39話 探偵
今までの夢とは違った。ソラと出会う夢は起きると汗だくで不快な夢そのものだった。しかし、昨日見たソラと旦那様と呼ばれた人の夢。あの夢は不快ではなかった。むしろ感じたのは幸福。あの空間に負の感情は一切感じられなかった。きっとソラはあの幸せをまだ求めているのだ。
なぜか頬に一筋の涙がこぼれ落ちた。
前回の騒動で学校が半壊してしまい、しばらく授業はオンライン授業となった。授業が終わったあと翼の家に集まり騒動について話し合っていた。
「ほとんどの薬を若者に無料で渡してる?」
「うん、ここ最近起きた騒動を色々まとめてみたんだけど……この地図に赤マークで示した所が暴走騒動が起きたところ」
星弥と翼が、陽のスマホを覗き込む。
「ここがなんですかー?」
「この場所8割が学校なの……」
「まじか……ほとんど無料で渡してることになるな………」
「あとこの暴走騒動にはパターンが3個あるの……1つは薬と適合した場合。この場合主な変化はなくただ聖力が上がって普通の人間として過ごせる。2つ目は適合しなかった場合。これが私たちが学校で体験したパターン」
「あのゾンビみたいなやつか?」
「うん、その暴走化的なのにも2つパターンがあって、1つはゾンビみたいに凶暴化して人を殺そうとする。もう1つは薬を含んだ瞬間マグマのように溶けて死ぬ。このパターンだと溶けた熱で家が火事になることが多い」
「……最近ニュースで見る火災って……」
「きっとこの薬が原因でしょうねー、それでもう1つのパターンとはなんですかー?」
「……もう1つは……火卯我たちが想像したことなんだけど……暴走の力をコントロールできる人がいるかもってこと……」
「なんでそんな想像を?」
「……ニュースにはなってないけど……最近政府の要人が暗殺されたの……それも今月で8回も……」
「……この国の要人は聖力や独力の発動を検知するセンサーを各部屋や家に取り付けています。この国で暗殺することができる人はほとんどいません。それに護衛が1人はついてるはずです。そんな簡単にできるとは思えない……」
いつになく真剣に話す翼に驚く2人だが、ある抜け穴に気がついてしまった。
「もしかして暴走の力は聖力も独力も関係ないのか……?」
「多分そういうことだと思う……」
「確かに……それなら変装して入れば絶対バレない……特に人が多い所なら尚更……そうなるとこの帝国中全員が怪しくなりますねー」
「……俺たちの目的は翠雨の中にいる薬使用者の発見だ、まずは翠雨の中をなんとかしないと」
「でも星弥さん、絢斗さんはきっと翠雨の中の一人が何かを知っているから調べてくれとお願いしたと思いますよー。その結果はこの帝国から聖力増幅薬をなくすことに繋がります。つまり俺たちの仕事は薬の大元を探せということです」
「………まじ?」
「はい 、まじでーす」
星弥が突然塞ぎ込み陽が驚く。
「あーーーっ……間接的に帝国を救えと……」
「きっと星弥くんが信頼されてるからだよ!」
「俺そこまで絢斗さんと喋ったことないって……待って……学校半壊したから探すの無理なのでは?」
「それが大元の狙いですねー、バレそうになったから潰し…………」
突如言葉を詰まらせた翼に2人が首を傾げる。
「翼くん?」
「いくらなんでもタイミングが良すぎる……もしかしたら……大元は適合できる人とできない人がわかっている……そして適合できない人を好きなタイミングで暴走化できる……」
「?どういうことだ?」
「俺たちが遭遇した暴走は突然起こった訳ではないんです……誰かの手によって意図的に起こった……大元は暴走化するパターンはどちらでも良くて邪魔するやつを徹底的に遠ざけています。つまり俺たちが探そうとすると大元は向こうから来てくれる可能性があるってことです」
「最悪のパターンだ……会いたくないのに……」
「遠ざけても無駄ですねー」
「遠ざける……………」
遠ざける。その言葉で星弥はある一人の友人を思い出した。なぜか聖力が増幅している友。そして独力の話になると突然話を逸らし、遠ざける友。
「……気づきたくなかった……」
「星弥くん?」
「星弥さん?」
きっとあいつはこんな時でも学校にいる! 真実に辿り着くならあいつから話を聞くしかない!
星弥は翼の家から飛び出し一人で学校へと走っていた。学校に着くと規制線の貼られた門の前に2つの人影があった。
「海夏人!」
「京極……くん?」
「なんで……あいつ!」
人影の正体は海夏人と春音だった。
「春音もいたならちょうどいい」
「なっ?! 春音を付属扱いするな! というか呼び捨てするな!」
「お前たちの兄弟について話が聞きたい」
「………それは……」
「できないとは言わせない無理やりにでも吐かせる……翼」
「はい」
瞬間移動で現れた翼が海夏人と春音の後ろに立っている。
「連れてけ」
「了解でーす」
肩に触れると瞬間移動し、そこは先程まで話し合っていた翼の部屋の中だった。そこにはロープを持った陽の姿があった。
「ごめんなさい!」
翼が海夏人、陽が春音を取り押さえ、ロープで足と手を拘束した。
「離せ!」
「すみません……星弥さんの命令なので」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息を切らした星弥が翼の部屋へと戻ってきた。
「おかえりなさい星弥さん。すみません俺の独力星弥さんだけ使えなくて」
「大丈夫……もう慣れた……」
それにしてもこの力なんだろう……独力は武器創造がある……聖力とは思えない……他の独力や聖力を打ち消していることはわかる……けどこいつの正体がわからない……
「離せ! アホ! バカ! スーパーモデル春音をこんな惨めな目に合わせて、ただで済むと思うなよ!」
「春音! 落ち着け! 刺激するな!」
「別に殺そうとしてる訳じゃない……ただ聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「あぁ……冬馬の聖力について何か知ってるか?」
「知ってるとして春音たちがお兄ちゃんのこと言うと思ってんの?!」
「……知ってる……」
「ちょっ?! お兄?!」
「知ってる……けど! 俺たちは知らないふりをしてきて、見ないことにした大馬鹿野郎だ……」
「……お兄……」
「きっと……知ったら俺たちを軽蔑する……」
躊躇う海夏人を心配そうに見ている春音と比べ、翼は若干イラつき始めていた。
「……軽蔑なんてしないよ……」
ボソッと呟いた陽が海夏人と春音と目線を合わせる。
「私たちは冬馬くんを救いたいの……だから教えて」
真剣な目をした陽を見た後、少し躊躇い海夏人がようやく口を開いた。
「わかった……話そう……冬馬のすべてを……そして俺たちの秘密を……」
最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。
定期的に報告しますが、翼は真剣な話の時は語尾などを伸ばしません。つまり翼が伸ばさない時は危機的状況か真面目な話をしているということです。
私の小説の場合誰が喋っているか書かれていない箇所が多くあります。それは話し方でわかるかなと思い省いています。またわざと省いている部分も多くあります。




