41話 依代
乗り込んだ車で絢斗から現在の話を聞かされた。
「今から約30分前、警察から神之橋に連絡が入りました。謎の物体と人間が暴れている。警察では対処できないので帝国部隊に動いてほしいとのことです。現在攻撃隊と聖力部隊が動いていますが、住民の避難を優先しなければいけないため敵を倒せていません。そこで貴方方に手伝っていただきたいのです」
「手伝うのは約束していたのでいいですけど……敵というか喜多は何を考えているんですか?」
「私の想像ですが、この帝国には巫女信仰があります。大抵の人間は巫女信仰ですが、少数派は悪魔信仰という者たちがいます。悪魔は欲望のまま生きる存在。その悪魔こそ人間は信仰すべきと考えている連中です。神之橋裕地郎が悪魔に取り憑かれていた事を考えるに悪魔信仰の連中はずっと依代を探していたと考えます」
「依代?」
「もしかしてご存知ないのですか?」
「はい……」
「悪魔って召喚するだけじゃないんですか?」
陽の質問に翼以外全員が頷いた。
「悪魔がこの世界に生身のまま存在できるのは数分です。それ以上過ごすには人間を依代としなければいけません。イビルが神之橋裕地郎を依代にしていたのもそれが理由です。まぁ、あいつはかなり昔から色々な人間を依代にしていたみたいですが、このような感じで悪魔信仰には神となる悪魔の依代を探さなければいけません。そのためずば抜けた聖力を持つものがいる。喜多は最初陽お嬢様を狙っていた。しかし、当主の入れ替わりで作戦続行が難しくなった。そのため政府を狙った」
「それだと政府を狙う理由がわからないわ」
月の指摘に絢斗が的確に答える。
「政府は悪魔が侵略してきたいざという時のために作れた依代が地下に眠っています。政府を一掃し、その依代を手に入れればこの帝国のトップになれたと言っても過言ではありません。つまり私たちは今から喜多たちを止め、その依代を守らなければいけません。悪魔召喚をされたら終わりと思ってください……長話をしすぎてしまいましたね……………………伏せて!」
「え?」
突如大声を挙げた絢斗。その命令のまま伏せると外から銃声が響いた。どうやらこの車が狙われているようだ。
「なんだ?!」
「喜多たちの仲間です! 皆さん! 思っていたより数が多い! 飛ばすので掴まっていてください!」
アクセルを力強く踏んだ絢斗がひび割れ、壊れた道路を全速力で駆け抜ける。瓦礫によって車が跳ねしがみついているのがやっとだった。
「やばい……酔う……」
「お兄吐かないでよ!」
全速力を出していた車のタイヤから空気が抜けるような音がした。
「しまった!」
慌ててブレーキをかけるが車が横転してしまった。どうやら銃の弾がタイヤに当たってしまったようだ。
「わっ!」
「痛っ!」
「ぎゃっ!」
横転した車の中では全員が地面の方向にぎゅうぎゅうになっていた。怪我をした者はいないようだが、どうやら車のまわりを敵に囲まれている。
「どうします?」
星弥が小声で絢斗に話しかける。
「……私とツバサ様が相手にしている間にみなさんで向かってください。ここを真っ直ぐ行けば議事堂です」
「了解です」
「ツバサ様、行きましょう」
「はい」
合図とともに飛び出した絢斗と翼が相手の顔面に蹴りを入れる。囲っているのは10人ぐらいだろうか。全員ライフルを構えている。
「ボスの言っていた奴らだ! 撃て!」
翼の剣術は何度か見ていたが格闘術を見るのは初めてだった。剣に見劣りしないほど敵を圧倒していた。弾を避け、正確に蹴りを入れている。絢斗も同様、聖力だけではなく素手でもかなり強い。2人が相手にしているうちに5人は車から脱出し、真っ直ぐ議事堂へと向かった。
「だいぶ片付きましたね」
「はい……一応息の根止めときます?」
翼が懐からクナイを出し倒れていた敵の喉へと向ける。
「とても良いご提案ですが……監視の目があります……やめておきましょう」
「はい、俺たちどうします? 星弥さんを追いかけますか?」
「できれば追いかけたいですね……ですが」
