全国的な嫁入り雨の朝
ある朝天気予報を見ていると、全国的にお天気雨が降るというようなことを言っていた。
僕と一緒に朝食を食べていた妻はそれを聞くと細い目をさらに細めて静かに笑いながら僕に話しかける。
「全国で嫁入り雨を降らせるなんてずいぶんと偉い狐が結婚するみたいね」
「僕たちのときは家の近所でちょっと降ったんだっけ」
僕の言葉に廃神社に勝手に住み着いていた野狐であった妻は頬を膨らませると、あれでも奮発した方なんだよ、と言ってくる。
「最近の若い子はあんまり嫁入り雨を降らせないから、頼むのも案外大変なの」
柔らかい尻尾で僕を叩く妻をなだめながら、結婚当初は気にもしていなかったが狐の世界にもそういう流行り廃りがあるんだなあ、とそんなことを考えていた。