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49話 絶対絶命

袋のネズミとなったこのカジノから正面突破するのは不可能だ。戦闘員3人に対し、非戦闘員が3人、しかも子供が2人、守るには時間も人数も足りない。幸い、カジノ内に兵士が階段の見張りの二人しかいなかったのが救いだ。翼が奪い取ったトランシーバーから聞こえてきたのはこのカジノ内を360度包囲が進んでいるということだ。

「……絶体絶命だ………」

「…………何が絶体絶命だよ! こんなことになったのも外のお前らがここに来たからだ!」

楓佳(ふうか)! せいやたちが来なかったら私たちはあの生活のままだよ! 獣使い(けものつかい)の範囲外の人じゃないと!」

「獣使い、獣使い、うるせぇよ! こんなとこ抜け出してやる!」

「待て!」

絢斗(あやと)の静止の声を聞かず楓佳は外へと繋ぐ扉を開けてしまった。すると一斉にカジノの扉に明かりが照らされた。

「撃て!」

一斉に射撃が始まり、(つばさ)の瞬間移動で楓佳はカジノ内へと戻り壁へと隠れた。

「何すんだ! 離せ!」

「バカ! 死にたいのか! 死にたくないなら大人しくしてろ!」

翼の怒鳴り声に流石に大人しくなり、壁へと身を隠していた。その横では翼が咳をしていた。押さえていた手にはべっとりと血が付着していた。

「! 撃たれたのか!」

「違う……くそっ………瞬間移動しようにも近くにいないと!」

星弥(せいや)輪鼓(わこ)は翼たちの反対側の壁、絢斗と杏菜(あんな)はカジノ台の裏へと隠れ、瞬間移動の範囲内にいない。これでは4人を置いていくことになる。

……射撃前に瞬間移動していたら!…………いや、楓佳が話を聞かず瞬間移動はどうせ無理だった。こいつを守りながらどうやってここを! 聖力(せいりょく)を放つ?…………この建物周辺が更地になる可能性も………くそっ! どうすれば!

悩みに悩んでいる中、向かい側にいる星弥を見ると何やら大きな盾を創造し、壁を滑らすように翼へと投げた。続けて2枚盾を作っている。

あぁ……なるほど……

「楓佳、生きたいなら話を聞け。合図があるまでここにいろ、いいな?」

「……う、うん」

「助けてやるから安心しろ」

盾を頭の上に覆うよに全員がセットする。

(ビエント)

風を発動させた翼は効果範囲を広げこのカジノだけが壊されるよう調節していた。瓦礫が降り注ぐが盾により守られている。建物が半壊し始めた時には兵士たちは射撃をやめ、星弥たちが死んだことを確信していた。

「なんかわかんねぇけど侵入者倒したぞ!」

「よっしゃー! 死体探せ!」

瓦礫の上を歩き、死体を探す中、一人の兵士が見たことの無い盾を見つけた。

「なんだ…………これ………」

盾を広いあげようとした瞬間飛び出してきた翼の蹴りでその兵士は気絶した。

「生きて?!」

翼へと視線が集まる背後から絢斗が蹴りあげ、星弥が申し訳なさそうに殴った。

「いたぞ! まだ生きてる!」

「撃て!」

射撃が始まるが翼はそれを身軽に避け、次々に敵兵を倒していく。

「なんなんだ! こいつら!」

星弥は武器創造で創り出したスタンガンで次々に相手を気絶させていった。

「殺しても構わん! 撃て!」

絢斗は火で壁を作り、射撃が一切効いていない。

「バンッ」

人を燃やさないよう、銃や戦車などをピンポイントで燃やしていく。武器のなくなったほとんどの兵士は走って逃げっていった。その隙に杏菜、楓佳、輪鼓は瓦礫の山から這い出て逃げようとしていた。しかし、走っていた杏菜と輪鼓の横で楓佳は足を止め戻ってしまった。

