3.国王と姫の視察!神スキルをひけらかせ
眠い
「なんじゃこりゃあ…」
俺は思わず呟いていた。全体的に砂色をベースにした闘技場が熱狂的な歓声に包まれている。
そして、中央で戦っている2人の剣闘士の頭上に極夜の森を照らす謎の黄色いボールのような光源が浮かんでいる。
「ったく…今までならここにくる連中は大概お前さんのような骨のあるやつばっかの筈なんだが」
「俺たちを単に見せ物として利用したがる上流貴族の連中が特等席で賭け事してやがる」
「気に食わねえ…戦場に引き摺り下ろしてやりたいぜ」
いつの間にいたのか門番の全身にベルトを巻いた屈強な男が横で強い光に目を細めながら腕を組んで喋っていた。
「え…でもドゴムが邪魔してるんじゃあ?」
「タケルさん、上流階級の貴族は気球や飛行船でツアーの一環としてこの闘技場を訪れることがあるのです」
「上流階級の貴族ぅ?」
「はい。特にここら一帯を支配するバファマーロと呼ばれる商人の派閥は近々国王とその家族を招待すると公表しています」
「ザクお前なんでも知ってるんだな」
「まぁ私たちゴブリンにはほぼ無縁な話なんですけどね。」
よく考えたら、この世界魔王とかいんのか?
ザクも厳密に言えば人間に仇をなす典型的な魔族の部類に入ると思うんだがな…
「国王はもう来ている」
「なんでも、最近話題の女剣闘士『ジャリーヌ』を一目見たいらしいな」
全身ベルトからシーグと呼ばれていたもう1人の門番が口を開いた。
「え?王様いるの?」
「ジャリーヌが模範的な男剣闘士だったらツアーは急行になってただろうな」
「夜な夜な燭台のもとで戸籍書類と睨めっこすることになる」
「ハハハ」
門番たちは、側から見ると意味がわからないようなジョークらしきことを交わし合っている。
なんか一時期ベットの上でゴロゴロしながらア◯プラで洋画見てたことがあったな。
今思い出すとかなり痛々しい黒歴史だ。
『なぁ、この2人何言ってんの?』
「リブ国王は、剣技に優れた皇太子のチャートルを彼に相応しい屈強な女性と成婚させたいんですよ」
「特に国王は婚約相手にすごいこだわりを持ってるので、もしジャリーヌという女性がいなかったら今頃国王一行はこの闘技場に立ち寄ることなく、国王は血眼になってチャートルに相応しい相手を探し続けるだろう的なジョークだと思いますよ。」
「はーん、ジャリーヌって人そんなに凄いんだ」
「はい。村にいた時から新聞でかねがね噂は伺ってましたけど…国王直々に視察に来るとは」
ゴブリン達も新聞読むんだな。毎朝家の前とかに置いてあるのか?
俺はネットニュースをたまに見るくらいだったけど、この世界ネットとかなさそうだよな…
そんなどうでもいいことを考えていたら、確かに向かい側の観客席の上の方のくぼみに明らかにザ・国王が座る椅子が置いてあった。
「うわーお」
「てかさっきから…あの光の球なんなんだ??」
俺は瞼を半開きにして手で目を覆う。
「あれは光魔術の一種ですかね…少なくとも雷魔術ではないと思うんですけど」
「すげぇ明るさだな…さっき外から見た時はこんなに光ってなかったのに」
「なんらかの…結界が貼ってあるのではないでしょうかね?」
「詳しいことはわかりません、とりあえず一試合観ていきましょうか」
《キィィィィィン!!!》
突如、闘技場内に轟音が響き渡る。
《あー、あ、マイクテスト。》
《さて!本日もはるばるお越しいただき誠にありがとうございます!》
若々しいが、同時に20代特有の刺々しさを兼ねた鋭い声が会場に響き渡った。
《国王陛下と皇后殿下、及びに血縁関係者の皆様に関しましてはお陰様でございまして、誠に感謝の念に堪えません》
《さて!!本日のプログラムを紹介しましょう!!》
「うおっ…耳が痛えな」
え?今から始まるのか?もしかしてさっきの戦いってアップだったの?
