第三話
「お姉様、隣で本を読んでも、良い??」
「勿論よリリー。相変わらず難しい本を読んでいるわよね」
「そんなことないわ。」
そんなことあると思う。リリーは未だ10歳なのにその手に持つのは司法の書。官吏を目指すものが必死になって読むものだ。我が妹ながら本当に天才なんだなぁと感心する
姉フレイヤとは昔から大して関わる事はなかったが、何故か妹リリーは懐いてくれる。特に何かしたわけではないハズ
「今日は天気がいいからバルコニーで本を読む?」
「お姉様と一緒ならどこでも。」
可愛い妹だ。両親や親族、姉に対しては何の感慨も浮かばないのだが・・・冷たいとか言わないでくれる??
この全身で私を好きだと表現してくる妹だけは、かつての日本人だった私の家族位大事だ。
穏やかな昼下がり、
ルナの自室に面したバルコニーには、ぱらりぱらり、と本を捲る音が響く
基本的に私も妹も本に集中しだしてしまえば外野が見えなくなる。時には食事もすっ飛ばすので、<事実淹れてある紅茶は既に冷めている>
私の近衛もリリーの近衛も何時も懸命に現実に戻そうとしてくれる。うん、食いっぱぐれないのは貴方達のお陰です。
私が今呼んでいる本は、精霊と魔術、聖獣、魔獣について記されているのだがこれらの知識はこの国、或いは世界で常識とされたものだ。
流石に王宮にある本なので学校で習う本より少し踏み込んでいて、挿絵があり暇つぶしにはもってこいなのだ
精霊とは何か、
万物に宿るものであり、世界を構成するもの。水には水霊・風には風霊・火には火霊・土には土霊・・・etc
人が生活する為には魔術を介して精霊の力を借りる。代わりに精霊にも物を捧げたりする。
Give and Take というわけだ。某主人公曰くの等価交換。
当たり前のはずなのだが、時にその事を忘れる人間が居る。そういう人間が居たから、今日魔術を使うことも精霊を見ることも出来なくなった人間が出てきたのだと記される
姉のフレイヤ然り、妹のリリー然り。
現在王族で魔術を使えるものは総数の半分。
まともに精霊の姿を見ることが出来るのは、私と叔父のアーティのみだ。最も私のことは周知されていないので実質アーティのみという認識だ
魔術とは何か、
精霊の力を介す術。詠唱、紋唱等がある。
他に聖獣と契約したり呼んだりする時も利用。
聖獣とは何か、
精霊が変化、ないしは進化したものだと考える。ゆえに属性が存在する。
世界には凡そ50体程しかおらず、地球で有名だった、龍、麒麟やユニコーン等が聖獣に当てはまる。
出会うことは本当に稀で、姿を少し見ただけで一生分の幸運を使い果たすとも。
ちなみに私は二体の聖獣と契約している
白虎全身が美しい銀にも見える白で、目はアイスブルー。属性は風
黒虎全身が美しい漆黒で目は真紅、属性は火
二体とも体長6m強あって像並みの巨躯の持ち主だ。大きすぎるので普段は私の背丈160cm位に縮んでもらっている。だって圧迫感がハンパない・・・
魔獣とは何か、
王道的に、この世界の大陸の北西には魔族が居住している。魔王と呼ばれる存在もある。
闇(負)の要素を持ち、個体によっては人を捕食する。
人の姿を持つのが魔族・魔人で、獣の姿をとるのが魔獣だ。
幸いにも魔族居住区域とは離れているので、私はこの18年の人生で魔族に見えたことはない。
「ルナ様、・・・ルナ様!」
「・・・はい?」
「昼餉の準備が整いました。一度本を置かれてください」
「アリガト。」
予想したとおり外野が見えなくなるほど集中していたらしい。
少し呆れ顔の氷河に礼を良い、同じく近衛に現実に引き戻されたリリーと共に昼食を取るのであった
大半が説明で申し訳ない・・・