軍隊と戦う
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
朝靄の中、畑は白く霞んでいた。
凜太郎は鍬を肩にかけ、静かに歩いていた。
五人の女たちは小屋の前に並び、怯えた目で遠くを見つめていた。
そこには——再び、黒い影が立っていた。
無常の使徒たち。
金属の鎧が朝の光を受けて、鈍く反射していた。
だが、その姿は実体を持たぬ霧のようで、風に揺れるたびに歪んでいく。
見れば見るほど、存在しているのか、いないのか分からなくなる。
女たちの顔に浮かぶのは、老いと死への予感だった。
それは恐怖ではなく、「終わり」の重みそのものだった。
凜太郎は歩み出た。
鍬を地面に突き立て、使徒たちの前に立つ。
「やめろ。お前たちがここにいるだけで、あの人たちは苦しむ。」
沈黙。
風の音だけが、空を渡る。
やがて、最前の使徒がわずかに頭を動かした。
その兜の奥から、重く冷たい声が響いた。
「我らは誰にも止められぬ。
すべての花は散り、すべての命は土へ還る。
不信者よ、お前は死に何を見ている?」
凜太郎は、ゆっくりと息を吸い込んだ。
昨夜の夢が、心の奥で再び光を放つ。
哲学者たちの言葉が、彼の中で一つに結ばれていた。
「……俺はもう分かっている。」
凜太郎は微笑んだ。
「お前たちは“終わり”だ。でも、終わりは“形”に過ぎない。
俺たちは創る。語り、描き、想像する。
俺たちは“無”を見つめながら、“世界”を作る者だ。」
一瞬、風が止まった。
使徒たちの輪郭が、淡い光に包まれる。
その中の一人が、低く問う。
「……死の前に、信仰なき者は何になれる?」
凜太郎の瞳が、まっすぐに闇を見据えた。
「死の前に立つ“信仰なき者”?」
彼は静かに言った。
「——それは芸術家だ。
“死”の前に、我らは世界を描く。
“無”の前に、我らは物語を紡ぐ。
だからこそ——死は、俺たちを超えられない。
芸術家の前に死は何になれる?」
沈黙が、辺りを包んだ。
そして、黒い影たちはひとつ、またひとつと崩れ、
光の粒となって空へ消えていった。
五人の女たちは呆然とその光景を見つめ、
涙が頬を伝った。
凜太郎は空を見上げ、
そっと呟いた。
「もう、大丈夫だ。」
——無常の使徒たちは、再び現れることはなかった。
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