崩れたその時に
私の名前は三竹依里。引っ込み思案なオタク女子大学生である。私には幼稚園の頃からの親友と呼べるリカと美智恵がいる。
リカは明るくてとても可愛いタイプ。小学校、中学校、高校と学校で一番モテる男子と付き合い、、、ことごとく振っている。立派な小悪魔系のギャルへと進化を遂げている。
美智恵は頭が良くて凄く美人。小学生の頃から雑誌のモデルやアイドル活動に近い事をしている。努力家であり、それを鼻にもかけず周囲にも私にも気遣いができ非常に優しい。そして主にリカへの突っ込み役。リカの突飛な提案にうまく修正を入れ、無難なものへの昇華してくれる。
こんなカースト最上位の親友2人であるが、小学校、中学校、高校、そして現在大学と、3人すべて学校が違う。それにも関わらず、私達3人の集まりを他の誘いや用事に優先してくれており、その頻度も週5~6回と非常に高い。
近所に住んでいるので、放課後に私の家に集まり、平日であるのにお泊り会…もとい寝落ちで朝を迎えた事もしょっちゅうあった。母はそのような時でも「もう…しょうがないわねぇ。」と笑ってくれるが、教師の父は私に無関心なようであまり関わってこない。私は父が苦手では無いが接し方が分からない。兎にも角にも私のような陰キャにとってはリカと美智恵は掛け替えのない親友なのである。
大学に入りまだ3カ月程のある土曜日の夜のこと。3人のグループ通話。開口一番にリカから
「ちょっと欲しい香水があるから明日、駅ビル行くよ。朝12時に依里ちゃんの家集合ね。」
「ふふふ。12時は朝じゃないわよ。私は空いてるけど、依里ちゃんは予定、、大丈夫?」
と美智恵がリカへ突っ込みをしつつ、私を気遣ってくれる。
「えへへ。私は大丈夫だよ。2人は忙しいんじゃないの?」と私が聞くが、リカと美智恵はこの3人の集まりを優先してくれているようだ。大学だけの話ではなく、これまでも学年が上がるごとに交友関係が変わり、2人と疎遠になるんじゃないかと心配していた私には今も続くこの関係がとてもありがたかった。
翌日リカが少し遅れて家にやって来る。
「じゃあお母さん、いってきます。夕方には帰るから。」
「いってらっしゃい」
父は自宅にいるが自室にいる。玄関口まで見送りに来てくれた母に挨拶して、バスに乗り4km程離れた駅ビルに向かう。女子3人が集まれば姦しい。主にリカが。周りの乗客が怪訝そうな顔でこちらを見てくる。ただでさえリカと美智恵は目立つ存在なのだ。私は陰キャモードを発動させる。声のボリュームを抑え、相槌をうつ程度にしておき、なるべく目立たないよう心がけておく。そして店舗が数十と入っている6F建の駅ビルに到着。さっそく1Fの化粧品・香水売り場に。リカがずんずんと先陣を切って進んでいく。
「この香水が最近人気あるみたいなのよね。ほらSNSで有名なかみち&エリ夫婦が勧めてたから。試し嗅ぎをね。」
「試し嗅ぎって…。何か意味は分かるけど嫌な響きね。試す…だけで嗅ぐはいらないんじゃない?飲むわけじゃないし。あとテイスティングとも言うわね。」
「テイスティングなら飲んでんじゃん!」
売り場でもリカと美智恵の小気味良いやり取りが続く。リカの気になっていた香水は良い香りだったが、、、
「う”う”ぅぅ~~ん。4800円かぁ。絶妙に手が出ない金額ぅ。ねぇ3人で共同購入にしない?」
「それ結局リカしか使わないやつだよね!確かに良い香りだけど。」
「ね!フローラルな良い香りだよね。でも私はつけていく場所が無いかなぁ。」
