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51話 化けの皮

聖女がいるであろう扉を開けるとそこには背を向け俯いて座る聖女の姿があった。

「聖女様ですよね? 助けに来ました」

「助け…………来てくださったのですね」

ベールで顔が見えないが立ち上がり星弥へと抱きつこうとする。しかし絢斗(あやと)星弥(せいや)を全力で後ろへと引っ張った。

「どうしたんです?!」

「……………聖女様はどこへやった……」

「聖女様ならあそこにいるじゃ………まさか……」

「……いひひ………バレちゃった………(しゅう)も捕まったしもう隠してても意味ないよね」

ベールを脱いだ聖女は赤い瞳に尖った耳を持っていた。

「悪魔?!」

驚く星弥に対し、絢斗は何やら焦っていた。

「っ! ヴィヴィアン・べルフェゴール!」

「あれ? ヴィヴィのこと知ってるの? それなら…………血ちょうだい!」

「坊ちゃんはお逃げください!」

攻撃してきたヴィヴィアンを絢斗が小刀で相手をする。

「こいつはイビルとは比べ物にならない化け物です!」

「血ちょうだい! お腹すいたの!」

「お前に渡す血などない!」

絢斗の切羽詰まった声に星弥は輪鼓(わこ)楓佳(ふうか)を抱えて宮殿の外へと走った。

あの方の血を飲ませる訳にはいかない!……………………………もったいないが……今が使いどき!

絢斗は懐からお祓い札のようなものを取り出した。

「地を穢す忌まわしき悪魔よ。我、火の王が命じる。元の地に帰りたまえ!」

ヴィヴィアンの手に御札を貼り付けるとヴィヴィアンは瞬間移動したかのように消え去った。

「…………はぁ…はぁ……はぁ………あっぶねー」









2人を抱えて逃げた星弥は入口の扉に背を預け座っていた。

「せいや、聖女様は?」

「聖女様は………………もう………」

イビルとの戦いで星弥はわかっていた。悪魔がいるということは誰かが依代にされた。そしてあの部屋にいたのは聖女。つまり……

「聖女様は悪魔に依代にされて死んだ……」

「そんな………」

「それは本当なのですか?」

声をするほうを見上げるとそこには聖女以外の王族がいた。どうやら獣人たちが助け出したようだ。

「……………はい……死体もありません……」

「そう……ですか…………異国の方、どうかお話を聞かせていただけませんか」












後日、王の計らいにより俺たちは宮殿の客室へと案内された。(つばさ)も宮殿内の病室に移された。この戦いは只越秀(ただこししゅう)を捕まえたことにより呆気なく終わりを迎えた。只越が使っていたであろう部屋を調べたところ例の増幅薬が大量に発見された。調べると聖女の血の塊を砕き粉末にしたものが増幅薬の正体だった。聖女は異分子という独力(アビリティ)を持っており力を倍増させることのできる血が流れていたらしい。問題は彼女の流す涙だ。

(すみ)の…………聖女の涙は傷を癒す。それはただの癒しではない体を健康であった時に戻すみたいなものだ………涙を飲みすぎると先祖返りをする。そう澄はずっと言っていた」

