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虹の瞳  作者: シンノスケ123
第二章「呪い隠し」
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第二章 「呪い隠し」ラスト

紫色の巨人に踏み鳴らされ、粉微塵になっていく祖父母の家を眺めながらアイは、祖父母の顔を思い浮かべて涙していた。


絶望して座り込んでいたアイだったが、すぐにハッとした。


祖父と祖母はまだ生きているかもしれない。

それならば、今自分がするべきことは、巨人を止めることではないだろうか?


非常に恐ろしいがアスカやテッケンとの戦いを経ているアイには、それに立ち向かえるだけの勇気が備わっていた。


だが、アイが息を呑み立ちあがろうとすると、息絶え絶えのような声がした。


「アイ・・・」

それはアイのいる場所から少し離れた草むらから聞こえてくる。


よく観察してみると老人が倒れていた。


「おじいちゃん!?」

アイは老人に駆け寄ると、その瀕死の身体を抱え起こした。


「やはり、アイか・・・」

祖父の姿は身体中にあざができており、あの巨人と戦っていたという事実が見て取れた。


「今のお前は戦う者の眼をしていた・・・いくつかの死線を潜り抜けてきたのだろう・・・いろいろ聞きにきたのだろうが話は後だ・・・」

今にも無くなりそうな意識を保ちながら、祖父は話を続けた。


「あの単眼鬼はリンが放ったもので、標的は俺だ・・・詳しい理由は後で話すが、紫の瞳の力によってリンの支配領域から呼び出されたのだ・・・あそこまでの鬼を倒すのはほぼ不可能・・・だが支配領域に送り返すくらいなら可能だ・・・お前が紫の瞳を使い鬼を送り返すんだ・・・」

祖父は紫の巨人の方を指差しながら言った。


「でも、その前に・・・」

アイがそう言って、赤の瞳で祖父を見つめると、赤い光が集まって祖父の怪我が完治させた。


「何ッ、既に上位の眼が使えるのか!?それは良い!お前は今何色が使える?」


「赤、水色、紫よ」


「そうか!俺は紫しか使えなかったからこのザマだ。今、奴は俺がまだ家の中にいると思い込んでいる。だから青の瞳(氷の瞳)で鬼を見つめ続けろ。この位置からで構わん。奴が気付いた時にはもう遅いだろう。動きが鈍ったら紫の瞳で容易に送り返せる」


祖父の言うとおり、50メートルの距離から青の瞳の力で見つめ続けると単眼鬼の動きが鈍ってきた。


しかし、単眼鬼がこちらの方に振り向きそのまま走って来た。


グオオオオオオオオオン!

単眼鬼が怒りの雄叫びを上げて、こっちに向かって来るが段々とスローモーションに見えてくる。


「今だ!」

20メートルくらいまで引きつけると、祖父は声を上げた。


アイは紫の瞳を輝かせると単眼鬼の身体が、やがて紫色の光に変わり空中で霧散した。


「知能が低いのが幸いだったな」


アイは戦いの終わりに安堵するとガクッと膝をついた。


炎天下の中で彷徨い続け、戦いで眼を酷使した疲れがドッと押し寄せて来たのだ。


「よく頑張ったな。少し待っていろ」

祖父は家に向かって駆け出すとすぐに戻って来た。


「冷蔵庫に入っていた麦茶が無事で良かった」

その手にはボトルに入った麦茶が携えられており、アイに差し出した。


アイは麦茶を受け取ると素早く口を付けた。


「飲みながら聞くといい。鬼の昔話の続き・・・鬼の大将は逃げ延び人間に紛れて生活していた。しかし何世代かした後に政府にバレてしまったのだ。それから現在に至るまで監視を付けるという条件で我々は生かされている」


アイはその言葉を聞いてアスカを思い浮かべた。


「俺の息子であるお前の父親とその弟、そしてお前の兄であるタクミは瞳の力が弱いため監視対象からは除外されている。だが残念なことにアイ、お前とリンには強い力が宿ってしまった」


「お前への監視役としてアスカと言う少女を、そしてより強い力を持つリンの監視役として<七封家の長>をつけることになった」


「そして状況はさらに悪化する。七封家により鬼の大将の復活、または同等な力を持った強力な鬼の出現が予言されてしまった。それが約4年前の出来事だ」


「七封家の者達は強い力を持ったリンを始末しようとした。しかし既にリンは自分が強き鬼であることを自覚しており、七封家の長を殺害して行方を眩ませたのだ」


「さすがに俺も孫であるリンを危険視して、七封家に情報を流していた。せめて、お前だけは助けてくれるという条件付きで。まあ奴らはその条件を反故にしたようだがな」


「お前の元にリンが現れていないということは、とりあえず、お前を敵視していないということだろう。まずは七封家の者達から身を守るのが先決だ」


「奴らはリンとお前が手を組むのを恐れている。気をつけるべきはセンエイ。現在の七封家のリーダーだ。紫の瞳をかなり使いこなす上に冷静な男だ。相対すれば上位の持っているアイが負けることはないだろうが、何を仕掛けてくるか予想はできん」


「そして、最終的にリンは誰かが倒さなければならない。お前にはその<秘策>を教えておこう。リンにも教えていない切札とも呼べる技術を・・・」


アイはその秘策を伝授してもらった。


「心配するな。お前は鬼ではない。お前の場合は今まで通り社会に溶け込んでいた方が安全だろう。だが俺はしばらく身を隠す。ばあさんはお前の家に向かったからよろしく頼んだぞ」


アイは強く頷くと、祖父は紫の瞳を輝かせ消滅した。


そしてアイは家に帰り、今まで通りの生活に戻っていった。

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