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11話:生活

 工房に戻ったソラは猫と自分のご飯を用意し、さっさと食べ、すぐに寝ました。


【5月10日】


 翌日、ソラはいつも通り買い出しに出かけます。猫の餌と自分用に出来合いのものを買うと工房に戻りました。

 もそもそと食事を摂り終わると、ステータスを確認します。軒並み上がっていますが、MPが上昇していることに一番安心しました。一番良かったのは昨日の夕方からMPが自然回復で5回復していたことでした。

 早速残っているMPを全て使いポーションを作成します。MPを消費しきると今度はマナポーションをがぶ飲みし、またポーションを作っていきました。

 できたポーションは全て錬金術ギルドに持って行き提出します。そのまま魔力ポーションを買えるだけ買い込み、今度は冒険者ギルドに向かいます。そこではオークの魔石を売り払い、それが終わると工房に戻りました。

 予想よりも30分ほど早く工房に戻って来れたことで、ステータスの恩恵を感じました。


 ソラが1週間で調べたことにはステータスについてもあります。

 HPは生命力で、体の頑丈さです。

 MPは魔力の量で、スキルを使うときに消費します。

 力はそのままで、この数値が大きいほど重いものが持てます。

 敏捷もそのまま動作のすばやさです。

 体力は運動に耐える力で、高いほど長く動けます。

 魔力の数値はそれの質の高さです。

 抵抗は魔法に対しての防御力です。

 器用は体を思うように動かす力です。

 そして、HP、力、敏捷、体力、抵抗、器用は常にその値通りの力を発揮するわけではありません。肉体を魔力で強化することにより、この数値通りの力を振るうことができるようになります。ただ、この肉体を魔力で強化、ということはほぼ誰でも無意識下で行うことができるため、普段は誰も意識していません。ソラ自身何も知らない内からできていたので本当に簡単な技術なのだと納得しました。そして、どのように強化しているかを計測することでステータスの数値に反映されます。

 MPと魔力は別で、その人の魔力の質と量を測った数値になります。MPが多いほど魔力は沢山使えますし、魔力が高いほど同じMP消費でも威力が上がる、という具合です。


 この資料を読んだソラは、面倒なのでステータスは高いほうがいい、とだけ憶えていました。


 工房に戻ると、今度はポーチを持って街道へ向かいます。そして、今までどおりに採取し工房に戻りました。こちらもいつもより早く戻ることができました。

 その日は猫と戯れたり、ぼーっとしたりして過ごしました。




【5月11日】


 翌日、ソラは朝食を摂るとポーション作りに向かいます。

 淡々とポーションを作り終えると、今度は簡単に計算をしてみます。

 1日あたりのMP回復量が11ポイント。5ポイントをガラス瓶に、他をポーションに使うと、単価が800なので4800。

 魔力ポーションを4つ使って回復するMPが40ポイント。ポーションの依頼で32000。魔力ポーション代が20000。

 食事代が猫と自分の分を合わせて1日1000。

 よって、1日の収支は15800セリンです。

 このまま月末まで過ごせば家賃の20万セリンは十分に払えます。

 とりあえず目処がたったことで、ソラは一安心しました。


 それからは、同じことを同じように繰り返して過ごしていきました。




【5月23日】


 採取と錬成を繰り返す毎日でしたが、この日は違いました。

 いつものように街道を歩いていると、魔物に見つかったのです。魔物は緑色の肌を持つ、子供くらいの大きさの鬼、ゴブリンでした。

 以前倒したオークと比べれば弱い魔物ですが、あのときは奇襲で今回は遭遇戦です。

 走って近付いてくるゴブリンはソラよりも速そうで、仕方なく応戦することにしました。ナイフを抜くと、右手で持ちます。

 近付いてきたゴブリンから恐怖を感じます。ゴブリンの大きさは130センチほどで確かに小さかったのですが、ソラはそれよりもさらに背が低いことも原因のひとつでした。

 ソラはゴブリンに対して後に下がりました。

 ゴブリンはその距離を走り抜け、手に持っていた棍棒で殴りかかってきます。

 ひたすら後に下がっていたため、余裕を持って回避できましたが、棍棒は3センチほど地面にめり込みます。踏み固められていただけとはいえ、土を穿った威力に背筋が冷えました。

 ソラも対抗しようとしますが、ナイフではリーチが短く、ソラの腕も身長相応の長さしかありません。つまり、ナイフを刺すには近距離まで近付かなくてはならず、そうすれば棍棒で殴られるでしょう。ソラは自分が走る早さから、そう判断します。

