女神の心
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ドリスは代々農民の家系に生まれた。
父・アタナシオスはその土地を受け継ぎ、家族と同じくらいそのささやかな畑を愛していた。
だが、ドリスはその大地を同じようには愛せなかった。
彼女の教育は、彼女の心を遠くへと向かわせていた。
外の世界を見たい。未知の国々を旅し、数多の冒険に身を投じたい。
そうした多様な経験に満ちた人生を、ドリスは夢見ていた。
しかし、彼女は父への愛から、家に残ることを選んだ。
そして、父は病に倒れ、静かに息を引き取った。
彼女は畑を継ぎ、父が愛したその大地を守るために、トリカラに留まり続けた。
気づけば、彼女は三十五歳になっていた。
若さは静かに、しかし確かに過ぎ去っていた。
それでも今の彼女は、かつての若き日と同じように、いや、それ以上に美しかった。
彼女の身体は、成熟という名の豊穣を纏っていた。
大地のように包み込む優しさと、母性の温もりを感じさせるその姿は、
まるで果実がたわわに実る晩夏の庭のようだった。
そんな彼女が、リンタロウと出会ったとき——
彼の中に、自分が失ったすべてが映っていた。
遠い国からやって来た、若い旅人。
その存在そのものが、彼女の憧れていた「外の世界」の象徴だった。
そして何より、彼の若さこそが、彼女の心を最も強く引き寄せた。
それは、彼女がかつて持ち、そして失った輝き——命の炎だった。
だから、あの夜、彼女は迷わず唇を重ねたのだ。
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