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43話 家族の絆

「…………ん…………」

起き上がった春音(はるね)が見た景色は最悪なものだった。体長10mほどある謎の化け物が建物を壊している。それを星弥(せいや)が剣で手足を切るが再生し、(つばさ)(よう)が火を放ってもまったく気にもせず人混みの方へとゆっくり休まず向かっている。

隣ではぼろぼろになった(つき)海夏人(みなと)が横たわっている。息はしているようだ。

「……………なに……あれ……」

一目見て確信した。あんな化け物に叶うわけがないと。きっとあれは大好きなお兄ちゃんだと。












葵春音(あおいはるね)。物心ついた時には両親は他界しており兄2人によって育てられたと言っても過言ではない。春音が中学1年の頃。街中で声をかけられた。

『君、可愛いね。これ僕の名刺』

『……どうも……』

『怪しがってる? 大丈夫だよ。僕大手事務所のスカウトマンだから。モデルとか興味ない?』

『……興味ないです』

『えーー?! 可愛いのにもったいないよ! それに有名になればたくさんお金入るんだよ!』

『お金…………それってどれくらい? マンション一部屋借りれる?』

『もちろん!』

『春音、モデルやります!』

『まじ?! 今撮影してるんだけど見学してかない?』

『します!』

そこで見たのは可愛い服を着た可愛い子がカメラに向かって可愛く撮影している姿だった。

『あの子は先週入ったばっかりの新人さんだよ』

『プロみたい……』

『君ならあの子より上にいけるよ』

『うん!』

その後桜井春音(さくらいはるね)として地道に活動を進めて中学3年生の時、モデル以外の仕事がきた。ドラマで主役の娘役。もちろんお金のために引き受けた。そしてその演技で春音は売れた。どうやら泣きの演技が視聴者の目にとまりネットでバズったらしい。その後は色々なドラマに映画、バラエティ、声優の仕事までやった。頑張ったのは全部お兄とお兄ちゃんのため。あんな孤児院を抜け出して3人で暮らしたかった。そんなお金のため頑張っている中ファンクラブ握手会というものが開かれた。ひとりひとりと握手し笑顔を振りまきながらめんどくさいなーと思っていた。そんな時同い年ぐらいの女の子が来た。

『あの! 春音ちゃん握手してください!』

『うん! いいよ、いつも応援ありがと』

『………はい! …………私、春音ちゃんに救われました…………私今はおしゃれして毎日楽しく過ごしてますけど……半年前までいじめられてました………ブスで地味っていうだけで……もう諦めたかけた時春音ちゃんが載っていた雑誌をみたんです……同い年なのにこんなに可愛くて自信もあって……私も春音ちゃんみたいになりたいと思って……頑張って化粧とか服とか研究しました。そしたら自分に自信を持てるようになって……私が今生きてるのは春音ちゃんのおかげなんです! 本当にありがとう!』

去っていく彼女を見て思った。春音はファンのおかげでこの立場にいる。それなのに春音は……春音がこの仕事をする理由は夢ではない。ただお金が欲しいそれだけ、だからファンも春音にとってはお金にすぎない。世の中の人間が働くのと同じ理由。モデルの春音は偽りの仮面、でもその仮面を喜んでくれるのなら全力で演じよう。それが春音がファンにできる最高の恩返しだから。











「お兄……お兄……起きて」

「…………はる………ね」

「うん……………一緒にお兄ちゃんを止めよ?」












(ネロ)!」

(トアノ)!」

翼と陽が聖力を放つが巨大化し化け物になった冬馬(とうま)にはまったく効いていなかった。翼が体内へと瞬間移動させたクナイもまったく効いていない。

「………お手上げだ……」

「…………待って……」

声をかけたのは春音と海夏人だった。

「海夏人……春音……」

「…………きっとお兄ちゃんはまだあの中にいる………春音とお兄で探すから…………探し当てた近くを攻撃して」

「……わかった……でも……どうやって……」

「春音の独力(アビリティ)を使う…………独力(アビリティ)浮遊(ふゆう)

