幽霊と照明
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
夜は、まるで息を潜めたように静まり返っていた。
村外れの小さな家の前で、凜太郎は空を見上げていた。
彼の周りには、疲れ果てた五人の女たち——その胸の奥に宿る憂いが、夜気とともに漂っているようだった。
誰も言葉を発しない。ただ、時の流れだけが重く、湿った空気の中をゆっくりと進んでいく。
昼間に見た光景が、凜太郎の脳裏を離れなかった。
遠くの丘に、黒い甲冑をまとった者たちがいた。
彼らはただ佇むだけで、女たちの心に冷たい影を落としていった。
それを見た瞬間、凜太郎の中に、形のない恐怖と怒りが混ざり合った。
しかし、いざ近づこうとしても、鍬を握った手は空を切るだけだった。
彼らは実体を持たぬ「概念」——老いと死の影であったのだ。
夜更け、女たちが眠りについたあと、凜太郎は灯りを落とし、机に向かった。
紙もペンもない。ただ両手を組み、思索に沈む。
「どうすれば……あいつらを追い払える?」
自分の問いに答える声はない。
そのまま、彼はいつしかまどろみに落ちていった。
夢の中で、凜太郎は果てしない白い空間を歩いていた。
そこには古代の衣をまとった男が立っていた。
「自然とは目的を持つものだ。お前はその目的をどこに見る?」
——アリストテレスの声が響く。
その後ろからは、影のような笑みを浮かべたもう一人が現れた。
「目的など幻想だ。創造とは、虚無に抗う意志そのものだ」
——ニーチェが低く呟く。
声が重なり、世界が揺らぐ。
数え切れぬ哲学者たちの言葉が、夜空の星々のように降り注いだ。
それは論争でもなく、対話でもなかった。
ただ、ひとつの問いが残るだけ——
「お前にとって“生きる”とは何だ?」
目を閉じたとき、凜太郎は答えを見た。
言葉では言い表せぬ“なにか”が、胸の奥で静かに形を成していった。
夜が明ける頃、彼は静かに目を開けた。
そして、かすかに微笑んだ。
——答えは見つかった。
だが、まだ口にする時ではなかった。
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