ますます期待値が上がる。だが同時に、これから俺が生きていく世界の苛烈さをここで認めなくてはならない。
「反響魔術を使っていますね…」
反響魔術ぅ?魔術なのになんでマイクテストしてんだよ…
司会がごちゃごちゃ言っている間に、俺はいつの間に向かい側の椅子に座り込んでいた国王らしき人物に目を向けていた。
あれが国王か?めちゃくちゃ毛深いな…随分テンプレートな見た目だ。
「タケルさん!」
「あまり凝視しすぎると不敬に当たるかもしれません、目を背けてください」
「うおっ、マジか」
《それでは第一試合!!前回大会では惜しくも準決勝で敗れてしまいました鍵爪のグドゥル!対するは優勝候補の華奢で美麗なるレイピアの達人、刺突のジャリーヌです!》
「うおお!!初手から熱いカードだねええ」
前の席で、酒瓶を片手に持ったスキンヘッドの男が仲間達と肩を組み声高らかに張り上げている。
ここにいると鼓膜がどうにかなっちまいそうだ。
「とりあえず、ここでこの世界の戦い方などそういうものを吸収しておきましょう」
「お、おう」
東門の鉄柵が開き、痩せこけたブカブカの短パンのオールバックでキメた眼帯の男が鉄製の鋭い鉤爪をこれでもかと舐め回しながら、いかにもな雰囲気でアリーナの中央に歩み寄る。
西門からは細身の体を鉄の甲冑で覆われた華奢な体型の剣闘士が現れた。
顔は兜で覆われていて見えない。あれがそのジャリーヌという女なのだろうか。
しかし、いいボディラインだ。俺が考えるに、スリーサイズはざっと計算すると…
「「麗しきジャリーヌよ!!」」
突然玉座に座る国王と思われし男が立ち上がり、大声を出した。
白い髭が上半身を覆い尽くしているのがわかる。
「「汝が魅せし剣技のこと、正に獲物を見定めて刹那のうちに仕留める蛇の如く美しいと聞く」」
「「今こそ我が息子の妻としてその技術が足るものか証明してみるがいい!」」
『言ってることグロくね?あのおっさん…』
『シー!!不敬罪!即刻死刑ですよ!』
突如として鐘がなり、その合図に呼応して一瞬のうちに両者の間に火花が散る。
「やれグドゥル!今こそ雪辱を果たす時だ!」
「うおおおお!」
観客の叫び声が何重にも重なって会場の中をこだまする。
「ハァ、ハァ…!随分余裕そうじゃねえか、あの日を皮切りに…うっ、縁談がうまく進んでさぞ愉快だろうによ!」
レイピアの切先のポイントがグドゥルの頬を掠め、血を滲ませる。
「…」
「チャートル殿下とデート中も無口キャラで通す気かよ?!」
「いい加減うんざりだぜ!」
手首を思い切り捻り、右足で踏み込んでジャリーヌの懐に潜り込んで鉤爪の真ん中で首元の甲冑が薄い部分を正確に切り裂こうとする。
「お前を本当は殺したくなかったんだがな…」
兜の中で籠った艶のある声がグドゥルの集中力を一瞬欠かせた。
「あ"?!」
「『速攻II』」
肘でグドゥルを吹き飛ばし、レイピアが心臓を正確に捉える。
その勢いは風を割いて胸当てを容易に破壊し、体を突き破った。
「ぐァア!!!」
「いい戦いぶりだった。今回も生かしておきたかったが、手を抜くような生温い真似はもう貴様には通用しないようだな」
(最後までいかすかねえ女だ)
「クソ野郎…お幸せにしろよ」
レイピアを美しい動作で引き抜くと、グドゥルは膝をついてそのまま倒れ込む。
玉座のほうに目を移すと、国王がほくそ笑んでいるのがわかった。
『なんだ今の?!死んじまった…』
『死にますよ、闘技場なんだから』
『ただ前回対戦した時は温情か、グドゥルをわざと生かしていたようですね』
「…」
ジャリーヌは少し周りを見回すと、視線の先に俺を固定した。
『!!』
『あの人、真我顕現でタケルさんのステータスに気付いたようです!』
『凄い、剣闘士上澄レベルとなると広範囲で一括使用できるのか…』
『え?え?俺見られてんの?え?』
そんな凄いネームドの人が俺を見てるのか??
舐めるような視線が俺に向けられるのが甲冑越しでもわかる。俺の魔力の高さに驚いてるのか…
待て、よく考えたら俺のステータス性欲もカンストしてないか?
こんなの公開処刑じゃないか。いやだ。帰りたい。
ジャリーヌはおもむろに指を俺に向けてきた。
「この男との対戦を望みます」
え?ええ?えええええええ???
こんな人いるのによりによって俺を指名すんの?!
戦いたいの?いくら俺の体がドカタで鍛えられたからといっても、この中で俺を選ぶか?普通。
「「…汝の好きなようにやりなさい。」」
「「其方、名をなんと申すか」」
名前?普通にタケルって言えばいいのか、これは。
フルネームでいうのは当たり前か。
思慮を巡らせていると突然脳内に何者かの声が語りかけてきた。
【タケルさん!ここはバルシャと名乗ってください】
この声、よく聞いてみたらザクの声だ。バルシャってなんだ?
【いいから、偽名です!この世界ではバルシャという名前が一番多いんです!】
成程、日本でいう佐藤や田中、木村といったところか。
「ぼ、ぼくわぁ!」
【一人称は私にして!】
「私の名前はバルシャと申します!」
王の顔が一瞬硬直する。
しかし、すぐにほぐされたように柔らかい表情を浮かべたのがはっきりと見えた。
「「そうか、そうか。」」
「「其方のことも記憶に入れておこう。よい戦績を残して生存を果たせたのなら、我が城郭へ招待しようではないか」」
『やりましたね!!リブ国王から謁見を認められるなんて…前の転移者でもこんなミラクルはありませんでした』
【でも大丈夫でしょうか…ジャリーヌ程の強者を相手にしてタケルさんが無事でいられるかどうか】
(心配するな。俺は無事に帰るぜ)
何より、あの兜の中に隠された顔を見るまでは絶対に死なない。何度でも輪廻転生して戦ってやる。
玉座の奥の両開きの扉が開いた。
コツン、コツンという足音が静かに響いた。
大理石の柱の裏で白髪をお団子ヘア?で結んだ小顔の育ちが良さそうな美女の顔が見え隠れする。
あれは…
【あ、あれはリブ国王の娘のアンヌ王女ですよ!】
こちらを向いて、そのアンヌ女王の口角がふわっと上がった。
うお、うおお!うおおおおおお!!!!!!!!!
眠すぎて誤字が絶対にあります、確信しています
あれば指摘してくれたら幸いです
行事が色々あるんで更新は明後日からになりそうです