「楓佳?!」

「ない! ない! 母さんの形見が!」

瓦礫の中を探していると、きらりと輝くブレスレットが落ちていた。

「あった!」

「楓佳! 危ない!」

「……え?」

輪鼓の声に気づきくと、倒れていた兵士のひとりが銃を構えて楓佳を狙っていた。

………間に合わない……母さん……

怖さからぐっと目を瞑った。

「………っ!」

訪れない痛みに目を開けると、自分を庇い肩を撃たれた翼がいた。痛みのあまり倒れた翼は肩から血を出しており、本人が押さえているが止まる気配がない。

「翼! 翼! 翼!」

駆け寄ってきた星弥が声をかけると何やら口を動かていた。唇の動きをみると移動と言っていた。翼はこんな状態で瞬間移動を使おうとしているのだ。

「こんな状態で独力(アビリティ)使おうとするな!」

「…………おね……がぃ………」

荒い呼吸をする翼を横に火の壁を作っていた絢斗が翼に触れた。

「絢斗さん! 翼は!」

「今この状況を変えられるのはこれしかありません! 早く!」

絢斗の気迫に押され、全員が翼へと触れると輪鼓の家に瞬間移動していた。そこにはみなの帰りを待っていた祖母と牛の獣人牛太(ぎゅうた)がいた。突然現れた皆に驚いていた。

「早く手当しないと! おばあちゃん! 包帯とガーゼとって!」

「輪鼓ちゃんどうし……………撃たれたのか?!…………手当より止血が先だ!」

「医者は?!」

「こんなスラム街に医者なんていねぇよ!」

「翼! 翼! 死ぬな!」

翼の左手を握り星弥は必死に懇願していた。

嫌だ………嫌だ…………置いていくな!………神様! 翼を助けてくれ!

医者がいないとわかった絢斗は唇を噛み締め焦りながら言った。

「……っ……私が手術します! 牛太様お手伝いをお願いいたします!」

「お、おう! わかった! 何持ってこればいい?!」

「アルコールとメスの代わりになるものを! それから綺麗な布を! それ以外はここから出てください!」

「嫌だ! 翼! 翼!」

「せいや! ここから出ないと!」

翼へと手を伸ばし続ける星弥を輪鼓と杏菜が必死に外へと出そうとしていた。それでも星弥は泣き叫び、手を伸ばし続けていた。

「嫌だ! いやだ! 死ぬな……………置いていくな!」

手を伸ばし続けたが後から来た多くの獣人に引っ張られ外へと連れ出されてしまった。中では虚ろな目をした翼が天井をみながらボソッと何かを言っていた。誰にも聞こえないほど小さな声で。










「………ぐっ!」

引っ張り出されたあと、星弥はすみっこでこちらの様子を恐る恐る伺っていた楓佳の頬を思いっきり殴った。倒れた楓佳の胸ぐらを掴み泣き叫んだ。

「お前があの時戻らなければ! お前が来なければ! 翼は撃たれなかった!」

「…………ごめん………なさい………ごめん………なさい」

「全部お前のせいだ! 全部……全部!」

「…………ごめんなさいっ…………」

周りで様子をみていた者たちも何も言うことができなかった。何も事情を知らない者が多くおり、訳がわからないのもあるが、今止めてしまうと()()()()()()()()、そんな感じがした。

