47話 狐の少年
「その長の独力で反撃できないのです。独力獣使い。獣を意のままに操れる力です。わたしたち獣人は獣の血が混ざっています。そのためこの力の効果範囲に含まれるのです。この力を知る前反撃したのですが、ほとんどのものが自害させられました。わたしの目が潰されたのもその時です。それからこの力を持つ悪党の長はある薬をばら撒き、金儲けを始めたのです」
「……聖力増幅薬……」
「御名答です。力が弱く負けた私たちにこの薬は依存性が高く、執着し、薬の乱用で死ぬ者が今も絶えません。この国は国民ではもうどうしようもできないのです。お願いします。我々獣人をお助けください。救世主様」
「…………増幅薬があるとわかった今、利害は一致してますよね?」
絢斗に問いかけると渋々承諾した。
「………………はい」
「その願い協力します!」
「ほんとうですか? 有り難き幸せ……我々に手伝えることならなんなりとお申し付けを」
「でも、おばあさんの一存で決めていいんですか?」
翼の問に輪鼓がぴょんぴょんと飛び答えた。
「大丈夫ですよ! おばあちゃんはこの街の長ですから! 一番の長寿です!」
「「おぉー」」
「救世主様、ひとつ申し上げたいことが……」
「救世主様だなんて……俺は星弥、こっちが翼で絢斗さん、この猫がセレサ。名前で呼んでください」
「では、星弥様。あなたたち外人は見た目で侵入者とばれてしまいます。それでこれを」
差し出してきのは付け耳と尻尾だった。
「わぁー! つばさ似合ってる!」
「ありがとうございます。それにしてもなぜ狼なんですかー?」
「うーん……髪色的に? 絢斗もかっこいい!」
虎の耳と尻尾をつけた絢斗は尻尾をくるくると捻っていた。
「お褒めに預かり光栄です……星弥坊ちゃんもお似合いで」
「……………馬鹿にしてます?」
「いえ……」
「ちょっと笑ってるじゃないですか?! 狼! 虎! ときてなんで俺は犬?! もっとあったでしょ!」
「ふふっ! せいやお手!」
「しないから!」
「ふふふっ! あははっ!」
輪鼓につられて翼や絢斗も笑い初め、賑やかな雰囲気になってきた。その雰囲気を感じてか街の人間がこの家の様子をちらりと覗きに来ていた。その外で何やら怒っている少年がひとり。
「おい! 輪鼓! お前外のやつ連れてきたって本当か!」
「楓佳…………」
楓佳と呼ばれたその少年は狐の耳と尻尾を生やした獣人の子供だった。
「外のやつになんて頼らなくても! ぼくたちだけでなんとかなるっていつも言ってるだろ! お前らか外のやつらは! 出てけ!」
「これ! 楓佳! このお方々は我々に協力しても良いと言ってくださる優しいお方々じゃ! その方々に無礼じゃろ!」
「無礼? 外のやつが来なければ父さんも母さんも死ななかった! お前らもあの悪党の仲間なんだろ! なんで連れてきたんだ、こんなヤツら!」
「………確かに俺たちは外の人間だよ。けどあいつらの薬で俺の友達も辛いめにあったんだ。俺たちはその薬を止めるためにここに来たんだ。信用できないなら疑ったままでいい。でも俺たちを助けてくれた輪鼓を否定しないでほしい」
「せいや………」
「…………っ!………ぼくはぼくのやり方で悪党を倒す! 邪魔するなよ!」
楓佳は走って去っていった。その様子を見ていたスラム街の住人から拍手と喝采が起きた。
「すげぇ! あの頑固楓佳を言い返したぞ!」
「長が認めた外の者すげぇ!」
「みんな! いつからいたの?!」
「付け耳のあたりから見てたぞ」
「そんな時から?!」
「あぁ! 外の者! なんでも言ってくれ! この国を救ってくれるならなんでもする!」
「俺もだ!」
「私も!」
「! ありがとう」
スラム街の人の指示を得られた星弥たちは増幅薬を断つことに一歩近づいた。
「まず、増幅薬を断つなら作っている場所と建物の構図を知らなければなりません」
「……作っている場所はおそらく宮殿だな」
牛の獣人が悩みながら答えた。
「………宮殿だが……………宮殿内の地図はねぇよ…………手に入れる方法なら知ってる……」
「教えてくれ!」
「…………カジノだ……」
「……カジ…………ノ……絢斗さん……」
「どうされました?」
「ここに未成年が二人……」
「…………そんなもの気にしなくていいんですよ?」
なんか………絢斗さんがすっごい悪い笑みを浮かべてる……
「……そうですよね………今俺たちはこの国のお尋ね者……身分とか年齢とか関係ないですよねー」
翼もすっごい悪い顔してる……
「その地図の入手方法は?」
「……そのカジノのオーナーの部屋にあるとしかわからない……」
「それだけでもわかればなんとかなります。早速明日向かいましょう」
「了解です!」
「りょう…………かい……」
ほんとにいいのか………?
