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軍令部総長|一九

大陸西部風の建物とこの国特有の建築技術を組み合わせた美しい外観と

他を圧倒する極限まで追求された機能美を組み合わせたここは皇国海軍軍令部。

その建物の一室にて葉巻を燃やし燻ぶらせながら煙を吐く男が一人。

「ふぅ…。矢張り合衆国産の葉巻は格別だな。

わざわざ取り寄せた甲斐があったというものだ。」

吸っている途中にノックの音が三回。

扉の外から「井野忠義です、入ります。」

許可を出す。

扉を開けて一人の男が入ってくる。

「どうかしたかね、次長。」

今部屋に入ってきた眼鏡を掛けたこの男は井野忠義軍令部次長。

裕福な家に生まれ、父の跡を辿るように海軍へ入った。あるべくしてなったような経歴だ。

「陸軍はようやく漢登へ攻勢を仕掛けるそうです。

陸軍運輸部から輸送船と艦隊の派遣が要請されました。」

「輸送船は最大限協力してあげたまえ。艦隊は…後ほど協議しよう。」

「承知しました。しかし本当に1941年までに降伏させられますかね。」

その顔には不安と疑問が募っている。

「してもらわなければ困る、でなければ…」

葉巻を灰皿に置く。そして口角を少し上げる。

「私の戦争が始まらないからな。」

「あなたの戦争です…か。今でも私には私はあなたが分かりませんよ、軍令部総長。」

そうだ、この足を組み、膝の上に手を丸め置く部屋の主こそ

第14代軍令部総長である牟奈瀬浦仁むなせうらひと

代々海軍の家である牟奈瀬家当主であり、家柄を一躍させた張本人である。

「これは悲願なのだよ、次長。」

「悲願ですか…。合衆国との戦争があなたの願望だと。」

合衆国との戦争。彼にとって人生最大の悲願。

「酷い御方だ、自らの願いの為に何十万何百万の命を巻き込むつもりだ。」

「そうだとも、次長。

それが地獄への片道切符だとしても私はそれを車掌に切ってもらうのだ。」

一瞬の沈黙が部屋に流れる。

「では、私はこれで失礼致します。」

「うむ、では退出してくれたまえ。」

井野が扉を開け退出する。

そして扉が閉まる直前に浦仁は呟く。

「そうだ、これは悲願なのだ。私の130年の野望なのだ。」

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