表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の瞳  作者: シンノスケ123
第三章「二つの刺客」
13/30

第三章 「二つの刺客」4

アイは氷眼を光らせ、灰色ローブに向かって走り出し、こめかみに向けて回し蹴りを放った。


ビシィッ!


灰色ローブは両腕で回し蹴りを防御し、その衝撃で後退した。


「なかなか速いな」

灰色ローブがそう言い終えると、アイは再び距離を詰めて、2人は拳や蹴りで打ち合っていた。


アイは格闘戦で時間を稼ぎ、氷眼で徐々に身体の自由を奪う作戦のようだ。


サクラはアスカの後ろに回り耳打ちする。

(まともにやり合わないで。アナタに勝ち目はない。2人ともアイに倒させるわ)


(わかりました)

アスカは答えるとビスケット色ローブの出方を観ていた。


(安心して。ビスケットローブの能力さえ理解できれば、呪いである程度無効化するから)

サクラもビスケットローブを注視しつつ、背後で戦っているアイにも気を配っていた。


正体を明かせないため、サクラ自身が直接敵を攻撃するわけにはいかないが、アスカに指示を出すことで少しだけなら2人に力を貸すことができるのだ。


サクラとアスカがビスケットローブの様子を見ていると瞳がビスケット色に変化したことに気付いた。


サラァ・・・


それと同時にビスケットローブの左右の地面から、それぞれ直径1メートルほどの砂の球体が持ち上がった。


ブオッ!


砂の球体が2人に向かって放たれる。

しかし2人は右に飛んでそれを避けた。


そしてサクラたちは鬼眼の種類は虹の7色だけではないのかと、少し驚いていた。


ビスケットローブはそう言うと、砂の球体を2つ自分の近くで浮遊させたまま、2人に向かって走ってきた。


サクラはアスカの背に隠れながら耳打ちする。

(あの砂は私が封じ込める。でもこれ以上近づけたらアイの邪魔になるから、砂に対応すると見せかけた不意打ちでビスケットを牽制して)


アスカがビスケットローブに向かって走り出すと、砂弾がアスカに襲い掛かろうとした。


しかし、それは直前で推進力を失って地面に崩れ落ちていく。


アスカが前蹴りを放つとビスケットローブの腹部にヒットし後方に3メートル程吹き飛んだ。


「砂弾を打ち消されるとは・・・」

ビスケットローブはそう言うと、ビスケット色の瞳を更にギラギラと輝かせる。


「初めからこうしておけば良かった」

ビスケットローブの周りから砂塵の嵐が巻き起こり、サクラとアスカの体を包み込んでいく。


「クッ・・・」

2人は激しい砂嵐で目も開けられず。腕で顔を覆っていた。


ドスッ・・・ドスッ・・・


「ギャァッ・・・」

アスカの叫び声が微かに聞こえてくる。

どうやら砂弾をくらったらしい。


(まてよ・・・)

サクラは何かを閃いた。


ビスケットローブはサクラを確保するために、ジワジワとにじり寄ってくる。


しかし瞬時にビスケットローブの口は手で覆われる。


そして、次の瞬間にはビスケットローブの首にナイフが突き立てられていた。


サクラはビスケットローブの位置をある程度予測して背後に周り込んでいたのだ。


さらにサクラはビスケットローブを紫色の瞳の能力で、センエイの支配領域に無理矢理捻じ込んだ。


砂嵐がだんだん晴れていく。


砂塵が晴れると、砂弾によって気を失ったアスカと、サクラがその場にしゃがみ込んでいた。


(絶対怪しまれるけど、こうするしかなかったわ)


「なんだ?」

灰色ローブがサクラ達の方を見てつぶやいた。


サクラも戦況を確認するため、アイの方に振り向いた。


アイは左腕を右手で押さえており、対する灰色ローブはジリジリ距離を詰めていく。


そしてアイの瞳は赤色に変わっていた。


(押されているの?)

サクラはテッセンからアイの能力を聞いていた。

青の氷の能力に赤の回復能力。

アイが赤眼を使わなければならないと言うことは、防御に転じているということになる。


「ッ・・・!」

灰色ローブに距離を詰められ、少し打ち合うが、アイは再び距離を取ってしまった。

そして、痛みからかアイは表情を歪めている。


アイが距離を取ると灰色ローブは同じ速度で移動して、また少し打ち合うのを繰り返している。


まるで弄ぶように。


(身体を硬質化させているのかもしれないわね)

サクラは構わず冷静に観察していた。

奴の目的がアイを仲間に引き入れるためなら、殺すはずがないと考えたからだ。


「おいビスケット、何を隠れている!?」

灰色ローブは流石に様子がおかしいと思い、大声を出した。


灰色ローブの攻撃が止み、アイは体力の消耗からガクッと膝をついた。


「そろそろ紫眼で精神を支配できそうか?」

灰色ローブが紫色の瞳を輝かせた瞬間。


飛んできた彫刻刀が灰色ローブの左腕に突き刺さった。


飛んできた方を見るとそこにはサクラがいた。


「貴様、死にたいか!?」

灰色ローブは驚いてサクラの方を睨んだ。


しかしこの瞬間をアイは見逃さなかった。


アイは素早く立ち上がると、灰色ローブの顔面に強烈な拳を叩き込んだ。


そして、灰色ローブは一瞬で卒倒した。


(もしかして、アイも同じタイミングを狙っていたのかもしれないわね。瞳を切り替えるタイミングをね)


アイは足を引きずりながら、サクラの方に歩み寄る。


「サクラ、助かったわ。怪我はない?」

アイの問いにサクラはゆっくり頷いた。


「アスカちゃんも気を失ってるだけみたい」


しかし2人がほっとしたのも束の間、濃密で邪悪な空気が漂ってくる・・・


「アイ、久しぶりね」

2人が声の方を振り向くと、そこには紫色の瞳を輝かせた鬼島リンが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