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虹の瞳  作者: シンノスケ123
第五章「英雄の志願者」
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第五章 「英雄の志願者」1

人物紹介

<ヤマト>

熱い血を持つ男子高校生。以前、廃館で怪物に襲われたことを今も時々思い出す。


<ヒロシ>

クールな男子高校生。ヤマト達と共に廃館で怪物に襲われた。


<桃井サクラ>

明るい女子高生。ヤマト達と共に廃館で怪物に襲われた。


<鬼島アイ>

口数の少ない女子高生。ヤマト達と共に廃館で怪物に襲われたが、みんなを守りながら一人でそれを退けた。


序章にてヤマト達が廃館で怪物に襲われてから三か月が経ち・・・

秋が深まり冬を感じ始める時期になっていた。


それと同時に、巷では鬼と呼ばれる存在の被害が出始め、人々は不安や恐怖を募らせていく。


廃館の一件から何を逃れたヤマトは、以来順風な生活を送っていたが、廃館に現れた怪物と最近話題の鬼とが同一なものではないかと常に考えていた。


ただあの時の恐怖以上に、アイ一人に守られていた自分への不甲斐なさや、今後自分の周りに降りかかるであろう脅威に対する不安が強かった。


そしてその気持ちは、やがて強さに対する欲望へと変わっていくのだった。


ある日、ヤマトの下に政府から一通の手紙が届いた。


「ヒロシ、お前のとこにも届いたか?」


「何が?」


「国からの徴兵の便りだよ」

学校の休み時間の教室でヤマトは椅子にもたれかかりながら友人のヒロシが話していた。


「徴兵とはちょっと違うな。志願制度だから強制ではない」

ヒロシは的確に訂正した。


鬼の被害が世界各地で頻発し、警察機構や国軍だけでは今後の対処がしきれないことが専門家達によって予想されていた。

それゆえに国は民間人の中からも兵を募るしかないと考えていたのだった。


「まあそんなことはどうでもいいだろ!?どうすんだ?」


「少し怪しいな、この<鬼殲滅委員会>という穏やかじゃないネーミング。国お抱えの組織ではあるらしいがな」


「国の組織なら大丈夫なんじゃねえか!?訓練によって強くなれるし、少しの給料も出る。しかも、就職や再就職も有利になるらしいじゃねえか!?」


「お前は単純だな。仕事として鬼と戦わなきゃならないんだぞ?死亡リスクだってある」


「わかってるさ。でもこの先どうなるかわからねえ!鬼に対抗する手段を身につけておかねえとなあ!?」


二人が騒いでいると二人の女の子がこちらに歩いてくる。


「二人とも何をそんなに盛り上がっているの!?」

友人のサクラがいつものように明るく話しかけてくる。

そしてその横には、物静かな友人のアイが優しく微笑んでいた。


「いや、政府からのお達しだぜ!?俺たちは鬼に対抗するための組織に招待されてるんだ」

ヤマトはそういうとサクラはハッとした。


「巷で噂の鬼の被害よね?二人はそれに入隊するの?」

サクラは不安そうに聞いた。


「いやまだどうするか決めてないんだが・・・」

ヒロシは悩みながら答えた。


「俺は入隊を希望しようと思ってるぜ。あの廃館にいた怪物を俺は鬼じゃねえかと睨んでんだ。再び鬼に襲われたとして、またあの時みてえにアイに守ってもらうわけにもいかねえからな!?」

ヤマトは笑いながら言った。


「でも、危ないんじゃない?」


「俺もそう言ってるんだが、ヤマトは乗り気なんだよ」


「いや考えてもみろって、今後周りの人間が鬼に襲われるかもしれないんだぜ?今のうちに手を打たないとこの世界はヤバいんじゃねえか!?」


「でも、それはヤマトが心配することじゃないと思うよ。国も動いてるし、もう少ししたら状況が変わるかもしれないわ」

ヤマトの威勢にサクラは如実に心配を示していた。


「まあ、心配すんなよ。俺が鬼の大将をやっつけて、英雄として帰ってくるから」

結局、ヤマトの決心は話の最後まで揺るがず、その後、ヤマトは鬼殲滅委員会に返事を返した。


1週間後、担任の教師から朝礼にて信じられない話を聞く。


その内容はサクラとアイが行方不明になったというものだった。


そしてその日、ヤマトとヒロシは共に下校していた。


「サクラとアイはどうしたんだろうな」


「・・・」

ヒロシがそう言うとヤマトは黙っていた。


どうしようもないことだが、ヤマトは後悔していた。二人が鬼の被害に遭っている可能性が高い。

ならばなぜ、二人をもっと気にしてやれなかったのか。

自分がもっと賢く強ければ、二人を守ってやれたかもしれない。

そして、あの時に命を救ってくれたアイに借りを返せたかもしれない。

そんなことをグルグル頭の中で考えていた。


するとヒロシが遠くを見つめながら言った。

「お前、志願したんだろ?俺も昨日、希望を出したぜ」


「!?、ヒロシ、お前・・・」

ヒロシの言葉にヤマトは驚いた。


「お前が無茶しないか心配だってのもあるけどよ。自分の家族や友人が被害に遭うのは我慢できないからな」


「ふふっ、俺の背中を預けられるのはヒロシ、お前だけだぜ!」

二人はお互いの決意を示し、これからの不安をかき消しながら、それぞれの帰路に着いていった。


しかしこの時は知る由もなかった。鬼という存在の恐ろしさが二人の決意を軽く吹き飛ばすほどのものであると・・・

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