店員さんがちらちら見てくるけどゴメンなさい!結局買いませんでした。
「バス代を損したくないから色々見て回ろっか」
「バス代分を損とか、考えた事の無い発想ね」
「えへへ、私は2人と居れて楽しいよ」
化粧品のテナントを出てからもリカ主導でどんどん進む。
ペットを誰も飼ってないのにペット用品売り場に入ったり、寝具売り場で枕やベッドの硬さだけ確かめたり、階を上がっていく。そして5Fのフードコート&ゲームコーナーにやってくる。私はお昼ご飯は食べていたが小腹が空いていたので
「私ちょっとフードコートでうどん食べてくるね。」と伝えると
「依里ちゃん、ほんとちっちゃい頃から良く食べるよね」
「じゃ私達はゲームコーナーでメダルゲームしてるから。」
と、リカと美智恵はゲームコーナーの方に向かう。私はフードコート内のうどん屋のおっちゃんにうどんを注文する。2時過ぎでフードコート内はまばらにしか客がいないので、すぐに注文のうどんが提供される。1番の番号札っていらなかったよね絶対。
長机の端にポツンと座り「いただきます」と、一口目をつけたぐらいに、美智恵が1人でやってきた。私が問いかける。
「あれ、美智恵どうしたの?」
「リカはメダルゲームに熱中してるし、私もちょっと小腹が空いちゃったから久しぶりにここのたこ焼きでも買おうかな~って来たの」
美智恵が私に告げて、そのままフードコートの粉物店に入る。しばらくして美智恵が戻ってくる。私の座っている隣の席を指して
「私もこの席で一緒に食べていい?」
と聞いてくるが、手にはたこ焼きを持っていない。
「たこ焼き買わなかったの?あ!さては私のうどんを狙ってるな。残念。もうあと一口で食べ終わるよ」
「うふふ」
美智恵が隣の席に座りながら笑う。
「そっかぁ。美智恵はモデルとかやってるからそう食べたいもの食べられないよねぇ。」
「別にそんな事は無いんだけどね。結構食べたいもの食べてるわ」
そして美智恵はリカがメダルゲームをしていた様子を伝えてくる。
世では奇数の人数を嫌う人もいるが、私達3人は幼稚園以来仲が悪くなることはもちろん、気まずくなったことも記憶に無い。離れていても行動を共有できている感覚があるのは美智恵が間に立って、活発なリカと私を繋いでくれるからだろう。
「リカったら、メダル出ない時は店長出せ!って喚いてたのに、メダルが大量に当たった時には、これ全部500円玉だったら香水買えるのに…だって。どういう思考回路なのよ。」
「えへへ。リカっぽいね。」
と、リカの話をしていると、向こうのゲームコーナーから大きな声で
「おーーーい!」
リカが手を大きく振りながらダッシュで近づいてくる。
「食べ終わったぁーーー?」
ちょっと恥ずかしい。でも嫁にしたい。
「あ、うん。食べ終わったよ。」
「私もメダル預け終わったからさ。じゃあさ、じゃあさぁー、3人でプリ撮ろうよ。ゲームコーナーのところに新台入荷してたよ!何かすっげぇ白いやつ」
「リカさぁ、パチンコ店じゃないんだし。あと、語彙力!」
「えへへ」
3人で合流して席を立ち、ゲームコーナーに向かって歩き出した。その時
グラリ
「揺れた…?」
ドゴォォォォォォォ!!!!
ガシャン!パァン!ガタガタガタ!「きゃぁぁぁ!!」グルングルン!パリィィン!「うわぁ!」ジリリリリリ!
大きな揺れ。重量のあるものが落ちる音。硝子が割れる音や悲鳴に警報音が重なる。
バチンッ!
さらに停電。
昼間とはいえフロア中央であるので相当に暗い、近くにいるはずのリカと美智恵の顔もはっきりと分からない程。
メキメキメキッ!!
