最前線の日常|二〇
轟音、爆音が響き渡るこの地は漢登戦線。
人の絶叫は更に大きい絶叫で掻き消え、それすらも爆ぜる音で掻き消える。
先月から大陸本土に設置された漢登派遣軍は南部方面への進軍を決定した。
北漢登方面軍と南漢登方面軍、アムール共和国に駐在している東方軍を
統括する総軍として編成された派遣軍により各々独立していた指揮系統は統一され、
大陸内部の遷都先である西媛を目指す事になった。
そんな中、現状打開の為に投入された部隊が一つ。
「迫撃砲部隊だ!中隊、突っ込むぞ!」
「中隊長!敵特機小隊規模で近隣区域を航行中!」
ここは漢登戦線の最前線空域である。
戦争において重要になる要素、それは兵站だ。
補給が足りなければ物資、人員という勝つために必須の要素が欠けることになる。
海路、空路、陸路の様々なルートがあるが
整備も未発達な大陸内部に補給を行うには陸路が望ましい。
その中でも最も優れているのは状況にもよるが鉄道だろう。
だが優れているものにはなにかと不便が付き纏う。
線路だ。
鉄道は線路がなければ動くことのできない無能へと成り下がる。
逆に言えば線路さえあれば無能は崇められるほどの有能になる。
弾薬、食料、燃料を管理し効率的に分配する補給結節点から伸びる鉄道は
長期的戦争において必須でる。
そして現在はその無能を有能に変える作業の最中である。
赤桐貞治を頭に編成された16人の第417皇国特機中隊は
地上部隊の援護任務に当たっていた。
そんな中で荒葛は第二小隊の隊長として参加していた。
「第二小隊、敵特機を抑えてくれ。その間に他は敵迫撃砲部隊を引き倒すぞ!」
「「了解!」」
荒葛は小隊と共に敵反応を確認した空域へ急行する。
新型の特型装備はすこぶる調子がいい。
法器は九型と既に型落ちなりかけのものだが
噴進器に供給される術式を行うのに必要な新通力の流れは
前の十四号特型装備よりも滑らかに動く。
「流石十五号改、加速がいい。」
新装備の性能に満足しつつ小隊を率いて移動する。
「07から05、敵特機目視、数6、高度三四〇〇を二ー二ー〇に向かって移動中!」
「全員、貫通術式よーい!…ってぇ!」
一斉に発射、赤い閃光が四発流星のように発射される。
閃光は敵の防塞術式を貫き、噴進器部分に命中。
新通力の流れに異常をきたした噴進器は暴走してそのまま爆発四散した。
小隊各員の弾も命中し、撃墜確実3、他1も制御を失ったらしく落下していった。
残り2となった敵小隊は勇敢にもこちらに突っ込んできたがそれは蛮勇というものだ。
自小隊は無慈悲に爆裂術式を叩き込んだ。
「05から01、敵小隊の沈黙を確認。こちらの被害はなし。」
「こちら01了解、第二小隊も地上を叩くのに参加してくれ。」
承諾し、高度300まで地上に接近する。
もはや迫撃砲や高射砲の破壊任務には慣れた。
日々、多くの敵兵装を削っているがそれでも量は多い。
爆裂術式を起動し、照準に入れ引き金を引く。
文字だけであれば簡単だが速度を出しながら正確に照準するのはかなり難しい。
だが火砲があれば歩兵の進軍も遅れる。歩兵の進軍が遅れれば線路の敷設にも遅れる。
幾らか火砲を沈黙させる。途中高射砲の弾幕はあったが防塞術式で防ぐ。
基本的に防塞術式は攻撃される面にだけ発動する。
攻撃のたびに全面発動していると新通力の消費量が馬鹿みたいに増えるからだ。
飛ぶだけで消費するのに無闇に有限なリソースを削るのは馬鹿という他ない。
歴戦の特機兵は攻撃点にピンポイントで防ぐらしいがそんな芸当到底できない。
中隊の方も無事に戦果を挙げていた。だがもう夜になる。
「潮時だな。」
夜間戦闘用にこの装備は作られていない。航空機と一緒である。
飛べないことはないし、攻撃もできるが単純に視界の問題だ。
並みの視界強化の術式では満足に飛べはしない。
「こちら01から中隊各員へ、今日はもう帰投の時間だ。即刻基地へ帰るぞ。」
中隊無線から承諾の意が聞こえ、
散らばっていた各小隊が第一小隊の元へ集まり巣へ帰る。




