ONE DAY①
(瑞稀……瑞稀!)
環、優里、ののか、舞星の想いがひとつになる。
サビの繰り返し、瑞稀のボーカルが力強く響く。
環は思う。こうかな? 違うな、もう少し……ここか。そのとき、環は知った。瑞稀が環の演奏しやすいように寄り添ってくれていること、優里がしっかり合わせてくれていること、ののかがどれだけサポートしてくれていたか、そして舞星が悪役になってまで言いたかったこと……。
(ああ、こんなにも気持ちのいい空間があったんだ)
環は知った。瑞稀の、いや、瑞稀、優里、ののか、舞星のおかげで、かけがえのないものを失わずに済んだことを。
曲が終わり、環は、ギターをスタンドに立て掛けると、崩れ落ちた瑞稀の元へ行き、そっと強く抱きしめる。
「瑞稀、大丈夫。うちらはどこへも行かへん。ずっとそばにおるからな」
優里も二人を抱きしめて言う。
「そうやで。うちらはずっと一緒や」
瑞稀は「うん」と頷く。
それを温かく見守るののかと舞星。
そして天を仰ぎ、ののかは言った。
「表現者は、自分の人生をすべて糧にするとはいえ、この現実は残酷すぎる」
環は瑞稀を抱きしめながら思った。
――これは、天国のお母さんへのラブソングだ――
演奏が終わっても、アナウンスは次のバンドの紹介ができなかった。それは実行委員会も照明や音響、そして観客たちも同じだった。
環たちの曲が衝撃を与えたのでも、その技量に魅せられたのでもない。彼女たちにそんな技量はない。普通の高校生バンドだ。
この会場にいるすべての人は、瑞稀に、そして環に、優里に、ののかに、舞星の持つ熱量にあてられたのだ。
ただの高校の、いち学園祭。そこで演奏された曲を聴いた人はいつか忘れてしまうだろう。だが、演奏した五人の胸にはいつまでも残っている。
たとえ、離れてしまっても、心の鼓動がある限り。