立っている地面まで動き出す。それから斜めに滑る感覚。転がる。浮遊感。その間は頭を手でかばい丸くなっている。そしてどこかに体中を打ちつける感覚。そして意識が一旦、途切れる。
「ん…、依里ちゃーん、ぐすん、、依里ちゃーん!」
リカの声が聞こえる。目を覚ましても真っ暗。「あれ、何があったんだっけ」と一瞬考えるが、まずは返事。
「リカちゃん…?近くにいるの?」
「良かったぁ…、ぅぅぅ、依里ちゃーん。依里ちゃーーん!」
「依里ちゃんそこにいるの?怪我は無い?大丈夫?」
美智恵の声が、リカと同じ方向から聞こえる。そうだ地震?か何かがあったんだ。
「うん。ゴホゴホッ!埃っぽくてなんかはさまれてるのか動けないけど、怪我は無いと思う。どこも痛くないし。リカと美智恵は一緒にいるの?怪我はしてない?」
と私は問いかける。
「ぐす…私は大丈夫。依里ちゃん良かったぁ。」「うん大丈夫。私はリカと一緒にいるよ。2人とも怪我してない。」
私だけ瓦礫か何かに閉じ込められているようだったが、リカと美智恵はある程度自由に動けるようだ。
「とは言っても、ビルの外に出られる感じじゃないし、こう真っ暗だとね。救助を待つのが無難でしょうね。」
と美智恵が分析する。おそらく2人と2~3mは離れてはいるのだが、1人で挟まれている状況と比べると安心感は雲泥の差である。リカも少し落ち着いてきたようだ。
「依里ちゃんが挟まれてるのって凄い心配なんだけど。どこか圧迫されてたりする?ほんとに痛いところ無い?」
リカの問いかけに
「ほんとに痛くないよ。ありがとう。大丈夫。暗所は大丈夫だけど、私ちょっと閉所恐怖症だから、この動きたいのに動けない状況が長く続くのは辛いかも。」
「あ~、確かに私もそれは辛いかも。私とリカで気を紛らわせられるようにするね。あ、それとも姿勢がきつくないなら救助隊が来るまで寝ちゃうのも手だよね。」
「じゃあさ、依里ちゃんは目を瞑りながら、私達と会話しながら空想の中で思いっきり駆け回るってのはどう?」
「リカはぶっとんだ事を言うわね。」
「でも、でも、夢の中とかですんごい動き回ってても実際、ベッドの上で動いてないでしょ?あれ、でも夢の中で足を踏み外して体がビクッってなる事もあったりするよね。」
「ジャーキング現象ね。でも寝られないならこのまま何か話しておく方が精神衛生上良さそうね。」
リカと美智恵の2人が私を気遣って案を出してくれる。遠くでは重機の音や、叫び声のような声、走る足音、パトカーと救急車のサイレンが鳴っている。
「でも真夏とか、真冬じゃなくて良かったよねホント」
「そうね。でも火災や、余震による崩落の可能性もあるから楽観視はできないわね。」
「ちょっと美智恵…、怖い事言わないでよ。依里ちゃんを安心させるんじゃなかったの?」
「えへへ。2人はいつも通りだね。怖くないの?」
私が2人に問いかける。
「私はこんな大惨事でも、怪我なく3人で固まれて良かったーって感じかな。ここ何階よ!?」
「うん。私もそんなに怖くないかも。むしろこんなに大惨事で3人無事ってちょっと嬉しくすらあるわ。今ここ何階かそんなに気になる?」
こんな状況であっても私達なら、私の部屋で話している空気感と同じになっている。
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「大学のサークルの先輩でね。すんごい馬ヅラの先輩がいるの。何か目でずっと追ってたら好きになっちゃいそう」
「リカがブ男に行くなんて、初めてじゃない?」
「あー!偏見!馬ヅラはブ男って美智恵ひどーい!…まぁブ男だけど。」
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「私は大学のお祈りの時間は、結構依里ちゃんの事考えてたりするわよ」
「あ~っ。どさくさに紛れて依里ちゃんに告白してんじゃん。依里は俺の嫁だぜ(イケボ)」
