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卒業|〇七

退院から約一か月が経った。そして今日は軍大学卒業の日。

石造りの大広間に集められた第13期卒業生67名。

華やかに装飾された窓、柱、壁。

それらを拝めるのは厳しい試練を乗り越えた生徒、その両親か

国のごく一部の上層部。

総理大臣を筆頭とした内閣の面子、軍参謀本部の高級将校。

そして国の頂点である陛下。

荒葛は最初で最後のこの景色を拝んだ。

列の前から二番目に並び入場した際には21世紀を知る私からしても

それは素晴らしい景色だった。

黄色の光で満たされ、壮麗な装飾は輝き、両親や将校による拍手の音。

小学校や中学校なんぞとは比べ物にならない。

入場し順に並び終わると総長による名前の読み上げがあったり

来賓による祝辞があったりとそれは普通の学校と変わらなかった。

だが祝辞が陸軍、海軍の大将、中将だったり大臣だったり

総理大臣が賛辞を述べたりとレベルが違った。

「今回は戦時下につき陛下の御出席されておりません。」

…いたらさすがに驚きだ。

「最後に第一三期卒業生六七名の首席、

羽田はた 駿次しゅんじ学徒に内閣総理大臣より

花紋刻短剣が授与されます。」

アナウンスが流れると首席の羽田が壇上へと上がる。

そして総理より主席に短剣が渡される。

それを最後に式は終了した。


「これで卒業か。あんまり実感がわかないな。」

式が終了し、そのあとの諸々の作業を終えた後、

久しぶりの実家への帰宅を海士と辿っていた。

「最後は大体あっさりしてんだよ。なんでもな。」

そう言いながら俺は前世での事を思い出していた。

小学校、中学校、高校。流行り病のせいもあったのだろうが

卒業式はあっさり終わった。

終わった後もこれで終わりかと思うだけで

周りのように泣いたり、写真を一緒に撮影したりしたことはなかった。

「と言っても、来月からは俺らも戦場に行くんだよなぁ。」

海士の言葉に急に俺の意識はこっちに戻される。

「漢登南部の島を帝国海軍が占領したらしいし大規模攻勢でも

するのかねぇ。」

「あと大体四ヶ月で二年経つのか。

そろそろ大本営もけりをつけたいんだろう。

ていうか海軍に関してはお前実家から情報貰えるだろ。」

そういえば海士は牟奈瀬家出身だった。

「海軍のお偉いさんが身内にいるんだからなんか知ってるだろ。」

「いや俺特機希望だしあんまり聞いてないぞ?」

「…まぁいいや。となると俺らも漢登戦線行きかな。」

漢登の全土は帝国の十数倍もある。

一人で何人も倒す火力と制空権さえとっていれば

地形を気にせずに素早く移動できる機動力を

持ち合わせた特機兵は数を減らすならもってこいの兵科だ。

「じゃあまたな。」

「おう。」

俺は簡単な挨拶で海士と別れ自分の帰路についた。

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