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37話 文化祭後編

「犯人は……あなただ! 伊藤真司!」

「違う! 俺じゃない!」

「嘘をついても無駄だ、お前の指紋が検出された。言い逃れはできないぞ!」






「中々面白いな」

「そうだね、流石(つき)ちゃんだね!」

文化祭2日目の朝、月脚本の劇を見に来ていた。推理グロいもの好きの月が脚本したことにより、若干グロ要素があるが素人とは思えないできだ。

(つばさ)? 顔色悪いけど大丈夫か?」

「大丈夫……です」

翼は3年に進級してから少し変わった。変わったと言っても性格や態度という訳ではない。真っ黒な長袖のハイネックを着用し、真っ黒な薄手の革手袋を身につけるようになった。以前着ていたパーカーはやめたのか、首元までぴっちりと高校指定のカッターシャツを着ていた。6月の蒸し暑い中この服装、体調が悪くなるはずだ。

「すみません……席、外します……」

「わかった」

星弥(せいや)(よう)が心配そうに翼を見送る。

「大丈夫かな……最近顔色悪いこと多いよね……」

「そうだな……」

何かあっのか……聞いても答えてくれなさそうだけど……

劇に戻ると、いつの間にか終わっており、片付けに入っていた。扉の前で怒っている月とそれを宥める冬馬(とうま)がいた。

「なんで外にいるの! 最後まで見てよ!」

「ごめんごめん、翼が体調悪そうだったからさ、一応外に出るの見送ってて……」

「ふーん……それならいいけど……面白かった?」

「あぁ、面白かったよ」

「ほんと! 良かった〜……ちょっと心配だったの」

「俺的にも流石月ちゃんって感じで面白かったよ! これはB組が劇部門優勝だな!」

「何言ってんだよ、C組に決まってる」

「いやB組」

「C組だ」

星弥(せいや)と冬馬が何やら言い合っているとドゴッ!と大きな物音がし、建物が揺れた。

「なんだ!」

体育館にいた全員が慌てていた時、1人体育館に駆け込んで来た。

「大変だ! 何か大きな未知の生物が暴れるらしいぞ! 」

「なんだよそれ!」

「写真取りに行こ!」

「早く逃げよ!」

体育館は、学校はパニック状態だった。音は少しずつ近づいており、星弥たちも校外へと逃げ始めた。

「逃げるの?!」

月が星弥を止める。

「当たり前だ! 未知の生物だぞ! 危険すぎる!」

「でも! まだ中に人が!」

「まだ助けられるかも……行こ! 星弥くん!」

(よう)を、友達を危険な目に合わせたくない……どうすれば……

「俺も行きます」

「翼?!」

いつの間にか星弥の後ろに立っており4人一斉に肩が跳ねた。

「びっくりした!」

「すみません……まだ校舎内に残っている人が多数います。行くなら早く行かないと建物が崩れ始めますよ」

「……うっ……行こう……」

悩みに悩んだ結果助けに行くとことにした。星弥はなんやかんや押しに弱く、面倒見がいい。何より人助けという言葉に弱い。

「俺は1人で大丈夫なので星弥さんたちは2人1組になって救助に当たってください」

「それなら私は(あおい)と行くわ、前の戦いで連携してたからやりやすいわ」

「じゃあ俺は陽と行く」

「負傷者は私の独力(アビリティ)で治すから教えて!」

「それじゃあ行くぞ!」

「「「「了解!」」」」

星弥の合図と共にそれぞれが散っていった。星弥と陽は2階、翼は3階、月と冬馬は1階の救助に当たることになった。



2階フロアに辿り着いた星弥と陽が目にしたのは瓦礫に下敷きになってしまった多くの生徒だった。所々に火災の跡が見える。急いで瓦礫を取り除くが殆どの生徒の生命は途絶えていた。

「……生存者を見つけよう……」

「……うん」

未知の生物は外に逃げた生徒を追いかけているようで校舎には見向きもしなかった。壁に寄り掛るようにして倒れていた生徒はまだ息があった。

「陽! この人まだ息がある!」

「任せて」

陽が被害者の腕に触れると身体中の傷が癒え、目を覚ました。

「……ありがとう……」

「どういたしまして」

「起きたところで悪いが立てるか?」

「はい……」

「今から裏の出口に逃げるんだ。表は変なのがいるからダメだ。俺たちは他の生存者がいるか確認してから行く。早く行け!」

「わかりました、本当にありがとうございす」

助けられた少女は怖くて震える足をなんとか抑え、裏出口へと向かった。星弥たちは引き続き捜索を始める。しかし、生きている者はほとんどいないようだ。突如、陽のスマホから着信音が鳴る。画面には遊冥(ゆうめい)お父さんの文字。

「もしもし?」

『陽! どこにいる!』

「学校だけど……」

『まさか! まだ校舎内なのか!』

「うん……」

『そうか……救助中だろ?』

「なんでわかったの?!」

『君たちはどんな状況でもそうすると思ったからだよ……話は変わるが頼みたいことがある』

「待って、スピーカーにする」

スピーカーのボタンをタップし、星弥にも聞こえるようにする。

『いいか、今から現れた生物を倒す。火を使って倒すつもりだ。陽には消化をお願いしたい。ただし、水の塊をぶつけると校舎にも被害が出る。そこで打ち上げて雨のようにしてほしい。火を使うまで残り10分だ。それまでに救助を終わらせ外に出なさい。いいな』

