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漢登戦線|〇一

「進軍!!進めぇ!!」

何重にも重なったライフルから発せられる銃声と兵士たちの雄叫び。

不規則に発射される榴弾砲。少数の戦車の駆動音。

砲弾の空気を切る音と数秒遅れて聞こえてくる爆発音。

ここは漢登からと戦線と呼ばれる戦場。又の名を「地獄の戦場」

皇国と呼ばれる極東に位置する国「大和帝国」の主戦線。

そこでは毎日人が死に、人が人を殺している。戦場では普通の光景。

だが一つ異質な存在があった。


「こちら〇まるさん!〇まるろく戦域〇まるふた区画高度六七〇〇敵特機兵大隊規模で一〇ひとまるよん方向に浸透中!!」

「っち!〇三そっちの隊で遅滞戦闘だ!こっちが片付いたらそっちに行く!!」

「了解!持ちこたえてやりますよ!!」

「他の隊聞いたな!すぐに片付けるぞ!!」

「「了解!!」」


戦場で人が飛んでいる。航空機に乗っているわけではない。

人が何かに乗っているわけでもないのに空中を飛ぶ。

彼らは特殊機械化兵、略称「特機兵とくきへい」と呼ばれる存在。

機動力、火力に優れる兵。列強と呼ばれるほとんどの国がこの戦力を

保有するほど強力な一手となる存在。

その存在はその戦場の戦況を劣勢から優勢に覆すほど。


砲弾に混じって人が飛んでくる。

しかもその弾は一回爆発するだけでなく何回も爆発する弾を

飛ばしてくる。なんなら荒らすだけ荒らして自軍に帰って、

傷の応急処置が済んだらまた飛んでくる無限ループ。

それが60程飛んでくる。敵からしたら恐怖の対象でしかない。


そんな存在が歩兵などの戦力にとってどれほど嬉しい援軍か。

「特機兵の援軍が来たぞー!!」

その一声と共にその場にいる兵士たちの士気が上がる。

最低レベルまで下がっていた士気は一瞬で

最高レベルまで引きあがる。


先程の敵を壊滅させ一息つく。

「まったく、これほど期待されては我々が負けたら

全員尻尾巻いて逃げるんじゃないか?なぁ諸君?」

そんな言葉は隊の笑いを生み出す。

「そんなこと言ったら負けれないじゃないですか。責任重大ですな?」

隊の一人がそんなちょけた言動をするがここはれっきとした戦場である。

本来ならそんな余裕などどこにも無いはず。

だが彼らにとってここは自分たちの名声を広める場所でしかない。

「では諸君、思う存分獲物を狩りたまえ!行動開始!!」

「「了解!!」」

ただでさえ敵の特機兵は数が少なく、対空兵器も少ない。

しかも敵の首都を攻撃している今、

こっちに充てれる敵の特機兵は数少ない。

精度の低い対空兵器など警戒する必要などないし、

敵特機兵による妨害がないこの戦場において、

彼らを止めるものは何もない。

「言い忘れていたが今回我々がここに派遣されたのは

他の戦域より敵の数を減らすためだ。

よって各員の固有術式の使用を許可する。」

無線越しでも隊員のガッツポーズが見えてしまうのは気のせいだろう。


固有術式。一般的な術式の「式」と呼ばれる部分は法器に組み込まれあとは

術式発動の意思があれば「答え」術式の効果が発動する。

しかし固有術式はその当人しか使えず、法器に組み込むこともできない。

固有術式を持つものは特機兵の中でも一部に限られ

実用できるものに限ればさらに数を減らす。

そんな実用化固有術式は大抵のものが一般術式より強力。

その力は一騎当千。

だが法器に組み込めない固有術式は自分で一から「式」を組み立てねばならず

発動するのに時間がかかってしまう。


「では第一中隊、我々も狩るとしよう。全員爆裂術式を用意だ。」

元気よく了解と帰ってくるその声にはこちらも安堵する。

そのすぐ後には全員急降下する。

ものすごい速さで降下するが隊列は全く乱れていない。

長い期間戦場を共にした彼らの動きは一つの物体として見違えるほどだ。

有効射程距離内に入った瞬間、爆裂術式の弾を撃つ。

爆裂術式はその名の通り着弾地点を中心に爆発する。半径4メートルまで爆発する

エネルギーはすさまじく、低位の防御術式では良くて腕が吹き飛ぶほどの威力。

そんなものを生身で受ける地上の歩兵に耐えられるわけがない。

そんな術式を16人が一斉に撃つのだ。50人程度が一瞬で吹き飛ぶ。


だが

「人の量だけが取り柄の相手にはこんなもの毛が一本抜かれた程度だろうな。

仕方ない、使うか。」

怠さを感じさせる言動だが今から行うことは真逆もいいところだ。

「友軍に通達。音と爆風に注意されたし。」

その言葉と同時に固有術式を発動させる。

瞬時に体の周りに多くの魔法陣が浮かび上がり、球を描くように移動する。

肩に乗せていたライフルを構える。ライフルの周りにも覆うように魔法陣が浮かぶ。

「空間位置把握、友軍位置把握、出力設定、重力影響予測。」

呼吸を整える。肩の力を抜く。

「発射」

トリガーを引く。

射出された弾丸は凄まじい光を発しながらものすごい速さで進んでいく。


敵上空で爆発。

それと同時に辺り一帯が吹き飛ぶ。熱火球が生成され、()()()()が生成される。

煙が晴れた後にはクレーターしか残らないほどの威力。

これが彼の能力。核分裂の能力。要は原子爆弾の原理を使用する能力。

だが放射線は出さず、爆発の能力だけが抜き取られ使用されている。

しかしこの世界では原子爆弾はまだ存在せず、

核分裂という考えは確立されていない。

それでも威力は他の術式の追随を許さないほど。

「今ので数百か、全く嫌なものだ。

前世とはいえ自分の国に落とされたものと同じようなものを自分が使うとはな。」

その言葉には他の言葉には含まれない怒りの感情が含まれていた。

彼、第二一七特別機械化大隊隊長「荒葛あらかつ 伏見棍ふみつえ」は

西暦2023年の日本の人間だ。

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