【第1章】第7話
「入らなくてもいいって聞いたけど」確かに藤森は、部活は必須と言っていたが、しばらくは入らなくてもいいと言っていた。
「でも、ずっと入らないわけじゃないでしょ?病気がよくなったら、やっぱりこの学校の生徒である以上どこかの部には入らなきゃいけないと思うよ?」
それは、時に残酷な問いかけだ。
「……どうだろ」
「ね、どこか考えてる?」
真っ先に浮かんだのは演劇だった。所属していた劇団はもうやめてしまっていた。だが、今の現状を考えてやはり無理だな、と思い直す。
「特にないかな」諦めの回答。
パッと綾の顔が晴れる。待ってました、と言わんばかりの顔だった。
「じゃあさ、放送部はどう?」
「放送部?」意識の外にあったメロディが急に耳に入ってくる。
「そう。放送部。できそうじゃない?」
声を出すことは演劇でもしていた。もちろん、演劇は声だけではない。その片鱗なら、そんな風に聞こえた。
「うーん」有希はゆっくりと昼食を進める。なくなってしまうと何か話さなくてはならない、そんな気がしたからだ。
「ま、今すぐじゃなくてもいいからさ、ね。候補で考えといてよ」
放送部のお昼の放送は、3曲流れて終わった。
「ところで、行かなくてよかったの」話題づくりに聞いてみる。
「放送部、部員少ないんだよね。だから勧誘してるしいいんじゃないかな」
さほど気にしてないのか、テキパキ弁当を片付ける。
「少ないんだったら、なおさら行かないといけないんじゃ」
「ま、大丈夫でしょ。食べ終わった?」
「うん」
有希が片づけたのを見て、綾は車椅子を押す。期待をしているんだろうな、と思うと有希は少し憂鬱になった。