昨日戦闘が行われた広間で星弥と絢斗は増幅薬の秘密を聞いていた。

「……………だから……楓佳はこんな可愛い姿に……」

絢斗が抱えている狐は楓佳だった。昨日被った煙により先祖返りしてしまい本物の狐の姿になってしまった。

「可愛いってなんだ! かっこいいだろ!」

「セレサと似てるにゃの」

「王様これは解けないんですか?」

「無理です。聖女は代々同じ力を継いでいますがどんな力も一度付与されては解くことは不可能です…………いや……ひとつだけ方法が……」

「なんですか?!」

聖鏡(せいきょう)にたどり着ければあるいは………どうしたんです?」

聖鏡という言葉を聞いた瞬間星弥と絢斗はにやにやしていた。

「俺たちの目的地聖鏡なんです」

「! せいや! ぼくも行く! 連れてってくれ!」

「もちろん連れてくよ。連れてかないと解けないからな」

「! やった!」

重力により下に垂れていた尻尾が喜びのあまり揺れていた。

「ではいつまでもここにいるという訳ではないのですね」

「はい」

「そうですか……あなた方ならいつまでもいても良かったのですよ」

「ははっ、じゃあ翼が完治するまではお邪魔しようかな」

「ぜひ! 歓迎いたします」









「あ! 星弥さん! ご無事でしたか?」

病室へ行くとそこには傷と熱が完治し元気になった翼がいた。

「………つばさーーー!!」

星弥が翼に思いっきり抱きついた。

「星弥さん……苦しい……」

「心配したんだぞ! もう起きないかもって! ほんとによかった……」

「死にませんよ………あなたが死ぬまで」

「………ちょっと……いや、かなり怖い」

「そんなにドン引きしないでくださいよー。俺が倒れた時はあんなに必死だったのにー」

「わーーーー!! お前忘れろ!」

「いやでーーす。絶対忘れません!」

ぎゃあぎゃあ言い合う2人を絢斗は外から暖かく見守っていた。そんな絢斗は部屋の近くを離れ電話をかけ始めた。

「もしもし遊冥(ゆうめい)様、絢斗です」

『あぁ、電話がかかってきたってことは』

「はい、無事解決いたしました」

『そうか、お疲れ様』

「ありがとうございます。我々は次の目的地へ向かいます」

『………もう帰って来ないんだな……』

「そうですね」

『絢斗……今まで仕えてくれてありがとう。お前と契約して良かったよ』

「……召喚すればいつでもそちらへ行きますよ。ただ私は仕えるべき本当の主を見つけただけです」

『………そうか、元気で、そしてさようなら』














―――――――――――



「あれ? 」

ヴィヴィアンが目を開けるとそこは大きく、そして真っ暗な広間にある椅子の上だった。右隣には真っ赤な着物を着たイシスがいた。

「おかえりヴィヴィ。意外と早かったわね」

「イシスお姉ちゃん……なんでヴィヴィここにいるの?」

「さぁ、祓われたんじゃない?」

「ヴィヴィねぇ様が祓われるってことは相当強かったんだろ? どんな相手だ? 戦いてぇ!」

左隣に座るコアラを抱っこした少年が前のめりに話しかけてきた。

「オリバーはすぐ騙されるから無理よ」

「イシスねぇ様! そんなすぐ騙されないって! なぁ?!」

抱えているコアラに話しかけるが寝ているのかまったく話を聞いていない。

「俺様的に大したことねぇだろ」

足を机にあげるだらしない少年は机にあるさくらんぼを種ごと食べていた。

「アークお兄ちゃんとエリックお兄ちゃんは強いから相手にすらならないかもね」

「あなたはどう思う? クオーレ」

クオーレと呼ばれた少女はフードを深く被り目元まで隠していた。

「私もイシスお姉様と一緒です」

「そう……ヴィヴィ、そんなに悩んでどうしたの?」

「うーん………今考えると………あの男……フォティアだったかも!」

「フォティア?! 今フォティアって言った?!」

突然立ち上がったイシスがヴィヴィアンの肩をつかみぐらぐらと揺らす。

「うん! 匂いがフォティアに似てた!」

「…………あぁ……フォティア♡……あの日あなたを見失ったと思ったら……人間界にいたの

ね♡……会いに行かなくちゃ!」

「待てイシス」

「アーク兄様止めないで私は愛するフォティアに会いに行くわ」

「今行ったら父上に怒られるぜ」

父上という単語に全員が動きを止めアークへと視線を集めた。

「今日俺がわざわざここに来たのは父上からの伝言を届けるためだ」

「アークお兄様がいらっしゃるなんて珍しいと思った」

「珍しいは褒めてんのか? クオーレ? まぁいいか。父上からの伝言…………聖界が何やら騒がしい、創造神の帰宅が近い。創造神の()()()を探せ。だとよ」

「探し出せたら何か報酬でもあるのかしら?」

「宝物庫からなんでもひとつ持ってけだとよ」

「あらあら、それは最高じゃない」

にやにやとしたイシスが思わずこぼれた笑みを隠すべく扇子を取り出した。

「ヴィヴィ宝物庫にある血の結晶欲しい!」

「俺、虎の毛皮! クオーレは何が欲しいんだ?!」

「私は……見てから決める」

「そっか、じゃあ今から競走な! 早いもん勝ち!」

「いいわね、じゃあよーいはじめ」

イシスの掛け声とともに全員があまりの速さで消えてしまった。悪魔たちはこっそり人間界へと降り立った。








最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

ヴィヴィアン・ベルフェゴールは血が大好きな悪魔です。服はきっとひらひらのゴスロリ系を着てます。

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