【第1章】第4話
昼休み。
4時間目、音楽の授業が終わった。1~4時間目の中休みに何人か話しかけてきた人がいたが、どこかよそよそしかった。有希はそれ自体には気にすることはない。初めて接する人にはそういうものだと思っている。言葉だけ聞けば、単純な興味に聞こえはするが、義務的な興味はごめんだった。
ある程度予想していたが、音楽室を出る前に綾が話しかけてくる。
「ね、ご飯一緒に食べない?」
「いいよ」
それじゃあ、と綾は車椅子の手すりをつかむ。お昼を食べる場所に案内してくれるらしい。
音楽室から移動し、近くのエレベーターに乗る。
「学校のエレベーターに乗るの今日が初めてだけど、ちょっと狭いよね。どうせならもっと広く作ればいいのに」
エレベーターは車椅子と、隙間に人が2~3人入ることができる程度だった。校舎に似つかない少し真新しいその箱は、静かに一階に降りる。機械のアナウンスが無機質に階数を告げる。
「お昼は大抵の場所で食べてもいいんだよね。一番人気がありそうな屋上はだめなんだけど」口を尖らせながら綾が言う。
「何かあったの?」
「いや?聞いたことない。何か起こったら困るからでしょ」
そういえば、エレベーターの屋上のボタンには、カバーで覆われていたな、と思いだす。
中庭を通り、違う校舎に入る。先ほどの校舎は特別教室が固まっていたようだった。
「屋上ほどじゃないけど、結構ないいポイントだよ」
またエレベーターに乗る。4階だ。こちらにも屋上の階はカバーで覆われている。
4階で校舎の端につく。空き教室の中を通り、ベランダのようなところについた。
「ここ、なんかの教室みたいだけど使ったことないんだよね。でも鍵空いてるし、怒られたこともないし」