「わかった、ありがとうお父さん」

『気をつけるんだぞ』

通話を終わらせ、3人に連絡を入れ、スマホをポケットにしまう。

「あと10分だ、早く探そう」

「うん!」

しかし、いくら探しても、確認しても死者ばかりだ。漂う血の匂い、煙の臭いが死の臭いを感じさせる。ふと、下へ続く階段の方向から物音がした。お互いが目を合わせ、物音の正体を確認しに行く。すると、ドロドロに溶けた人間だったような者、ゾンビのような者が襲いかかってきた。

「きゃっ!」

「くそっ!」

咄嗟に剣を創り、首を切りつける。しかし、倒れたゾンビ生物はもう一度起き上がり、2人に襲いかかっくる。どうやら大きな未知の生物が放った分身のようだ。2人はもう1つの階段目掛け逃げる。

「何、あれ!」

「わからない、けど逃げないとまずいのだけはわかる。兎に角逃げよう!」

陽の手を引っ張り逃げるが目の前にもう1人のゾンビ生物が現れた。挟み撃ちされてしまったのだ。

どうする……陽の聖力は温存しとかないと遊冥さんの頼みを実行できない……俺の剣は通用しない可能性が高い……

陽を庇うように窓を背にしていると、突如外から声がした。

「伏せてください!」

陽を下にし、伏せると窓ガラスを溶かす程の火が放たれた。その火はゾンビ生物を燃え尽くす程の火力だ。

「陽お嬢様、ご無事でいらっしゃいますでしょうか?」

火を放った人物は火に似合う、真っ赤な着物を着用していた。

「大丈夫……星弥くんが守ってくれたから」

「無事でいらして何よりでございます、星弥お坊ちゃんありがとうございます」

お坊ちゃん?!

「いえ……大したことでは」

「誠にありがとうございます。危うく遊冥様にお叱り受けるところでした」

にっこりしてる……遊冥さん……娘を溺愛してるからな……敵に回すと怖い……

「それでは脱出いたしましょう、陽お嬢様、こちらの火お消していただけますか?」

赤い着物着た青年が燃えたゾンビ生物たちを指さす。

「わかりました、(ネロ)!」

水を放つと火は鎮火し、残ったのはゾンビ生物の残骸だけだった。

「早く階段に向かわないと! 崩れますよ!」

星弥が着物を着た人物に促すと、着物を着た青年は陽と星弥を脇に抱えた。

「「え?」」

「舌を噛まないよう、口を閉じていてください!」

着物を着た人物は3階の窓から2人を抱え、飛び降りたのだ。

「きゃーーー!」

「わーーーっ!」

何事もなかったかのように綺麗に着地し、2人を素早く降ろした。すると外にいた体長2m程の生物目掛け、手を銃の形にした。

「………ばん……」

小さく声を上げた瞬間、生物に巨大な火が引火し燃え上がった。燃える中からは気味の悪い断末魔が聞こえる。

「陽お嬢様! (ネロ)を!」

「はい! (ネロ)!」

大きな水の塊を空に打ち上げると、大粒の雨が大量に降り注いだ。無事火は消火し、事件は一旦解決した。多くのパトカーと消防車が到着し、学校には規制線が張られた。

「星弥さん! 無事ですか?!」

突如現れた翼に星弥がまたもや肩を跳ねさせる。

「……俺も陽も無事だよ」

「よかったです、俺たちは生存者の確認をしたあと、すぐ避難したんです。星弥さんたちが全く降りてこないので心配でした。でも、本当に無事でよかったです」

「そんなに心配しなくても、それにあの人が助けてくれたから」

「あの人って誰のことですかー?」

「あの赤い着物を着た……」

絢斗(あやと)さーん!」

どうやら星弥は初対面だが、翼は知り合いのようだ。翼が手を振ると絢斗と呼ばれる青年はこちらに近づいてきた。

「お呼びでしょうか?」

あれ? そういえばなんで自己紹介してないのに俺の名前知ってたんだ?

「この方が前話していた星弥さんでーす」

「はい、ある程度理解していましたよ。初めまして、星弥坊ちゃん。私は、神之橋遊冥様の執事兼護衛をしている、火焚絢斗(ひだきあやと)です。以後お見知りおきを」

跪いた絢斗は、星弥の手を取り自身の額に当てた。それはまるで翼とした誓いにそっくりだった。

「私は事故の後処理が残っておりますので、失礼します」

一礼して去ろうとした際、絢斗が立ち止まり何かを呟いた。

「もし、この事件が気になるようでしたら、いつでも神之橋邸へいらしてください」

天使のような優しい笑みを浮かべた絢斗は警察の事情聴取の協力へと戻った。

「星弥! 何ぼーっとしてるのよ!」

月に体を揺さぶられ、気づくと4人が心配そうに見つめていた。

「星弥大丈夫か?」

「大丈夫?」

「大丈夫……考え事してただけだから」

「それならいいけど、今日は学校継続不可だから帰っていいそうよ。まぁ結構壊れてるから今後どうなるかわからないけど、とりあえず帰りましょ」

冬馬に手を引かれ星弥たちは帰路に着いた。しかし、星弥の中にはある靄がかかり、事件の謎を深めさせていた。


最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。次回更新は8月になります。


火焚絢斗

遊冥の護衛兼執事をしている。色々と謎が多い。現時点では多くの謎に包まれている。

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