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遠くの方で呼びかける声こそするが、まだまだ遠い。数時間が経っても救助は来なかった。
「2人は本当に面白いよね。お昼2回食べて真っ暗だからかなぁ。何だか眠くなってきたよ」
「依里ちゃ~ん!!フランダースの犬みたいなこと言わないで!!」
「ちょっとリカ。犬が言った訳じゃないからね。うん。依里ちゃん。眠ると良いよ。体力の温存にもなるし。何かあったら起こしてあげる。」
「うん。ふわ~っ、、それじゃ、お言葉に甘えてちょっと寝るね。」
「「依里ちゃん、おやすみ。」」
「うん、ありがとう。おやすみ。」
「あ!依里が目を覚ましたぞ!!」
知らない天井が見える。蛍光灯が視界に入り眩しい。ここは・・・?走る足音や、人の声がそこかしこから聞こえるが、ナース服が視界の端に入り病院であると分かる。
「あ、お父さん。」
父がそばにいて、私の手を握っていた。すぐに病室に母とお医者さんが走って入ってくる。お医者さんから名前と住所、何が起こったかを聞かれたり、ペンライトを目に当てられたりした。その間、父と母は何も言わず見守っていたので、私も一番に聞きたいことを聞けずにいた。
「娘は大丈夫何ですかっ?」
「頭部を打ったことで軽い脳震盪を起こして気絶したものかと思われます。他の傷も軽いものですし、すぐに退院できます。頭痛や吐き気などが出るようでしたら精密検査をしますので再度いらしてください。」
「ありがとうございました。」
そう言って、お医者さんは慌ただしく病室を出て行った。
ビルの崩落事故による怪我人がこの病院に搬送されてきているようで忙しいようだ。
「丸1日、目を覚まさなかったんだぞ。」
「ほんと、依里、心配したわよ。」
「ねぇ!お母さん、お父さん!リカと美智恵は!?」
しばしの沈黙の後に、父と母は顔を見合わせる。そして母がうつむき、顔を横に振る。
私はその場で大号泣し、リカと美智恵に何があったのか。何で私だけが病院にいるのか。そう言ったことを半狂乱になりながら両親に問い詰める。ただ両親は何の質問に対してもうんともすんとも答えない。
「依里。落ち着いて」
しばらくしてから私は真っ赤になった眼を両親に向け、覚悟を決めて聞く。
「ごめん。ちょっと落ち着いた。リカと美智恵について聞かせて欲しいの」
父と母は再度顔を見合わせ。父が
「お母さん…」
と呼びかけると母はしぶしぶと言ったように重い口を開く。
「リカちゃんと美智恵ちゃんはきっと生きているわ」
私は予想外な回答で意味が分からなくなる。だが、母の続きの言葉を静かに聞くことにした。
「依里。イマジナリーフレンドって言葉は知ってる?私も依里が幼稚園の頃に初めて知った言葉で凄く…、凄く調べたんだけど。」
私の持っている漫画の中にもそのような概念があるものがあり、どのような現象なのかは分かる。
「幼少期や児童期に空想の友達を作り上げることなの。一過性のもので一般的には10歳までにはいなくなって、そのいなくなる過程で本人の成長を助けることもあるそうなの。」
「ちょ、ちょっと待って!私は今そんな話を聞きたいんじゃなくて、リカと美智恵が今どこにいるのかを知りたいの!」
「依里」
父が、確かな口調で私の名前を呼ぶ。母が続けて言う。
「私は、、いえ、私達は、、ごめんね。ごめんね。リカちゃんと美智恵ちゃんに直接会ったことが無いの。」
(…ん。母が何を言っているのかが分からない。頭に入ってこない。これはドッキリか何かなのだろうか?いや、ダメだ。ドッキリだとするとリカと美智恵は死んでしまっていることにならないだろうか。頭が混乱してきた。とりあえず母の言う事を。母がどのような意図で意味不明な事を言っているかを掴もう…)
私は俯き、母の言葉を待った。
「………………………………」
