新たな指令
元第一王子の側近候補だったニコルソンの視点です。
新たな指令を受けた私ことニコルソンはトヴァイトヘルマン公爵家次男の生まれだった。過去形なのは廃嫡され家を追い出されたからで今では惨めな平民だ。
今の私はただのニコルソンとして王妃様の実父であるヴァンダイグフ殿の元にクレア殿の仲介で行儀作法の指導役と教育係として雇われた。
私は次男と言えど出自は公爵家だ。兄のスペアとして公爵のマナーは身についている。それを買われた‥‥表向きは。
実はあのお方からのご指示で潜入し監視と裏切る素振りが見えたら処分をするよう仰せつかっている。処罰の采配も一任されているのだ。私の目で耳で直接触れて判断しろと託された。
狡猾なご老人は隠すのが巧でいらっしゃるとはあのお方の評である。
何か二心を感じられたのか。
さて、私の指導を受ける人物は初めて見る顔の美丈夫でこれ程の美男子ならば社交界で噂されるのだが私はこの人物を知らない。
自惚れではないが私は記憶力も頭も良い。その私が知らないのだから身分の無い者だな。
彼の名はエリック、二十代後半ぐらいだろうか。
物腰は優雅で品があり言葉遣いも正しい。これなら一介の貴族、伯爵位かそれより上でも通る。とても平民とは思えない立ち振る舞いでおまけに教養もある。
今更、私など必要なのかと疑いたくなるがあのお方の狙いはご老人の心中を暴き出すこと。曰く付きの彼の指導役として抜擢された以上、本腰を入れ立派に役目を果しこの人物の後見人であるご老人を見定めるのだ。
一体何を企んでいる、ご老人よ。