「……せいや……冷静になって……楓佳を責めても意味ないよ……」

「……………くそっ!……………何も………できなかった…………」

木にもたれかかり、下を向く星弥は涙を流していた。楓佳が邪魔をしたのもあるが自分の弱さが今の状況を作っていることが悔しいのだ。

「……………せいやと仰るのですね」

そう言い、星弥に歩み寄ってきたのは助けた踊り子少女杏菜だった。

「…………なに……?」

「お礼が言いたかったのです。助けただけでなく、コートまでかけていただいて………………今も仲間の負傷に何もできなくて悔しがっている……………優しいんですね」

優しい。その言葉はまるで翼に向ける優しさの感情のことを言っている、そうわかっているのになぜか楓佳を殴った罪悪感へと引っ張られた。

「……………………楓佳………殴って悪かった……」

「………ぼくも………ごめんなさい……」

謝罪しても尚、流れ出る気まずい雰囲気に痺れを切らした杏菜がある提案をした。

「こんなどんよりとした空気じゃ、手術してるみなさんも心配してしまいます! だから! 占いしませんか?」

「「「占い?」」」

「はい! 占いと言ってもみなさんの前世を見るんです!」

「「「前世?」」」

「あたしの独力(アビリティ)で見るんです! あたしの独力(アビリティ)過去視(かこし)は名前を言わせた後、手を握るとその人の前世が見えるんです!…………でも……あんまり役に立たない力で…………すみません……」

「いやいや、そんなことないよ。楽しそうな独力(アビリティ)だよ」

笑顔で呟く星弥を杏菜は真っ赤な顔で嬉しそうににまにまとしていた。

「じゃあ輪鼓ちゃんから見ましょ! 名前は?」

「輪鼓」

「手を」

差し出した手を握り杏菜の額近くまで持っていく。杏菜が目を瞑り数秒目を開けると杏菜はにこにこしていた。

「輪鼓ちゃんは前世シェフだったみたいだよ、綺麗なレストランを経営してて、予約必須の店みたい感じだったよ」

「シェフ…………わたし……今世でもシェフ目指そうかな……」

「……いいんじゃね? 輪鼓、料理うめぇし……」

「ほんと! じゃあ目指そうかな!」

嬉しさのあまり楓佳に飛びつきぴょんぴょんと喜ぶ輪鼓に明るい雰囲気が戻ってきた。楓佳は抱きつかれたことで照れくさそうにしている。

「次は、楓佳くんだね。名前は?」

「楓佳」

「…………………楓佳は前世……先生だね、小学生の担任かな」

「先生…………前世の俺は勉強できたんだ……」

スラム街に住む楓佳たちはもちろん学校に通うことはできない。字を教えてもらうのは基本両親だ。祖母のいる輪鼓に対し、楓佳の両親は亡くなっておりこれ以上教えてもらうことができない。

「今からでも勉強すれば大丈夫だよ、あたしが後から教えてあげる」

「ほんと?!」

「うん!」

「わたしも! 教えて!」

「いいよ」

「「やったー!」」

当たり前に学校に通い勉強する星弥には勉強をしたいと積極的に思ったことはほとんどない。めんどくさいが勝つ勉強にこれほど飛びつくとは輪鼓と楓佳の過酷な環境が伺える。

「最後はせいや、名前は?」

京極星弥(きょうごくせいや)

手を握り目を瞑った瞬間杏菜は別の世界へと転送されたかのような体験をした。広い花畑、そこには見たこともない花が生えており、下を除くとそこは宙に浮く場所だった。花に触れようとしたがとつぜん真っ暗になり現実世界に戻っていた。

「どうだった?! 俺の前世は?!」

「……………………何も………わからなかった…………こんなの………初めて……」

「……俺………平凡すぎて前世ないのかな……」

「いえ、前世の世界のような場所に運ばれたんですけど………人が誰もいなくて……花畑で……」

「花畑?! それってどんな?!」

顔を近づけてきた星弥に顔を真っ赤にしながら覚えている限りのことを話した。

……………見たことない花が咲く花畑………あの時の………ソラの夢と同じ…………もしかして………本当に……俺はソラの…………夫だった…………でも前世だろ?……………なんでソラはそこまで俺に()()するんだ………

「せいや! せいや! 大丈夫?」

「あぁ、ごめん、大丈夫……」








最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

なんとなくわかるかもしれませんが翼は独力と聖力を現在セーブしています。危機に陥った時しか使わないようにしています。これにはとある理由があるます。その理由は後ほど。また戦闘狂の翼は肩を撃たれた程度で倒れたりはしません。これもその理由と繋がっています。


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