突入|一一
ーモンゴー・オルス上空付近 輸送機ー
あの顔合わせから二日後、特機兵三個中隊が複数の輸送機で大陸の半島に渡り
輸送機の補給と作戦説明が済み次第今回の戦場へ出撃となった。
今はもう一個中隊を収納した輸送機の中にいる。
初めての正式な戦闘が始まろうとしている。
それなのに手の震えどころか荒ぶる心もない。
新しい装備の十七号特型装備か十型法器のどちらかにこころの落ち着きを促す機能でもあるのかと思うほどだ。
一方隣にいる海士はほんの少し手が震えているように見えた。
「大丈夫か?」
「あぁ。もう…大丈夫だ。」
そうは言っているが実際のところ未だに手の震えは止めっていないように見える。
無理もあるまい。なんせ海士は試験で実戦を経験した俺と違って正真正銘、初の戦闘なのだから。
そんな姿に影響を受けてか心なしか俺の手も震えているように感じた。
そうこうしていると操縦席の方から声が聞こえた。
「もうすぐ作戦空域に突入します。ご準備を。」
その言葉を聞いて機内の全員が降下の用意をする。
「後部ハッチ開け!」
大隊長がハッチに近づき作業員に命令を出す。
そして部隊員に振り返り告げる。
「これより作戦空域へ突入する!目標は制空権の確保と地上部隊の支援だ。
それでは中隊!出撃する!!」
開かれたハッチより隊員達が次々と降下する。
そしてすぐに俺の番が回ってくる。
「…よし!」
その一言と共に輸送機を少し蹴り飛び立つ。
数秒経つと装備を起動し飛行態勢をとる。背中に乗せた装備の下部は赤く光り体は前へ進む。
少し出力を上げ先に進んでいる部隊と合流しようとする。
横目で後ろを見ると海士の姿が見えた。
その姿にほんの少し恐怖を覚えた気がした。なぜは俺はこの時長くの時を共にした友を恐れたのかこの時は分からなかった。
俺はこのことを今でも悔やんでいる。