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【プロローグ】
今まで、心停止と漠然と定義されていた死因の一部が、ある病気と判明したのは今から10年ほど前の事だった。
とある性同一性障害を持った男性が、その病気を発病した時、徐々に女性化していき、様々な問題があったものの最終的に女性になり、その病気が完治したのである。
研究は比較的早く進み、反対の性別の性ホルモンを基準とした薬が開発され、近年では副作用も少なくその病気は完治するようになった。
今では、その病気は通称「ジェンダー病」として認知され、それなりの社会制度も用意されている。例えばジェンダー病患者は完治後、戸籍を抹消し作り直す。以前の身分を隠すか隠さないかは患者の判断にゆだねられる。多少なりにも差別があるためだった。
ジェンダー病は進行の多少の前後はあるものの、最終的には男性なら女性に女性なら男性に完全に変化する。その病気がいつ自らの身に起こるかはわからないため、最近では寛容な社会になった。
これは、そんな社会の中、少女になった一人の少年と、一人の少女の物語。