 結局、ナイフを捨てて魔晶石をポケットから取り出し、魔法の矢を展開します。バックステップを繰り返しながら照準を定め発射しました。

 しかし、冷静に見えながらも焦りながら発射した魔法の矢はゴブリンの頭部横50センチほどを通過していきます。

 全く見当違いなところに飛んでいく矢を見ていると、そのわずかな時間でゴブリンが近付いてきました。

 振りかぶられる棍棒。そのまま打ち下ろされることを幻視します。

 同時、オークとの戦闘時を思い出しました。


 あの時と同じ気持ちがあります。

 それは、誰もが普通に考えていること。

 生きたい、という思いでした。

 この世界に来た当初は全く無かった思いです。しかし、この世界で生活することで芽生えた思いでした。

 理不尽な暴力がないというだけの生活が、ソラにはとても大切なものでした。

 一人だけの生活が、その気持ちを作ったことはとても悲しいことですが。


 ソラの感情が落ちました。

 魔晶石を使い、魔法を展開。

 このまま頭を撃ち抜いても棍棒はそのままの勢いを残して当たると判断。

 撃ちこむ場所を腕に変更します。

 発射、そして命中。ゴブリンの腕が斬り飛ばされました。

 魔法の矢では、腕を完全に破壊できないと判断し、魔法の刃の形に変更したのでした。

 棍棒は、急にかかっていた力が無くなったため、わずかにかかっていた力と重力に任せて落ちていきます。仮に当たったとしても致命傷になることはないでしょう。

 ゴブリンは前腕の半ばから先が無くなっていましたが、勢いを止められず腕を振り切ります。振り切った後、痛みから悲鳴を上げました。

 ソラはそのまま、至近距離から魔法の刃をさらに展開。ゴブリンの腹に向けてぶち込みます。

 命中した魔法の刃は、刃の形にしたため貫通力が下がり、ゴブリンの抵抗を抜けきることはありませんでした。しかし、腹部を半ばまで断ち切られ、腹圧から内臓が出ていました。

 それでも即座に絶命するだけの威力がなく、その場でうずくまっています。

 それに対し、ソラは魔法を使った後バックステップで退避しました。返り血を浴びながらも下がり続け、ゴブリンから十分な距離をとりました。

 その後、ゴブリンが絶命するまでソラは一向に近付こうとしませんでした。死ぬ間際に暴れられても面白くないためでした。

 そして、ゴブリンが死に掛けている横で、目的のミドリソウと結晶砂を採取します。やがて、周囲に採取できそうなものがなくなると、ゴブリンに近付いていきます。

 途中で捨てたナイフを拾い、左手には魔晶石を持ったままです。ゴブリンに近付くとナイフを首に突き刺します。

 完全に死んだと判断し、魔晶石はポケットに戻してゴブリンから魔石を抜き取ります。ゴブリンの解体錬成陣がなかったため、心臓あたりにあったものをナイフでほじくり出すと、そのまま工房にもどりました。

 ゴブリンからも使える素材はなかったはずだからです。


 工房に戻ると、ソラは服を着替え、返り血のついた服を洗います。その一方で今日のことについても考えました。

 今回、魔晶石の使用は2個で済みました。しかし、これだけでも4000セリンかかっており、ゴブリンの魔石は500セリンにしかなりませんでした。つまり、3500セリンの赤字です。さらに、レベルも上がっていませんでした。

 現在のソラではゴブリンを倒すことは、魔道具なしでは無理だと考えます。

 なので、ソラは簡単な対策として魔晶石を常に10個以上持ち歩くことにしました。収支よりも生き残ることを優先したのでした。


【6月1日】


 ゴブリンが街道に出ることはあれ以降なく、ソラは平穏に過ごしていました。

 そして、今日はリイが来る日だったので、前日から掃除だけはしておきました。何時に来るかはやはりわからないので、前回と同じ時間かと予想だけはしていました。


「ソラー、久しぶりー。今回はちゃんと起きてるわね」


 11時ごろ、リイがやって来てそんな挨拶をされましたが、ソラはわずかにこくり、と頷くだけでした。

 そして、前回同様に20万セリンを払います。今回は手持ちが30万以上あったので、余裕を持って支払うことができました。


 その後、リイが昼食を作り一緒に食べました。

 そこで、リイが最近は錬金術で何を作っているのとソラに聞き、ソラが素直にポーション、と答えたのがきっかけでした。


「ポーションも作ってるのね。他には?」


「ガラス瓶」


「あとは何を作ったの?」


「…なにも」


「…え」


 その後、ソラが新しいものを作ってないことを知ったリイは、新しく課題を出すことにしました。


「…じゃあ、次の7月1日には家賃に加えて新しく作ったものを5個以上用意しなさい」


 それが、リイの出した新しい条件でした。


「…ポーションじゃ、だめ?」


「…悪くはないけど、今はだめ。市場の需要と供給っていうのがあってね?たとえば、私がポーションを100個欲しいのに、300個あっても200個は余っちゃうよね?その200個は売れないから、ギルドも買い取れません、って言う。そうすると、ポーションでお金が稼げない。ここまではわかる?」


 ギルドに渡せる数には限りがある、と解釈してソラは頷きました。


「それをなんとかするために、ポーション以外のものを作れるようになって欲しいの。毒消しポーションとかね。…そうね、来月までに新しくギルドに納入できるものを5種類作りなさい。それが今の生活を続ける条件よ」


 ソラは少し考え込み、こくりと頷きました。




 こうして、6月は始まりました。

桐崎 ソラ・キリサキ

LV :4

HP :36/36(↑1)

MP :0/49(↑1)

力  :12(↑1)

敏捷 :13(↑1)

体力 :14(↑1)

魔力 :18

抵抗 :7

器用 :17


スキル:【錬金術Lv4】【薬学Lv2】【採取Lv2】

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