「おばあちゃん! 今日はお祝いにしようよ!」
「……そうだね」
「長が言うなら倉庫にある缶詰を出そう!」
「酒もだ!」
「お肉も!」
その夜、一日を生きるのに精一杯な獣人たちは苦労を忘れ去り久しぶりに酒に溺れ、盛り上がった。その輪の中心にいた星弥もあの悪夢を忘れるほど楽しんでいた。
『死ねばいいんだ!』
『死ね! 死ね! 消えろ!』
『お前なんか! 産まなければ!』
「はっ?! …………はぁ………はぁ……はぁ」
起き上がった星弥は酷く汗をかき、顔が青白かった。
………消したいのに………消せない……………もし………呪いが解けたとして……俺は家族の前で笑えるかな………きっと………無理だ……どうすれば………
「………んっ……………たすけ………て……せい……や………」
魘される声に隣を見ると星弥の服を握り眠っている輪鼓がいた。泣いているようで、涙を手で拭った。
「………助けるよ……」
あれから眠ってしまったのか気付いたら朝になっていた。隣で寝ていた輪鼓はいなくなっており、近くの質素な料理場で朝ごはんを作っていた。目の見えない祖母の手助けをしてるようだ。
「星弥さん、おはようございまーす」
「おはよう………なにそれ……」
翼が持つ籠の中にはたくさんのキノコが入っていた。
「街の方と一緒に山菜採りに行ってきましたー。美味しいらしいですよー」
そう言って翼が見せたキノコはどう見ても異彩を放つ毒キノコのような見た目をしていた。街の人いわく毒キノコではないようだが完全に見た目が某ゲームのキノコそっくりだ。
「いただきます!」
「「「いただきます」」」
「どうぞお食べ」
不気味なキノコの味噌汁にパンという和洋混合の朝食に困惑はしなかったが、問題は味噌汁の具だ。そう、例のキノコだ。
これ………食べれるやつ?…………死なない?……これ?
「このキノコ美味しいですよ!」
隣で食べる輪鼓はなんの躊躇もなく食べている。意を決し食べると舞茸のような味で美味しかった。
「……うまっ………見た目と違う……」
「このキノコは今の時期だけ赤くなるキノコなんです! 普段は色も茶色で、味は美味しいので大丈夫ですよ!」
「……赤の時は……ちょっと怖いな……」
キノコ問題も解決し、星弥たちは今日の夜に行くカジノの話になった。街の人にカジノに詳しい人がいたのでその人を呼び作戦会議を始めた。
「俺は半年前までここのカジノで働いてた。何も変わってなければオーナーの部屋は2階の奥にある。ここはカジノを回すボーイと盛り上げる踊り子がいる。とにかく運営側の人数が多くて監視の目も多い。変なことしたらすぐ捕まるから気をつけろ」
「そこまでわかれば3人で入れそうですね」
「あの、絢斗さん」
「はい?」
「俺カジノとか賭け事まったくわからないんですけど……」
「大丈夫ですよ、ルーレットぐらいなら誰でもできますから」
「はぁ……」
最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。
この獣人王国編と前回の聖力増幅薬編はある部分を書くために急遽作った章になります。そのため獣人王国編はかなり短いです。




