異世界が私を受け入れてくれた日
これは物語の新たな章です。楽しんでいただければ幸いです。
次の朝、リンタロウはいつものように目覚まし時計に叩き起こされた。
しかし今日は、何かが違った。
昨日、会社を去った。あの地獄のようなオフィス、あの腐った空気、あの顔も見たくない上司。
すべてが昨日で終わったのだ。
そう思うと、目覚めの空気すら、ほんの少し澄んで感じられた。
スマートフォンを手に取る。
未読の通知が一つ。
件名:移住プログラム選考結果のお知らせ
送信者:在日ギリシャ大使館
心臓が一瞬、ドクンと鳴った。
指先が震えながらも、メールを開く。
拝啓
リンタロウ様
この度は「プラシニ・リパンシ」移住プログラムにご応募いただき、誠にありがとうございました。
厳正なる選考の結果、貴殿を本プログラムの参加者として正式に受け入れることが決定いたしました。
つきましては、渡航準備のための最終手続きとして、大使館にて面談および書類の確認を行います。
日時:○月○日 午後6時
場所:在日ギリシャ大使館 東京
ご不明点等ございましたら、下記までご連絡ください。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
敬具
ギリシャ大使館
プラシニ・リパンシ選考事務局
スマホをそっと置き、天井を見つめた。
静かだった。
誰にも怒鳴られず、誰にも指図されず、誰にも評価されない時間。
言葉にならない感情が、喉の奥でつかえていた。
喜びとも違う。安堵とも違う。
それは——
「ああ、やっと……終わったんだ」
誰に聞かせるわけでもなく、ぽつりと呟いたその一言が、
この東京という都市の雑音に、ふわりと溶けていった。
皆さんがこのエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードをすぐにアップロードします。