【第1章】第6話
バックで流れていた曲がフェードしていく。入れ替わって今度はバラードが流れ出した。
「あー……ま、いいか」少し苦い顔をして綾がつぶやいた。だが、箸は止まることなく進んでいる。体は正直なようだった。
ちょうど半分ぐらいのご飯を書きこんだ後、一呼吸置いて綾が切りだした。
「ね、聞きたいことあるんだけどさ、いい?」
「……答えられることなら」
それは興味本位の顔だった。当然といえば当然だろう、と思った。非日常的なことに関して人間は興味を持つ。それが自ら、あるいは多くの場合はそうだが、誰かを傷つけることになろうとも。
無知は罪だ。だが、知らなくてもいい事実もあることは確かだ。そしてわざわざ知らなくていいこと、それは知ってしまった人を変えることがある。
だが、有希の予想は外れた。
「部活なに入るか決めた?」
「部活……?」拍子抜けした。てっきり病気の事を聞いてくると思い込んでいたからだ。
大多数の人は遠慮がちに、彼女のその容姿に驚き、興味を持ち、知りたがる。それは有希にとっても悪いことではない。理解を得るというのは難しいものだ。わざわざ自分から話すようなことでもないと思っている有希は、他人からのアプローチで初めて話し始める。
そんな予想が外れて有希は少し戸惑う。
「いや、特に入らないかな……」特に続ける言葉を思い浮かばず、ドリンクの口をくわえる。
ふっふーん、とにやけて綾は紡ぐ。
「この学校、部活に一つは入らないといけないんだよ。先生から聞いてない?」
記憶をたどる。そういえば、と一つにたどりつく。