女神からの贈り物
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
リンタロウの初仕事は、畑の雑草を鍬で取り除くことだった。
作業を始めてから三十分もしないうちに、全身の疲労が押し寄せてきた。
額からは汗が滴り、手のひらは豆だらけになり始めていた。
彼は自分を奮い立たせようと、頭の中で想像を膨らませた。
——これは、ギリシャ神話におけるヘラクレスの十二の功業に匹敵する偉業だ、と。
しかし、どれだけ気持ちを奮い立たせても、肉体は正直だった。
やがて意識が遠のき、時間の流れがねじれていった。
過去のすべての瞬間、
「もしもこうしていたら」という無数の分岐、
そしてあり得たかもしれない未来の断片たちが、脳内を駆け巡る。
——初日の作業中に命を落とし、倒れた自分の身体が土に還り、
そこから新しい草花が芽吹く。そんな未来の一つすら見えた。
リンタロウは、これまで出会ったすべての人々の人生を想像した。
フェリシアの若かりし頃。
知らないその過去に、幾千もの物語を重ねた。
この大地は、人類が現れる前には誰のものだったのか?
古代の哺乳類か? 恐竜か?
それとも、得体の知れぬ微小な動物たちか、遥かな昔の菌類か?
では、未来には誰がこの地を歩くのだろう?
人類が滅んだ後、次にこの星を支配する者とは?
——気がつけば、夜だった。
リンタロウが目を覚ますと、五人の女性たちが彼を囲んでいた。
どうやら、彼は作業をやり遂げたものの、その直後に気を失ってしまったようだった。
「さあ、夕飯にしましょう」と、誰かが声をかける。
とはいえ、夕飯といってもそれはワインとチーズ入りのパンだった。
グラスがいくつも並べられ、彼にもひとつ手渡された。
モニカがからかうように微笑んで言った。
「リ〜ンタロウ、初日で気絶しちゃうなんて、かわいいわね。まるで子どもみたい。」
エレガントな雰囲気を漂わせるアンジェリカは、グラスを軽く掲げながら言った。
「でも、よく頑張ったわ。今日はお祝いよ。たっぷり食べて、飲んで、明日に備えましょう。」
ドリスは何も言わず、ただ静かにワインを飲んでいた。
サマンサはというと、目の前のパンとチーズを夢中で頬張っていた。
リンタロウは、この温かいもてなしを、
まるで冒険譚の中の「祝宴」のように感じた。
若い頃に読んだファンタジーの物語のように——。
食事が終わると、リンタロウは彼女たちに礼を述べ、家へと帰ろうとした。
そのとき、ドリスがふと立ち上がった。
「送っていくわ」と短く言って、彼の隣に立った。
丘を登り、木造の小屋に辿り着くと、ドリスは立ち止まり、リンタロウの顔をじっと見つめた。
そして——
唇を重ねた。迷いのない、深く、濃密な口づけ。
舌が触れ合い、温もりが溶けていく。
それは、彼女の意思をまっすぐに伝えるようなキスだった。
リンタロウは思った。
——これは、神話の英雄が試練を乗り越えた後に女神から与えられる「報酬」だ。
都会の機械的な暮らしの中では決して得られなかった、
人間としての感覚、命の実感、そして——生きるということの意味。
彼の胸の奥に、確かな火が灯っていた。
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