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終章 修復の始まり その2

     2 『御魂石のターン2』

 洞窟内の社の前に集まったのは、使用人を除く者たちだった。シュウは鏡菜を案内したあと姿を消した。


 月葉栄、蜜神鏡菜、心羅陽、凪裸坂塊子、真戒虎乃新、それから、高谷まひるの六人が社の前に集合した。


 なにが起こるのか誰も聞かされていない。みんな、栄の言葉を、新しい展開を待っている。

 栄は閉じられた眼を巡らせ、笑顔を浮かべながら、そのまぶたを開いた。

「不思議だと思いませんか?」

 誰も答えない。質問の意味を誰も解さないから答えられるはずもない。みんな、黙ったまま、次の言葉を待った。


「心羅さん、あなたの威圧的な表情、蜜神さん、あなたの機械のような表情、凪裸坂さん、あなたの楽観的な表情、高谷さん、あなたの怯えた表情、すべて、見えているのです」


 風のない洞窟内は、音も流れない。だから口を開かなければ静寂が支配した。たまりかねたように、虎乃新が慌てて質問した。

「いったいどうなってるんだ? オレたちは能力がなくなるし、栄は視力が戻っているし、意味がわからない。フウフウが関係しているのか? 誰か説明してくれよ」

 答えられる者はいない。しかし、栄だけは違った。

「風祭さんが消えた日、わたしはある映像を視ました。それを忘れず、ずっと、待っていました。それが、今日なのです」


「まさかベイビー・ドライブの再発じゃないだろうな」と、鼻息を荒くする陽。彼女がまひるをにらむ。

 そこで栄がやんわりと陽をなだめる。

「風祭さんのおかげでベイビー・ドライブは完全に消滅しました。ご心配はいりません」


「これだけははっきりさせましょう」人差し指を立てながら塊子が言う。「風太郎ちゃんは生きているの? 死んでいるの?」


 死、という単語に鏡菜が反応するが、またまた栄の出番となった。

「それには、どちらでもない、としか答えられません。でも、今日、ここで、未来を大きく揺るがす変化が訪れます。そのために、集まってもらいました」

「まさか! フウフウが帰ってくるのか?」

 たまらず鏡菜が一歩前に出て叫ぶ。

「それはわかりません」残念そうに首を振る栄。「ですが、何かが、起こります」

 そして栄が、ひとつの石を取り出した。

「御魂石です。もともとこの石は、ベイビー・ドライブを起こすためにナノマシンによって作られた人口石なのです」

「作られた、ということは、ナノマシンの塊なのか? そんなの捨てろよ!」

 虎之新が声を荒げる。

 まひるが、自分の弱さが引きよせた災厄を思い出したのか、ナノマシンという言葉に眉を寄せた。隣にいた鏡菜がそっと肩に手をのせる。

「安心してください。わたしたちは御魂石を改良しました。すべては未来のために、そしてそれが、風祭さんの希望だったからです」

 栄の眼が一瞬、光ったような気がした。

「時間です。いよいよ。変化のときがやってきます」

 栄の言葉が洞窟内を支配した。


つづく

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