第七章 「七封家の責務」1
人物紹介
<七封アスカ>
七封家の一族。廃館の怪物となって鬼島アイを襲ったが敗北する。紫の瞳で空間や生物を支配できる。
<七封マッカ>
七封家の長。最強の力を持ち、最大の脅威である鬼島リンをあと一歩のところまで追い詰めた。現在は桃井サクラとしての人生を歩んでいる。
<七封センエイ>
七封家のリーダー的存在。紫の瞳の力に長けている。
<七封テッケン>
七封家の一族。戦化粧により身体能力を向上させて戦う。
<鬼島アイ>
かつて世界征服を目論んだ鬼の末裔。鬼眼という瞳の能力を使い脅威を退けてきた。桃井サクラの友人。
<鬼島リン>
アイと同じ鬼の末裔。鬼として完成された力を有し、七色の瞳の全て使いこなす。半鬼という存在を生み出して人類を支配しようとしている。
専門用語
<鬼眼>
鬼が扱う七色存在する能力を持つ瞳。紫は支配。藍は流水。青は氷結。緑は疾風。黄は閃光。橙は火炎。赤は生命。
<七封家>
昔、鬼を滅ぼしたとされる呪い師一族。七つの家があり、それぞれが一人の後継者を残し、代々鬼を監視する。紫の瞳に限り呪いの力で扱うことができる。現在は鬼殲滅委員会を立ち上げ、アイとリンを追っている。
<支配領域>
紫の瞳の能力で作られた架空の空間。
<半鬼>
鬼の紫の瞳に見つめられた人間が凶暴な鬼へと変えられた姿。または鬼自身が一から生み出す凶暴な存在。
七封センエイの支配領域にて。
センエイは七封アスカと七封テッケンを呼び出し、話し合いを行なっていた。
「ここにきて半鬼の出現報告が落ち着いてきている。鬼島リンに何か変化があったのかはわからないが、こちらは対処がしやすくて助かる。ここは彼が適任だろう。半鬼の集中している天地市(地名)の防衛指揮はヤマトに任せる」
センエイは言った。
「あんな新人に任せて大丈夫なのかよ?なんなら俺がやってやろうか?」
口を出したのはテッケンだった。
「我々は鬼島リンに備えなければならない。そして多くの戦闘で優秀な指揮官たちを失った。不安はあるが彼に任せるしかないだろう。ただ、対半鬼の実戦で言えば我々より遥かに経験を積んでいるのも事実。下手な委員会の者を上に据えるより、兵の士気も高まるはずだ」
「確かに政府から派遣されたジジイどもよりはマシか」
「私も異論はないわ」
アスカもセンエイの意見に同意を示した。
「一つ朗報がある。行方を眩ませたマッカ様の所在を掴んだ」
アスカとテッケンは驚いた。
七封の長であるマッカは、鬼島アイと姿を消した。
しかし鬼島アイを発見してもなお、マッカの所在を掴むことはできないでいたのだ。
「修練の森という、かつて熟達した僧たちが修行した今は使われていない山奥に彼女はいる」
修練の森とはその類で伝説として噂される森であり、遥か昔に七封家の者も修行を行った場所であった。
しかし実在していることはアスカもテッケンも知らなかった。
「アスカにはこれからここに向かってもらい。マッカ様をあわよくば連れ戻して欲しい。鬼島リンを討つには彼女の力が不可欠だからな。半鬼の出現が緩んだ今がこの上ない機会なのだ」
「わかったわ」
アスカは迷いなく同意した。
「いいか?修練の森は想像以上に危険な場所だ。古代の巧妙な罠だけではない。不可解な自然現象や悪霊の巣窟にもなっている。細心の注意を払うようにしろ」
センエイは神妙な面持ちで言い終えた。
鬼殲滅委員会の本部で出発の準備を整えたアスカに、テッケンが話しかけてきた。
「まったく、ここまでの事態になるとわな。本来ならあの田舎の畑でケリが付いてた話なのによ」
「仕方ないじゃない。鬼島リンとアイは私たちの想像を超えた鬼だったというだけのことね」