春音と春音の手を握っていた海夏人が宙に浮かび、化け物へと近づいた。

「……お兄……」

「あぁ…………独力透視(アビリティとうし)……」

海夏人が化け物に透視を使うと腹のあたりに人間のような形の物体が見えた。

「見えた……京極(きょうごく)くん! 腹だ! ど真ん中!」

「あぁ!」

瓦礫を使い腹までジャンブした星弥は剣に火を纏わせ腹に切込みを入れた。切った傷口から冬馬が落ちてきた。それを瞬間移動(しゅんかんいどう)で翼が受け止める。

「お兄ちゃん!」

「冬馬!」

海夏人と春音が冬馬へと駆け寄り思いっきり抱きしめた。そして2人は泣いていた。

「……………春音? …………兄さん………?」

「もう! どこにも行くな! 心配させんなばか!」

「お兄ちゃん! いなくならないで!」

冬馬はやってきたことをすべて思い出したのかひたすら謝っていた。

「ごめん………ごめんなさい……」

安心しきっていた時、あの化け物が動きだした。しかも星弥たち目掛けて。

「はぁ?! なんでだよ!」

「陽さん! あいつに思いっきり(ネロ)放ってください!」

「無理だよ! さっき聖力使いすぎてもう出せないよ!」

3人が慌てていると見知った声が聞こえた。

「そんなに慌てて大丈夫? この水琴(みこと)様が助けに来てあげたわよ」

「水琴?!」

「はいはい、水琴様ですよ……………流石に私でもあれはきついわ………ということで助っ人を呼んどきました!」

「助っ人?」

カツカツと革靴の音を鳴らしてやってきたのは火卯我(ひゅうが)だった。

「さっさと倒そう……」

「りょーかい!」

「「(フォティア)」」

2人が放った火により化け物は燃え、跡形もなく燃えてしまった。

「一件落着ね!」

「なんでここに……」

絢斗(あやと)さんから連絡もらったの議事堂近くに化け物が出現したから協力して欲しいって、それで火卯我引っ張ってきてここに来たの! で、首謀者は?」

首謀者という言葉に全員が一斉に目を逸らした。

「さっさと答えてください事後処理があるんですから」

「………その…………あの……………………なんというか……………殺しちゃって……」

「「殺した?!」」

「違う! 殺したのは京極星弥じゃなくてお兄ちゃんなの!」

大声で場を制したのは春音だった。

「ごめんなさい! なんでもします! だからお兄ちゃんだけは見逃してもらえませんか」

「僕からもお願いします」

海夏人と春音は水琴と火卯我の足元で土下座した。体は少し震えているようだ。

「…………………はぁ……」

水琴のため息に2人の体がピクっと反応した。

「……………なーんだ、私が殺そうと思ってたのに」

「「「「え?」」」」

「え? じゃないわよ、悪魔信仰のやつはめんどくさい事考えてるから殺すって法律で決まってるのよ。もしかして絢斗さんから聞いてないの?」

星弥、陽、海夏人、春音は目を合わせた瞬間安心しきり地面に仰向けになった。

「悪魔信仰はほっておくと国を最悪な事態にする馬鹿な集団よ。500年前悪魔召喚して壊滅した国があってから世界的に悪魔は危険視され、悪魔信仰をするものは処刑になった。だからあんたのお兄ちゃんは国を守ったってこと」

「ほんとに?」

「ほんとよ! 罪人なんかじゃないから安心して………………そんなとこで寝転がってないでさっさと救急車乗って!」

こうしてこの事件は幕を終えた。









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きっとこの時の安心がいけなかった。














「俺さ………………ずっと認めてほしかったんだ……」

腕と足、体を包帯でぐるぐる巻きにされた冬馬が病室で口を開いた。彼は聖力(せいりょく)が低かったことにずっと悩み続けていたらしい。同じぐらい低い俺と仲良くなっても追い越され相当焦っていたらしい。この国は聖力重視の国、低いと見下されるのはよくあることだ。そんな焦っていた時に声をかけてきたのが喜多だった。

「いけないことだってわかってた……でもやっと…………みんなと並べられるって思って………嬉しかったんだ……………ごめんなさい……」

「…………確かにあれはやり過ぎよね」

パイプ椅子に座っていた月が足を組み呟いた。ちなみに陽の聖力は優秀だが1日3回しか使えないため冬馬に使い、それ以外は後日となった。冬馬は念の為検査入院をしている状態だ。

「でも1番悲しいのは同等と思われていなかったことね。私たち友達でしょ? 同等とか関係ない」

「聖力と独力で悩んでるのは俺も一緒だ。だからさそこまで気にしなくても俺たちはお前をいじめたりしないよ」

「星弥………月ちゃん………ありがとう……」

「そういえば翼くんは?」

「今日は予定あって来れないって」












自室のベットに腰掛けながら翼は外の景色を見ていた。咳き込み、口を手で覆った。手には吐き出したであろう血がついていた。

「……………くそっ……」













壊れた議事堂の奥深く腕を切られた喜多は這いつくばりながら依代があった研究室まで来ていた。

「あの………クソが! あいつさえいなければ! イビル様も生きておられたのに!」

切られた片腕から出る血で何やら怪しげな魔法陣を書いていた。

「俺の命も! 妻も! 娘の命も! 俺と血が繋がる全ての者の命をやる! だから俺の欲望に応えろ!」

光出した魔法陣から1人の青年が現れた。腰まで伸びた長い髪、カッターシャツの上から着物を羽織っている。極めつけは真っ赤な瞳にとがった耳だ。

「……人間に呼ばれたのは1000年ぶりだ………それにしてもお前……1度の召喚で30人もの命を捧げるとは俺様と同レベルのクズだな」

「……あぁ………………悪魔……様……」

「悪魔様か………そう呼ばれるのも随分久しい………お主の願いなんでも叶えてやろう」

悪魔は不気味ににやりと笑った。










最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

次回より新章に突入します。冬馬を狂わせた増幅薬の正体は後ほど判明します。

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