収集癖
何とも珍妙な男だというのが、千鶴が尊に対して抱いた印象だった。作り物のように美しい外見をして、鏡花にも並ぶくらいの実力を肌でひしひしと感じるのに、表情や口調は至ってにこやかで温和だ。どこかお道化てさえいるように感じる。
「千鶴さん。俺が出る?」
いつの間にか、千鶴の背後から抜け出た芳文が、体格に似合わぬ大振りの日本刀を持って言った。
「いや。芳文。君の手には負えない。俺がやるから、残り二人を頼む。第一の甲二人だけれど……」
「手負いだ。問題ない」
答えた直後、再び、千鶴は弾き飛ばされた。店に下りたシャッターにもろに背中から激突する。まただ。また、攻撃が見えなかった。尊が何かしているのは間違いないのに、まるで大人相手に翻弄される子供のように、成す術がない。尊自身は、取り立てて何かをしているという様子も見せず、抜刀すらしていない。相変わらず、読めない笑顔でにこにこしている。歌声が響いた。神楽耶だ。芳文は既に宗太郎たちと交戦中。神楽耶の歌は攻撃相手を選り分けることが出来、千鶴の援護に回っていた。即ち今は、尊含めた宗太郎たちへの攻撃。目覚めない眠りに誘う為の。
「明子の歌以外に興味はない。君も星一つだね」
尊が、ようやく動きらしい動きを見せた。とは言え、右手をくるりと回しただけだ。しかしそれだけの仕草で、神楽耶の歌を打ち消したと千鶴には判った。剣戟の音が途絶えない。芳文は善戦しているようだ。ここで自分が不甲斐ない真似を見せては示しがつかないだろう。
「時刻み・烈」
尊は優雅に一礼した。
それだけだった。血の一滴も流れない。時の異能への戦法としてはあり得ない、涼し気な表情で尊は佇んでいる。
「時の異能は少し厄介だけど、〝今まで集めたのから〟何とかなるんだよね」
そう言って、尊はようやく抜刀した。それからの動きは凄まじかった。神楽耶の体術と、千鶴の体術を一人でいなし、請け負った。その間も、彼のにこやかな表情は毛一筋ほども変わらない。恐るべき剣術の技に、時の異能を発動する余裕もない。千鶴は芳文の戦況を窺う。当然だが、押されている。撤退するべきと千鶴は判断した。この男の強さはばかげている。鏡花でさえ、しのぐのではないか。
「神楽耶、芳文!」
名前を呼ばわり、撤退の意思を伝える。芳文は少し悔しそうに顔を歪めたが、素早く宙へと飛翔した。神楽耶もそれに続く。千鶴は、彼らの退却を見届けてから退く積りだった。だが、そこに隙が生じた。瞬息で迫った尊が、千鶴の胴を薙いだのだ。もう暮れた空の藍に、対となるような鮮血が噴き出る。
「く……、」
千鶴は何とか空高く逃れると、六番頭歓楽街を後にした。
「逃がしちゃった。大目黒千鶴だけでも殺しておきたかったんだけどな」
数秒、千鶴たちの去った空を眺めていた尊は、血を拭って納刀し、後輩たちを振り返った。出血が激しいのを見て、初めてにこやかな顔の柳眉がひそめられる。
「思ったより出血してるね。先に治しておこう。二人共、ちょっと待ってね。鏡花ちゃんほど上手く行かないけど。……えーと、これだ」
複雑な手印を切る。白金の柔らかな光が生じて、宗太郎と卓を包んだ。出血が止まる。
「ま、こんなもんでしょ。どう? 楽になった?」
「はい、先輩。ありがとうございます。それも〝集めた一つ〟ですか?」
「そうだよ。ねえ、ちょっと頑張った後だしさ、久し振りに飲みに行かないかい?」
尊は美麗な顔を笑ませた。
面白くないのは鏡花である。戦闘の気配を感じ取り、駆けつけてみれば、既にことは終わっていた。しかも男三人、これから飲みに行くと言う。尊のみぞおちに拳をめり込ませた。
「おふ!」
「久し振りに顔を合わせたと思ったら、私は除け者か、尊……!」
「だって鏡花ちゃん、未成年だし」
「奥方が身重なのだろう。飲み歩いて良いのか。それでなくとも遠征先から帰ったばかり。早く顔を見せてやれ」
「だから少しだけだよ。明子にはもう連絡したから。鏡花ちゃん、寂しいかもだけど、宗太郎をちょっと貸してね?」
そう言って鏡花の頭を撫でる。傍目には見目麗しい兄妹のような絵柄なのだが、機嫌の悪い鏡花は殺気に近しいものを振りまいている。じっと尊を睨んでいたが、やがてふう、と息を吐いた。
「二人を危険に晒したのは私の落ち度だ。尊。……すまなかったな。明子さんのほうには私が顔を見せよう。ゆっくりしてこい。飲み過ぎるなよ」
「それだから鏡花ちゃんってば好きだよ~~~~~!! 星五つあげちゃうっ。およよ」
ひしと鏡花を抱き締めた尊を、そこは譲れないとばかりに引き剥がしたのは宗太郎だった。
宗太郎・卓・尊「「「……」」」
尊「なあにこれ。どうして僕たちこんなとこいるの? バーに行く予定だったよね?」
宗太郎「作者の都合だそうです」
