第八章 ナノマシン その3
3 『月葉 栄のターン6』
「未来が……また、顔を出したわ」
栄の顔がパッと明るくなった。
「そんなことより」シュウは栄の手をギュッと握り、身体の震えを隠そうともせずに言う。「僕たち、大爆発に巻き込まれたよね?」
「そのような気がします」
「気がしますじゃなくて、巻き込まれたの」
「では何故、生きているのでしょう」
「それなんだけど……」
シュウがきょろきょろと眼を走らせ、はるか上空でピタリと止まった。その視線が捉えているのは風太郎と鏡菜。ふたりの姿を確認してシュウが乾いた唇をぬらした。
「風太郎さんって、千手観音様か不動明王様の生まれ変わりかな……でなきゃ、悪魔だ……」
「いったい、何を言っているのですか?」
栄が優しく問うと、シュウは力強く答えた。
「風太郎さんが、いっぱい、現れたんだよ! 大爆発に巻き込まれた瞬間、確かに僕は見た。大勢の風太郎さんを!」
栄が顔を上げた。見えていないが、その顔はまっすぐ風太郎たちを向いている。すぐに顔を戻すと、シュウの腕を引っ張った。
「シュウさん、お願いがあります。わたしを祠まで連れて行ってください」
つづく




