第二章 「呪い隠し」1
人物紹介
<鬼島アイ>
無口な女子高生の主人公。自分では信じたくはないが、かつて世界征服を目論んだ鬼の末裔。氷の様な瞳で対象の動きを鈍らせる。
<鬼島リン>
アイと同じ鬼の末裔。その存在は謎に包まれている。
<サクラ>
少し怖がりだが元気な女子高生。アイの同級生で仲良い。
<七封アスカ>
廃館の怪物の正体。七封家の一族。紫の瞳で空間や生物を支配できる。
廃館の怪物騒動から1週間。
アイ達の学校も夏休みに入っていた。
アイは両親に「鬼」の件を問いただしたが、なあなあな返事しかもらえなかった。
しかし、両親共に嘘をついている感じは全く無く、急に隣の県の祖父母宅に泊まりに行くと言い出しても止めなかった。
父方の祖父母宅までは、電車を30分程乗り、そこから山奥にある家まで1時間以上歩く必要があった。
そして現在、アイは電車を降りて駅のホームにいた。
駅は大勢の人で溢れかえっている。
「なんかワクワクするね」
サクラはニコッと笑って、駅のコンビニに駆けていった。
サクラには夏休みの予定を聞かれ、チラッと答えただけだったが、一緒に行きたいと言い出して聞かなかったので、仕方なく了承しただけだった。
祖父母には友人も連れて行くと連絡してある。
もちろん、サクラに今回の目的を話しているわけではない。
「すいません!」
背後からの声にアイは振り返った。
「お姉さん素敵ですね!良かったらお茶でもどうですか?」
茶髪の男にハツラツとした声で話しかけられたアイは、突然のことに驚いてつい早足で振り切ろうとする。
「ちょっとお姉さん!速いって!一旦止まろ!?」
茶髪の男は人混みを華麗に避けながらアイと並走していた。
「俺、シロウって言います!ここら辺、海外の人も増えてきて治安もあんまり良くないんですよ!」
「俺、空手習ってるからボディガードとして役に立つと思うんだけどな〜」
「俺があなたを守りますよ!」
シロウは相変わらずの口調で、歩き続けるアイの側を離れない。
仕方がないので相槌だけ打って、ついに駅の外まで来てしまった。
駅の前で突っ立ってシロウの話を聞いていると、アイのスマホに1通の通知が入る。
今どこにいるの?
サクラからのメッセージだ。
ついサクラを置いてきてしまっていた。
ごめん、駅前
アイはサクラに返信を送った後も、シロウの話をそれなりで聞き流していた。
「あれ?知り合い?」
少しして後ろからサクラの声が聞こえた。
「あ、お友達ですか!?俺、シロウって言います!よろしくお願いします!」
「ああ!それはどうも、こちらこそよろしくお願いします!」
シロウの挨拶に何故か元気よく返すサクラ。話が噛み合ってしまった2人をめんどくさいのでつい放置してしまうアイだった。
大体1時間程歩いた。
祖父母の家に向かうにつれて建物が多かった景色から、だんだん田んぼや畑が多くなっていった。
「じゃあ、2人は隣の県から来てるんだ。ここら辺は俺の庭みたいなものだから、寄りたいとこあったら言ってよ」
シロウの執念は凄まじく、どこまでもついてくる勢いだ。そして、こんな田んぼだらけの場所でどこに寄るというのか?
シロウの相手をサクラに任せて、アイは<鬼島リン>について考えていた。
鬼島リンとは小さかった頃に数回会っている。
父親のお兄さんの娘、私とは従姉妹の関係だ。
年齢は私の5つ歳上。
しかし、5年前に行方不明になったと聞いている・・・
それが彼女について私が知っている全てだ。
でも、アスカの口ぶりからすると生きている。
今も何処かで・・・
「ちょっと、疲れたね。どこか日陰があれば休まない?」
サクラは言った。
畑に囲まれた道路をさらに1時間歩いた。
車も一切通らない。
空は快晴で雲一つ存在せず、直射日光が3人を襲っていた。
「アイ、本当にこの道で合ってるの?」
サクラは疲労と照りつける日の厳しさに耐えかね聞いた。
確かに合っている。
しかし、いつもは両親が運転する車での移動なので感覚は違えど、徒歩とはいえここまでの時間がかかるとは思えない。
「俺もここら辺は通ったことがあるんだけど、こんなに長い道だったかな・・・」
シロウは考え込んだ。
「あれを見て!」
サクラは畑の方を指差して言った。
「あそこに特徴的な麦の群生が見えるでしょ!」
「それから3ブロック後ろを見てみて!」
今度は3つ分後ろの区画を指差してサクラは言った。
「すごく似ているでしょ!不思議だと思わない!?」
確かに似ていた。
と言うよりまるっきり同じに見える。
しばらく観察してみると同じだった。
そして、その3つ分先の区画も、そのさらに3つ先の区画も同じ作りをしていた。
「ありえないな・・・」
シロウは絶句した。
「ちょっと待て、爺さんからこんな話を聞いたことがあったような・・・」
シロウは語り始めた。
「大昔ここら辺で大きな戦争が有ったとか無かったとかで、人が大勢死んだんだと。だからその怨念みたいなものが空間を歪めたりするらしい。昔から稀にこういった超常現象みたいなことが起こるんだとか」
シロウは半信半疑で語っていた。
「でもどうしよう!このままじゃ熱中症になっちゃうよ!」
サクラは焦りから声を荒げた。
「落ち着いて。俺に考えがある」
シロウは落ち着いた声で言った。
「来た道を戻ってみたらどうだろう?」
考えるまでもない発想だったが2人はシロウの案に乗ることにした。
来た道を戻って10分後。
「ちょっと、だんだん紫色になってない!?」
サクラは周りを見回しながら言った。
確かに景色全体が、僅かにだが紫色になっていることに3人は気がつき始めた。
まさか・・・
アイは1つの嫌な予感が頭に浮かんでいた。
「おいアイちゃん!サクラちゃんがどっかいったぞ!」
シロウが後ろから叫んだ。
アイは驚いて後ろを振り返ったがサクラはどこにも見当たらない。
アイの予感が現実味を帯び始めていた。




