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虹の瞳  作者: シンノスケ123
第三章「二つの刺客」
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第三章 「二つの刺客」3

七封マッカの記憶が蘇ったサクラは、2日にわたって苦しみ悩み抜き、なんとか落ち着きを取り戻した。


「それで私はこれからどうすればいいの?」

サクラは七封家の4人を召集して聞いた。


「貴女はまだ完全な状態ではありません。とりあえず元の生活に戻れるのであれば、それに越したことはないと思います」

センエイは答えた。


サクラにとって自分が桃井サクラであるという意識のほうがが強く、七封マッカの記憶は4年前というよりももっと昔の出来事のように感じられて、桃井サクラとしての生活に戻ることについては難しく思えなかった。


「もちろんこの事実は誰にも知られてはなりません。鬼島リンに襲われれば、今の貴女ではひとたまりもないでしょう。学校生活ではアスカを護衛につけます。鬼島アイと同時に監視することができる」


センエイは立ち上がると瞳を紫色に輝かせた。


「それでは貴女を家に帰します。用があればいつでも我々をお呼びください」


サクラはセンエイの瞳を見ると、いつのまにか自宅の真ん前に移動していた。


「貴女が無事に鬼島リンと鬼島アイを討ち果たすことを祈っています・・・」

センエイの声がサクラの頭の中に響いた。


アイを倒さなければならないのは理解している。元々、鬼の末裔の監視と処分が私の任務だったのだ。


世界のために手を下す。それを違えてしまったら、弟は何のために死んだかわからない。


しかし、自分にアイを殺すことができるのだろうか・・・?


翌日、アスカの送迎によりサクラは学校に着いて、2人は2年生の教室が並ぶ2階に上がって行く。


「マッカ様、随分お変わりになられましたね。以前の貴女はまるで感情がない機械のようなお人でした。それが今は桃井サクラ本人。普通の女の子のように表情から感情が読み取れます。今でも貴女がマッカ様であると信じられないですよ」

アスカはそう言うと隣の教室に入って行った。


あれだけ怯えていたアスカが少しずつ心を開いてくれているとサクラは感じていた。


七封マッカだった頃は過酷な環境で心を閉ざし、気持ちが昂るのは戦闘の時くらいだった。それが桃井サクラの感情と記憶に一時的に上書きされ、本来の自分の記憶が蘇ってもなお、普通の女の子としての感覚を保ち続けているのだった。


教室に入ると、1番後ろの窓際の席でアイは、窓から見える運動場を眺めていた。


「おはよ、アイ!」

サクラはいつものようにアイに声をかけ、アイの前の席に座った。


「ごめんなさい。急に2人がいなくなったから、怖くなって帰ってしまったの」

アイの祖父母の家に無理を言って同行したにも関わらず、途中で帰ってしまったことについてサクラは謝罪した。


「いいのよ、無事に帰れたみたいで良かったわ・・・」

アイは運動場を見たまま答えた。


「ありがとう、良かったら帰りクレープ屋に寄ってかない?」


「良いわね。行きましょう・・・」

サクラの誘いにアイは運動場を見たまま答えたが表情は少し微笑んでいた。


アイと別れたあの日、アイの身に何があったかテッケンから聞いていた。アイがテッケンを見逃し、その後にリンの放った単眼鬼を退けたことは、アイが無事に登校していることから想像はつく。


しかし、アイの思い詰めた様子から察するに、自分の境遇について少しずつ理解し始めているからなのかもしれない。そんなことをサクラは一日中考えていた。


そして、放課後・・・


「じゃあ、いこっか」


「ええ・・・」

そういうと2人は教室を出た。


「私もご一緒して良いかしら?」

待ち受けていたアスカが2人に話しかける。


「・・・」

アイは黙ってアスカを見た。


「鬼島アイさん、この間の仲直りがしたいのよ。ダメかしら?」

アスカがそう聞くと、アイはサクラの方を見た。


「私は良いよ。2人って接点があったのね」

サクラはニッコリと微笑みながら言った。


「わかったわ。あなたにも事情があるのでしょう・・・」

アイはヤレヤレと言った様子でアスカに言った。


サクラは交友関係が広かったので、アスカと仲が良くてもそれほど不思議ではなかった。なのでサクラはアイの前でも、アスカと自然に接することができた。


そして3人は軽く談笑しながら、クレープ屋の前まで来た。


派手なピンク色の外観で、以前から建設工事が行われている場所だった。


「ここ、最近できたらしいのよ」

サクラを筆頭に3人は中に入っていく。


アイはチョコレート、アスカはレアチーズ、サクラはミックスベリーホイップを頼むと店内のテーブルに座って食べた。


「ありがとう。楽しかったわ」

クレープ屋の帰り道、アスカはアイに礼を言った。


「そうね。楽しかった・・・」

アイは静かにそう返す。


サクラはそんな微笑ましい光景に笑みがこぼれると同時に罪悪感も感じていた。


「ッ・・・!?」

突然、サクラの喉元にヒンヤリとした物が押し当てられる。


そこはちょうど人通りの少ない道だった。


「動くなよ・・・」

サクラの背後から男の声が聞こえる。

男は並んで歩いている2人からサクラを引き剥がすように後退りした。


「誰ッ・・・!?」

アイは叫んだ。


「鬼島リン様の使い・・・鬼島アイ、そして桃井サクラを招待しに参った・・・」

男はビスケット色のローブをまといサクラの喉元にナイフを突きつけている。


「なぜ、サクラまで!?」

アイは再び叫んだ。


今度はアイとアスカの後方から別の男の声が聞こえてきた。

「鬼島リン様は桃井サクラを大変気に入っておられる・・・彼女に危害を加えたくない・・・鬼島アイ、ご同行願えるかな・・・?」

灰色のローブをまとった男が後ろに立っていた。


「クッ・・・!」

アイは歯を食いしばり身構えた。


「私に任せて・・・」

アスカはアイにそっと耳打ちすると、瞳を紫色に輝かせサクラの方を見た。


サクラもそれに気付きアスカの方を見て身を委ねた。


「グッ・・・!」

ビスケット色のローブの男の脇腹にサクラの放った肘打ちが突き刺さり、アスカは咄嗟にサクラの身体を抱き抱え救出した。


「アスカ、助かったわ。ビスケット色の方を足止めできる?」

アイはアスカと背中合わせになり、灰色のローブの男の方を向いた。


「やってみる。しかし、こいつらはおそらく鬼。かなり手強いわよ」

アスカはサクラを放すとビスケット色のローブの男の方を向いて身構えた。

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