絢斗が言葉を濁した後2人のまわりに増援の車が数台到着した。中から出てきたのは先程同様ライフルを持った喜多の仲間だ。翼がクナイを構える。
「追いかけるのはまだまだ先のようですね」
「問題ないです、こんな雑魚すぐ終わらせます」
殺さないようクナイの反対側を使い気絶させていく。絢斗も同様できるだけ殺さないようにしている。
「ツバサ様! 悪魔以外は絶対に殺しては行けませんよ!」
「わかってます! 逆に悪魔だったら殺してもいいんですよね!」
戦っている翼はどこか楽しそうだった。人によっては恐怖を感じるだろう。しかし戦う姿はまるで女神のように美しい。
圧倒的な強さであっという間に増援すらも倒してしまった。最後の一人の首元にクナイをあて脅す。
「目的を言え……」
「……うっ……」
男は翼のあまりの怖さに尋常ではないほど怯えている。
「……早く」
「わからない! ただこっちに向かってくる奴を全員足止めしろとしか言われてない!」
「ほんとか?」
「ほんとだ!」
「……はぁ……絢斗さん、こいつらはただの下っ端です」
「そのようですね」
「無視して行きましょう……おい! じじい!」
「ひっ!」
「増援呼んだら殺すぞ」
翼が男を睨みつけると男は重なった怖さに遂に気絶した。
「……遠くねっ?!」
「星弥折れるの早い! まだ先は長いわよ!」
車から脱出し星弥たちは走って議事堂へと向かっていた。しかし走っても議事堂の姿が見えない。
「京極……くんの……言う……通り! ……遠い!」
「お兄息切れるのはやっ?!」
「しかた……ない……だろ……僕……運動……苦手……なんだ……」
よかった……仲間いた……
「あと少しだよ! 頑張ろ!」
陽が4人に向かって満面の笑みで応援をする。その笑顔か神のように神々しく、後光が見えた。きっと全員が心の中で神と思っただろう。
「ほら! 見えてきたよ!」
見えてきたのは立派にそびえ立つ議事堂、と思っていた。しかし見えたのは煙があがり半壊しかけている議事堂だった。
「「「「はぁぁぁ?!」」」」
議事堂の姿を目撃した陽以外の4人は口を揃えて驚きの声をあげた。
「ちょっ! 壊れてるんだけど?!」
「こんな中入れないわよ!」
「おニューのローファーだったのに!」
「京極くんどうするんだ! このまま突っ込んだら瓦礫の下敷きになって死ぬぞ!」
「それでも! 入るしかない! その覚悟、あるだろ!」
「もちろんだ! 愛しの弟のためなら!」
「お兄ちゃんのためならローファーなんて気にしないから!」
ローファー……
春音の言葉に呆れつつも5人は壊れかけた建物の中に入った。
「とりあえず依代を探さないと……星弥、念の為剣創って」
「はいはい……扱いが雑……」
創った短剣と銃を月に手渡す。ついでに自分の剣と陽と海夏人、春音に護身用の剣を創り渡す。
「喜多たちを探しながら、依代さがすとか無理では?」
「うん、星弥くんの言う通りだね。二手に別れた方がいいかも」
陽の提案により二手に別れるチーム決めをした。結果は、
「なぜ俺が葵兄妹と3人チーム……」
「だってこの中で一番実績あるの星弥でしょ? イビル倒してるし、2人を守りながら戦うなんて余裕でしょ?」
「月さんでも良くない?」
「私は陽を守りたいから、じゃあ頑張ってね!」
あいつ……楽な方をとりやがった……翼と絢斗さんいなくて結構きついのに……
「京極星弥……」
「はい?」
「春音たちのことは守らなくていいから、自分の身を守ることはもう慣れてる……あんたは自分のことに集中しなさい。お兄は春音が守るから」
「何言ってるんだ! 春音は僕が守る!」
「運動苦手なお兄に春音を守れる訳ないじゃん。お兄は死なないことだけ考えてればいいの!」
「…………うぐぅ…………はい……」
海夏人………かわいそう……
最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。
久しぶりの投稿ですみません。さぼってました。
ちなみにお気づきかと思いますが葵家は春夏秋冬が入ってます。冬馬、海夏人、春音です。きっと末の子は男の子だったら秋斗、女の子だったら秋菜だったかもしれません。




