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虹の瞳  作者: シンノスケ123
第七章「七封家の責務」
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第七章 「七封家の責務」ラスト

「アスカ!逃げて!」

遠くからアスカたちに向かって走ってくるサクラが叫んでいる。


「しかし、マッカ様!」


「まだ力をコントロールできないの!巻き込まれる前に早く!」

サクラの言う通りに、その場から逃げ出そうとしたアスカ。


「逃すと思うか?」

リンはそう言うと紫の瞳でアスカを見つめた。


「させないわ!」

サクラが右手を伸ばすと黒い釘が射出され、リンに向かって素早く飛んでいった。


〜七封家の黒針(こくしん)


それは市販されている五寸釘だったが、サクラの強い呪詛が込められている。


直感で危険だと察知したリンは身体を右に傾けてそれをかわした。


「アスカ!振り返らないで!私たちだけでも生き残るのよ!リンを倒しても戦いは終わらないのだから!」

リンを倒してもおそらく半鬼が消えるわけではない。

アスカはその意味を理解して、建物の影に隠れながらうまく逃げ延びた。


「まあ良いさ。私から逃げられる者はもういない」

リンはニヤリと笑った。


サクラはリンとの距離、約二十メートルの所まで近づくと足を止めた。


七色全ての瞳の能力を携えたリンの力は、その距離間でヒシヒシと感じられるくらい大きかった。


「桃井サクラ・・・いや、七封の長、マッカ。あの時の決着をつけよう」

リンの瞳が橙色に染め上がる。


見つめられたサクラの身体全体が発火し、衣服を焼いていく。


「クッ・・・!」


(発火の範囲が広い・・・)

サクラには呪いでこの火炎を消化することができた。


しかしそのアクションが隙となって、リンの優位を築かせるくらいならと考えたサクラは、あえてその火に焼かれることを覚悟する。


〜七封家の呪詛発火〜


リンの身体もサクラの身体と同じように発火した。


「グ、グアア・・・」

リンはうめき声をあげた。


修練の森で極限まで集中力を高めたサクラの呪詛発火は、鬼として完成されたリンの橙の瞳と同等の火力を有していたのだ。


橙の瞳の特性上、自分の熱の効果をわずかに受ける。

つまり、瞳と同じ属性が弱点になるため、火力が同等ならばリンの身体はサクラ以上のダメージを受けることになるのだ。


もちろんサクラはその特性を知っていたわけではないが、道連れの策が功を奏した。


リンは瞳の色を緑に変えると、サクラの発火を強風でかき消した。


「炎術での戦いは、お前の勝ちだ・・・だが、格闘戦はどうかな?」

リンは強風に乗るとサクラとの距離を縮めた。


ビシィッ・・・!


風の推進力を活かしたリンの右ストレートをサクラは前腕の防御でいなす。


サクラも反撃し、しばらく殴る蹴るの応襲が続いた。


サクラは自己暗示によって身体機能のリミッターを解除し、追い風を受けたリンと互角に打ち合っていたのだ。


らちが明かないと判断したリンは、身体から爆風を放ち、その勢いでサクラを後退させる。


さらにリンは続け様に心臓を目掛けた右手刀による突きを放った。


サクラもそれに気がつき、同じく右手刀で応戦すると、二人の手刀が交わり、勢いに任せてお互いの身体すれ違う。


そして、二人とも素早く向き直ってまた構え直した。


(今のリンとはほぼ互角。そしてどんな瞳の能力にも一応対応策を用意しておいた。だから鬼眼の力をこのまま消費させていれば勝てるかもしれない。でも私の勘は告げている。リンはまだ底を見せていない・・・)

サクラは本能で鬼眼の先の能力を予感していた。


自分の使える最も残酷な七封の奥義を使って、リンを精神的に追い込むしかないと悟りサクラが動く。


突き出した右手から黒い布のようなものが現れ、リンの頭上に広がった。


〜七封家の侵蝕呪布〜

強力な呪いを帯びた布で対象を包み込む、七封家の裏技である。


強風を巻き起こしても効果がない実体を持たないその黒布を、左腕で防いだリン。


その左腕は黒く染まり黒い湯気が立ち昇っていた。


「クッ・・・疫病か何かか!?」

リンの表情が苦痛と不快感で歪んでいる。


リンは腕から身体へと侵蝕してくる呪いに危機感を覚えたが、冷静に次の行動に移った。


リンは瞳を黄色に染め上げ、サクラの目の前に光の玉を作る。


そしてその光の玉がどんどん大きくなっていく。

しかしサクラは紫の瞳でそれを睨み、紫の光に包まれた光の玉はすぐに消滅した。


しかし、光源は止んでおらず、地面を見ると自分の影が伸びている。


「まさか!?まずい・・・!」

サクラが慌てて後ろを振り向くと、目の前に今にも爆発しそうな大きな光の玉があった。


〜異眼戦型〜


「引っかかったなマッカ!アイが使っていた異眼戦型を一応訓練しておいたのだよ!左右で別の能力が使えるのであれば、同じ能力を二つ使っても良いだろ?」


4年前に戦った時の再現と前回編み出した防御法がミスリードとなっていることをサクラは一瞬で悟った。


リンが言い終えると、連続する光の爆発がサクラを包み込んでいく。


辺り一帯が弾け飛び、砂埃が辺りを包んでいる。


「別の領域に送れなかったようだな。どう防御したにせよ、致命傷は免れない。勝負はついたな」

リンは左腕の不快感が消えていることに気がつき、サクラが無事でないことを察していたのだ。


そしてリンは広範囲に舞う砂埃をしばらく見つめていた。


「ん・・・なんだ・・・?」


砂埃が薄れていくと立っている人影が見えた。


サクラを抱きかかえているであろうその人影に、映る赤い二つの光の点がリンに何者かを理解させた。


「アイ!」

リンが叫んだ。


砂埃が晴れ、淡く赤い光に包まれたサクラの体を静かに建物の影に隠すと、アイはリンに向き直った。


「リン・・・決着をつけよう・・・」

アイは氷眼でリンを見つめ、両腕を構えた。

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