おぬしも戻ってきているんだろ? どこにいる!」

 そのときマングウと鏡菜の視線が、交差した。

 マングウは顔を曇らせて、首を横に、振った。


 鏡菜は、膝を折って、哀しみを爆発させた。かならず戻ってくると信じ、これまで気丈に振る舞っていた糸が、ぷつりと、切れた。


 絶叫に近い声。大粒の涙。震える身体。絶望に染まっていく小さな身体。


 マングウは、弱って行く肩を、ただ抱くことしか出来なかった。

「風太郎さまから伝言があります」

 泣きやまない鏡菜にかまわずマングウは続ける。


『強く生きてほしい。そうすれば、かならず、かならず、ボクらは再開できるから』


つづく

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