卓「出たっ。創造主の横暴!」
~生ビールが運ばれてきました~
卓「枝豆追加でー」
宗太郎「この作品、打ち切るんじゃなかったのか」
尊「ねー。僕、びっくりしちゃったもん。だってさ、『鴉ヶ谷尊、現着』ってかっこよく言った途端に『お疲れ様でした☆』だよ。なくない?ここからが天才異能力者の活躍ってところで、何考えてんだ、あの作者は!星一つだよ星一つ!まむまむ(枝豆食べてる)」
宗太郎「まあ、色々あったみたいですよ。すいませーん、唐揚げもー」
尊「色々って?」
宗太郎「詳しくは前回の後書きで。まあ、中学生時代に四国お遍路さん巡りに行こうとした奇人ですから。すいませーん、唐揚げまだですかー」
卓「渋いぜ……。それで、何で再開する気になったんだよ」
宗太郎「続きを読んでほしい人がいるとかレビュー貰ったとか。あ、鴉ヶ谷先輩のでなくて」
尊・卓「「ああ~~~~~~~~レビュー~~~~」」
尊「レビューね。まさに瀕死の物書きにとって起死回生の螺鈿総譜ね」
卓「先輩、上手い! で? その螺鈿総譜はどんなんだったんだ?」
宗太郎「開けてないから解らない」
尊・卓「「はあ!?」」
宗太郎「アンチレビューだったらどうしようとか、神々し過ぎて開ける気にならないとかなんとかぐだぐだ」
尊「何、そのチキン~~~~」
宗太郎「あなたは鴉ですよね」
卓「食べられないっすね、残念。ああ、そう言えば鴉ヶ谷先輩の名前に苦労するとも言ってましたね」
尊「へ? 何で? とっても素敵で良い名前!!☆」
宗太郎「自分で言うのが先輩ですよね。単純に長ったらしいかららしいです。まあ、俺たちも『からすがやつせんぱい』って、長くて言いづらいんですよね。烏山先輩とかに改名しませんか」
尊「やだよ! じゃあ、尊先輩でいいよ、呼びなよ。僕ってフレンドリーだからそういうのありよ?」
卓・宗太郎「「作者に却下されました」」
尊「なんでさ!?」
宗太郎「やはり異能課の〝鴉〟と言う点を印象付けたいと。鴉先輩じゃどうです? 作者は執筆仲間と話す時、そうしてるらしいですよ」
尊「僕の尊厳、軽んじられすぎじゃないかな。豚バラ、ベーコンアスパラ巻き三本ずつ~」
宗太郎「程々にしとかないと、次回のバーで本飲みですよ」
尊「宗太郎。よくお聴き。僕くらいのイケメンになると、胃袋も並みより大きいんだよ」
宗太郎「いや、鏡花じゃないんですから。にしても先輩、作者のお気に入りですよね」
尊「そう? やっぱり? 激つよで激美で人間も良く出来てるからかな?」
宗太郎「……えーと、いや」
卓(豚バラに食いつきながら)「作者のまったり温泉旅行先で、鴉ヶ谷先輩のアイデアが降って来たそうですよ。で、鴉、爆誕☆」
尊「何それ。温泉行かなかったら僕いなかったの? それじゃ作品として薄過ぎるでしょ」
卓・宗太郎((薄いって言われた))
宗太郎「……でも、気を付けてくださいね、先輩。この作者は、大好きでたまらないキャラは殺してあげなくてはならない、という歪んだ思考の持ち主ですから」
尊「フラグ立てないで、宗太郎!! 登場したばっかよ!?」
~電話が鳴る~
卓「あ、はい。わっかりました~。はい、延長はなしで」
宗太郎「結局、カラオケで誰も歌いませんでしたね」
~みんなで室内を片付ける。禎允を除く異能課の実力者トップスリーは顔も知られており、品行方正な行いが求められる~
尊「いや、この店、味が良いよ。ドリンクも悪くなかったし。宗太郎、僕の割引券あげるから、今度、鏡花ちゃんと行っておいでよ」
宗太郎「……そうですね」
卓「あと、作者がお前のこと、〝宗タオル〟って打っちまう時があるってさ」
尊「タオルwwwww」
宗太郎「何だよ、最後に来て俺がいじられ役かよ! それ言うなら卓、お前だってなあ、作者から〝テーブル〟呼ばわりされてるからな!」
尊「ああ、卓、卓上とか言うよね。テーブルwwwwwwwひー、腹筋死んじゃうwwwwww鴉、ここで栄誉の戦死wwwww」
宗太郎「栄誉って何ですかね」
卓「てか、後書きが本文より長くなっちまってるじゃねえかーーーーーーーー!!!!」
尊「まあ、それは仕方ないにしても、作者の推しの『コトノハ薬局』も、こんな感じと思われたら少し困るよね」
宗太郎「大丈夫じゃないですか。あっちはあっちで、ばっちりこちらの影響を受けつつあるそうですよ」
尊「それって、大丈夫なの? あ、でもその内、混合で後書きとかしないかな? 僕、劉鳴さんと剣術勝負したーい」
卓「また、そういう読んでない人にはわからんことを。天才剣士同士で双方討ち死にしたら洒落になりませんよ」
尊「むー。赤ん坊の顔を見るまでは死にたくないなー」
酔っ払いたちは鴉に先導され、第二会場に向かう。