「あのね。依里は幼稚園の年中になっても、ずっと家でも幼稚園でも部屋の隅で1人で遊んでいたの。園長先生もその他の先生、私もお父さんも、能面を張り付けたような依里の表情しか見たことが無くてすっごく…、あの、これからが怖かったの。」
「でもね。ある日、依里が家に走って帰って来てね。友達ができた。すっごい嬉しいって満面の笑みでね。うふふ。玄関も開けっ放しで、よ。それがリカちゃんと美智恵ちゃん。その夜に依里が寝た後にね。私とお父さんはパーティーよ。本当に嬉しくて嬉しくて…。私はお父さんに何時間もその話を繰り返ししたわ。」
「依里に2人を家に連れてくるように言ったわ。同じ幼稚園ってことはそこまで家が遠くないことも多いはずだから。……でも、依里が笑顔で連れてきた友達は、その、、いなかったの。」
「私はその日の夜にお父さんに伝えた後にすぐに本屋に行ってイマジナリーフレンドに関する本とか、使い慣れないインターネットでその症じょ…、、概念を調べたわ。幼少期のみの一過性。イマジナリーフレンドと対話して問題を解決してくれることがある。知能の高い子に多い。私はメリットの部分以外には目を閉ざして耳をふさいで依里の交友関係に付き合うことにしたわ。でも結局中学になっても高校になってもずっと状況が変わらなかったの。依里の授業参観や体育大会とかの学校行事はすべて参加したけど私は依里が友人と呼べる人に会ったことは無かったの。だから私の選択は間違っていたのかなぁって。あ、でもね、本当に辛かったのはお父さんよ。ね。」
顔をちらっと見ると母は泣いていた。母は父の方を見て、そして父は口を開いた。
「私にはお母さんに取れない選択肢がいくつか浮かんだよ。私は教師という立場があ、、いや、これを言うのは卑怯だな。例えば、そんな友達はいない!と叱りつけて現実に戻したり、依里がリカちゃんと美智恵ちゃんと別れたタイミングで、2人は遠い地域に引っ越したと思いこませたり、、心療内科に連れて行き、薬を処方してもらうことで安定させられると考えたりな。本気で催眠術師を家に呼ぼうかとも思っていたんだぞ。」
「私は依里を目に入れても痛くない程愛している。友人の事を話す依里の満面の笑顔を見た時に私はそんな依里の笑顔を壊すことはしたくなかった。でもその、一部の資料や文献には幼少期の父親と娘の関係性の失敗によってイマジナリーフレンドができるというようなものもあったりしてな。私がどのように関わっても、依里の笑顔が失われるかもしれなかったんだ。私が依里を笑わせなくても良い。依里が幸せに笑っているのを見守ることを私の幸せとしたんだ。事実、依里はずーーっと楽しそうだったしな。」
父も泣いていた。
私はその日の内に自宅に帰った。
母がお菓子の缶の底に入っている画用紙を私に見せてくる。
「ほら。この絵。懐かしい。」
その絵は私が幼稚園の頃にクレヨンで書いたと思われる絵。私が真ん中にいて、両隣に女の子が描かれている。リカちゃん、すごくかわいい。みちえちゃん、ちょーびじん。と描いてあった。
それから3日経ち、リカと美智恵とは会えていない。いないと言われても記憶があるのだ。ビルの中での最後の記憶は声、「「依里ちゃん、おやすみ」」が思い出される。
でも私は事実に納得し、折り合いをつけることが近い内にできるのだと思う。
学校に通うと多くの同級生に囲まれた。授業が終わり学食に移動している最中も、
「あのビルの崩落に巻き込まれたんだって?中の様子はどうだったの?」
「どれくらい閉じ込められてたの?」
「地震が起こった時に何階にいたの?」
私はそれらに憶えている分だけ真摯に答える。リカと美智恵の事に関しても記憶のままに。
「私もこの席で一緒に食べていい?」
同じ学科の2人の女子を学食で見かけ、隣の席に座って良いかを聞く。
「いいよ。あ!私も三竹さんに聞きたい事があったんだって。あ、依里ちゃんって呼んでいい?」
私の新たにできる友人達をいつの日かリカと美智恵に紹介するべく。
私は今日もリカと美智恵と3人で過ごしていた時のように笑顔で生きている。