談話|一四
「お、帰ったきたか。」
黒井に解放された後に基地の談話室的なところに行くと海士に声をかけられた。
「なんだ海士。喧嘩でも売りに来たか?」
説教のあとは機嫌が悪くなる。
少しだけ喧嘩口調になってしまう。
「無茶したらしいからな、赤桐さんから聞いたぞ。」
「なんだお前も説教か?勘弁してくれよ。」
流石に一日に三回の説教は胃もたれする。
「そんなつもりは…ない。」
少し間があったような気がする。
「あるんじゃねーか。」
「いやーそんなつもりはホントに無いんだが、まぁお前には長生きして欲しいからな。」
少し照れながら言うその顔にはもはや怒りすら覚える。
「なんだお前…少し気持ち悪いぞ?」
顔が良い奴にこんなことを言われると何故こんな怒りが湧くのだろうか。
「いやー長年一緒にいるがこういうのは流石に照れるな。」
「え、ほんとに急にどうした?軍医に診てもらうか?」
気付けば怒りはいつの間にかどこかへ行き心配へと変換されていた。
初陣で頭を打ったりしたのだろうか。今思えば降下の時に後ろからゴンという音を聞いたような気がするし。
「大丈夫だって。それよりもう大丈夫か。」
「なにが?」
「もう説教の事気にしてないよな。」
いつの間にか忘れていた。
意外と人間の脳は雑だなと思う。
「まぁ、長生きはしろよ、人間生きてなんぼだからな。」
「そうだな…。生きてなきゃなんも出来ないしな。」
「そうだぞ、じゃあ今日は疲れてるだろうしもう寝ろ。」
そう言って自分の部屋に戻っていく。
こんな時間だけが過ぎればいいのにと思いつつ水を飲み干す。
そんな思いとは別に未来は最悪の方向に向かっていく。