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軍大学|〇四

あれから数年経ち今では特別機械化軍大学四年生となり、人生は順風満帆。

予想通り大陸の国家である漢登人民国との戦争が一昨年始まり、

皇国は国家総動員法を敷き完全に戦時体制に移行した。

この世界でも列強諸国による漢登に対しての武器貸与レンドリース

同国による対皇国経済制裁も行われた。

「大まかな歴史はこの世界でもあちらと一緒か。」

軍大学の成績が上位10位の

新穿組しんせんぐみ」に与えられる個室で呟く。

元の世界ではいわゆる「歴史オタク」に分類される存在だった。

そんな彼には世界史、特に世界大戦辺りの歴史は全て脳内に存在した。

それから得られる情報の結果は一つ。誰もが知る結果。

敗戦だ。

列強諸国による物量と長期にわたる経済制裁、無理な戦線の拡大。

そして軍部によるあまりにも無謀な作戦。その結果生まれたのが

誰もが知る特攻などという負の歴史だ。

最後は広島と長崎に。

だが大まかな世界史は共通しているが細かな部分が違う。

それは術者の存在が大きいだろう。

そうだ細かな部分は違うのだ。

必ずしもあの世界と同じようになるとは限らない。

小さな歯車のズレはやがて大きな歯車のズレとなるように

この世界も元の世界とは違う運命を辿ることになるだろう。


「おっと、もうそろそろ講義が始まるな。

遅刻したら教授が怒るし、全く厳しいのは性に合わんな。」

規律の多い軍大学は自由の国にいた俺にとっては合わないことも少なくなかった。

だがここを卒業、しかも学外でも名の知れた

「新穿組」というランクを背負って卒業すれば

軍大学最後の実践形式の訓練の成績によっては

最初から准尉というキャリアコースを進むことができる。

「とりあえず講義出るかー。」

気怠そうな声を出しながら、教科書や筆箱などの

授業に必要なものをトートバッグに入れ

簡単な身支度を整え部屋を出る。

この時代からすると先進的な技術で作られた廊下は

他では見られない装飾が施された敷物や

強い光を放つ照明器具は2023年の人間だった俺も驚くほどだ。

ちらほら生徒が見られるが

中には低級の武人勲章を身に着けた生徒もいる。

本来軍大学は戦場で武功を上げた兵士が上官の推薦を受けて入学する。

勲章を授かるほどなら軍大学に入らない方がおかしいとさえ言える。

戦術や参謀用務、語学を学ぶ軍大学は

高級指揮官や高等参謀、上級将校を目指す者には

絶対に行かなければならない場所だ。

ここを卒業したかどうかで

今後の軍人としての人生が決まるといっても過言ではない。


「お前ら授業始めるぞー。防衛学163頁開けー。」

授業が始まり生徒全員が帳面に黒板の内容や重要事項を書く。

黙々と授業が進み時間が過ぎていく。

たまに教授が生徒に質問し答えるなどという

元の世界と同じように授業が進んでいく。

「この地形の場合この位置にある拠点三つを防衛するときどう兵を展開すればいい。

では…斎藤はどうする。」

当てられた生徒は起立する。

「はい!前提として与えられる各兵科の数を教えていただきたいです!」

「では、歩兵七千五百、砲兵千二百、工兵千五百、

戦車は四十両、特機兵は三十二だ。」

厳しめの条件を出してきて生徒は少し悩む。

「第一拠点は最も大きいので北部にある緩やかな地帯に

歩兵を三千、砲兵七百、工兵六百、戦車十五両を配置します。

残りの兵で進軍してくる敵軍を横から割り込み敵を分断します。

南部、東部は傾斜が激しいので歩兵三百、砲兵五十ずつ配置します。

西部は第二拠点と直接繋がる道があるので

上部の道に工兵四百で地雷を設置します。

歩兵二千三百で防衛します。

第二拠点自体は全方位傾斜が激しいので歩兵三百と砲兵百で防衛します。

第三拠点は傾斜の緩い南部と西部に

歩兵四百、砲兵百、工兵百五十、戦車五両をそれぞれ配置。

これらの軍は遅滞戦術を仕掛け耐えます。

残りの歩兵二百、砲兵三百、工兵二百、戦車十五両、

特機兵三十二で第一拠点、第三拠点、第二拠点の順で

攻める敵軍を各個撃破します。」

「よろしい、穴はかなりあるが基本をしっかりと踏んだ戦術ではある。」

どうやら合格はしたようだ。生徒はほっとしたような顔をする。

「では先程の斎藤の意見を踏まえて…」

淡々と授業は進んでいく。

時には的外れな回答をして教授に過剰と思えるほど怒られるが、

今回はセーフだったようだ。

(もう少しで最後の実戦演習か。それでもう卒業、思ったより短かったな。

でも前線勤務嫌だなー、はー…。)

そんな考えをしている内に授業は終わり、

生徒は憂鬱な気分になり机に突っ伏していた俺を

ちらほら見て出ていく。

(もっと「俺TUEEEEEE!!!」系になれる異世界に生まれたかったな…。)

そんな希望は叶うこともなく夢のままに終わるのだった。

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