「俺たちが勝ったとしても、この世界は収拾がつかないほど無茶苦茶になっちまってる」
「半鬼の中にも知性の高い者など特殊な個体が現れ始めている。私たちはあらゆる犠牲を覚悟して行動したのに、それでも足りなかったなんてね・・・」
二人は七封家の者として、たとえ民間人を犠牲にしても事態を収める覚悟を持っていたのだ。
「気をつけろよアスカ。アキたちを失い、さらにお前まで居なくなっちまったら寂しいからな」
「ありがとう。そっちも気をつけて鬼島リンの動向を探るのよ」
アスカはそういうとテッケンと別れた。
長時間移動し、おそらく修練の森の入り口に着いたアスカ。
その頃にはすでに夜となってた。
アスカは辺りを観察する。
生命の気配は完全に消え去り、恐ろしい瘴気が漂っている。
一歩でも足を踏み入れれば、正気と共に方向感覚を失うと言われているのは、嘘とは言えない気さえしていた。
森には人工的なエゲツないトラップが数多く仕掛けられており、もちろん一つでも引っ掛かれば即アウトだった。
単純な剣山の落とし穴から、竹のしなりを利用して凶器を射出するものまで種類は様々。当然経年劣化で機能しなくなったものも存在するが、機能する体で警戒べきだった。
〜七封家の占星術〜
この技は星と自身の気の相性、その位置関係により吉凶を予想することができる。鬼将の復活を察したのも、強弱は違えどこの技術だった。
(この感じなら予想と目視でいけそうね・・・)
アスカは森に一歩踏み出した。
生命を感じさせないこの森には、獣道のような道さえ存在せず、茨や凶器のように鋭利な葉っぱを避けて歩くのも一苦労だった。
(マッカ様は本当にこんな場所に居るのかしら?)
いくら呪いの天才であるマッカとはいえ、こんな所で暮らすことなど考え難いことである。
「・・・ッ!?」
突然、竹槍のような物が目の前を通り過ぎ、アスカは間一髪後ろに退けぞって回避した。
(明らかに発生源のない所から飛んできた・・・ポルターガイスト的なものかしら・・・?)
この森には世に放てば世界の法則が乱れるほどの、強い負の力を無理矢理閉じ込めているため、怨霊や異能な力が辺りを埋め尽くしていた。
アスカにとっては人の作ったトラップ以上に、予測し辛く厄介な罠として機能している。
さらに気を引き締めて一時間ほど森を進み、自然の脅威に巧妙な罠、強い悪気を掻い潜り、少し開けた場所に辿り着いたアスカは、そこに何者かの存在を感じ取った。
「マッカ様・・・!?」
アスカは目の前にいる闇に紛れた人影に対して言った。
「なんだ貴様は・・・!?桃井サクラではないのか!?」
男の声だ。
男はそう言って身構えた。
アスカは感覚で感じとっていた。
灰色のローブの男・・・
アイとサクラの三人で下校していた時に遭遇した鬼だった。
「灰色!?ここで何をしている!?」
「貴様はあの時の大女か・・・」
灰色もアスカの気配を感じとっていた。
「やはりここにいるんだなサクラは。お前たちの上下関係はあの時の戦いの様子でわかる。さし詰め主君であるサクラをお迎えにあがる途中のようだな」
(こいつそこまで理解していたとは・・・おそらく彼女が七封家の主であるということは、鬼島リンにバレている)
「お前は今、マッカ様と言ったな?なぜ故人であるその名前が出る?サクラ=マッカということなのか?」
灰色はアスカの表情を感じとりながら言った。
「図星か。やはりリン様の仮説が正しかったというわけか。彼女の下まで案内してくれるな?」
「なぜ、お前なんかに案内しなきゃならないの?」
「馬鹿め!力の差を理解していないのか!?」
灰色はそう言うとアスカに襲いかかった。
(やるしかなさそうね・・・)
アスカも灰色と戦うために身構えた。




