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虹の瞳  作者: シンノスケ123
終章「虹の瞳」
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終章 「虹の瞳」完

突然現れた単眼鬼、驚いたリンに一瞬の隙ができた。


その機を逃すまいと、アイはリンとの距離を取り、氷眼の力を使って少しでもリンの動きを遅らせ、単眼鬼の強力な拳を命中させようとした。


グンッ!


単眼鬼が拳を振り下ろすと、地面が揺らぐような衝撃が伝わってくる。


しかし、単眼鬼の攻撃をリンは両腕で受け止めていた。


リンは浮遊することによって、地面と板挟みになる衝撃を緩和していたのだ。


リンは天眼を維持したまま、単眼鬼を睨み自分の支配領域に送り返した。


「どこまでも舐めた真似を・・・!」

リンはアイの方に向きなおって、一歩一歩にじり寄ってくる。


その足取りから、氷の瞳の能力が明確に効いているのが分かった。


アイの身体全体が発火する。

しかし、アイは氷眼を止めず、リンを見つめていた。


リンは対抗として、火眼の能力を発動し自分の凍結も解こうとしたが、すでに遅かった。


すぐにリンの身体は言うことを聞かなくなり、アイに対して放った発火能力も完全に効果を失っていった。


リンはアイの目の前にしゃがみ込みこう言った。

「まさかアイ。お前に負けるとは思わなかった。全てで劣るお前に・・・」


アイは氷眼でリンを見ていた。


「殺せよ。お前にはそれしか残されていない。もしお前が私を生かすようなら、私は同じことを続けるだけだ・・・」


「私はお前を許さないわ・・・」

アイはそう答えた。


「ふふッ・・・お前がこれから鬼として、どう過ごすのか、地獄から見ていてやるよ・・・」

リンは震えながらニヤリと笑い、アイを見ていた。


アイの瞳の色は青色から藍色、紫と色が増えていき、虹の瞳に変わっていった。


「お、おお・・・」

リンはその輝きに見惚れ唸るような声を上げると、一瞬だけ意識を失った。


覚醒したリンはすぐに異変に気がついた。


「き、貴様、なんてことをしてくれたんだああッ!」

リンが絶叫した。


「虹の瞳でアナタを一時的に支配した。この能力が支配する者の能力の際限を超えて操作できるいうのなら、私はアナタの瞳の能力を奪うために使う・・・」

アイは地眼の能力で、リンの瞳の能力を封印したのだ。


瞳の能力を失ってしまったリンは、鬼ではなく人間に戻ったも同然だった。


「うう、なんてことを・・・」


「これから能力を持たないアナタは、半鬼からも追われ、人間からも追われることになる。ある意味、死んだ方がマシだったかも知れないわね。いい気味だわ・・・」


アイは空を見上げた。


「でも、私だけがアナタの味方になってあげる。アナタを一生守ってあげるわ・・・」


アイはずっと考えていた。

考え方は違えど、同じ境遇だったリンに対して。

もし、最初は私と同じだったのではないかと、いきなり七封家の者たちに命を狙われて強がっていただけではないのかと。


気がつけば、ずっとリンを救えないかと考えていた。


そして、最後の最後でその方法と巡り合ったのだ。


約一年後。


政府は七封家の者を鬼の討伐任務から解任し、本腰を入れて解決に臨んだ。


指揮官として優秀なものを雇用し、雑兵については強制徴用を行って賄った。


半鬼も知能が安定化し始めて、集団で動くようになり、人間たちとの争いも激しさを増す。


より逃亡が難しくなる中で、アイとリン、そしてサクラは森の中で半鬼に追われていた。


「アイ、サクラ!早く走れ!追いつかれるぞ!」

先頭を走るリンは、七十メートルほど後方を走るアイとサクラに対して怒鳴った。


そのさらに五十メートル後方には、すでに二十体近くの半鬼が追いかけてきている。


アイは虹の瞳の後遺症により、氷眼以外のほぼ全てを失い、サクラもまた爆発によって、後遺症を負っていた。


「ちッ・・・どうする・・・」

リンの身体能力だけはそのままだったため、二人を担いで走ることぐらいはできたが、すぐに追いつかれてしまうだろう。


「ええいッ!」

リンは飛び上がりアイとサクラの後方に着地し、二人の背中を押した。


「リン・・・!」

アイとサクラは叫んだ。


「仕方ないんだよッ!三人で力を合わせて生きていくしかねえんだッ!」

リンも叫んだ。


ドドドドドドドドッ!


連続した銃声が鳴り響く。

三人が後方を見ると半鬼たちが一掃されていた。


「俺の開発した呪詛を含んだ銃弾の威力はどうだい?」

どこからか聞き覚えのある男の声が聞こえる。


三人がそう言って声の方を向くと、森の中に無数のヘルメットが見え、その先頭で指揮を取る者がヘルメットを取った。


「ヤマト!?」


ヤマトは森の中に向かって言い放つ。

「お前たちは拠点に帰って異常なしと伝えろ。ここでアイとリンを見つけたことは報告するな。いいな?」


すると無数のヘルメットは森の中に姿を消した。


「ヤマトなんで!?」

サクラは言った。


「アイツらには我儘を言って、ここまで一緒に来てもらってたんだ。もちろん政府には内緒でな」

ヤマトは制服に付いているバッジやヘルメットを投げ捨てた。


「上官の机に辞表を忍ばせてきた。アイに守り返すと約束したからな」


「ヤマト・・・」


「私も忘れてもらっては困るわ」

その後ろにはアスカもいた。


「俺も仲間になってもいいか?」

灰色のローブを着た男も、アスカの後ろの木から顔を出した。


「あなた達・・・」

アイは思った。

あの虹の瞳で全ての半鬼達を元に戻さず、リンを救うことを選んだ選択は、間違いだったのかも知れないとずっと考えていた。


しかし、逃亡を続ける中で仲間と再会し、リンの本音にも触れられた気がする。


六人は逃亡を続ける上で全滅するかも知れない。


だが逆に増えることもあるだろう。


何が起こるか想像のできない世界で、彼女達は自分の納得できる選択を決断していくしかないのだ。


長い時間、お付き合い頂きありがとうございます。

虹の瞳はこれにて完結とさせていただきます。


僭越ながら、正直な評価ポイント、そして思うところがあれば感想を書いてくださると、私も嬉しいです。


現在、次作の「サスカッチ」を公開したので、そちらもぜひ読んでいただきたく思います。

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